第10章 ハニーの提案
2度にわたり魔王軍と戦ったゴン・ドーラは、静かに眠るような顔をして息を引き取った。
これで死戦組の戦士は桜の花弁のように全て、散ってしまった。
だが、レイカたちは悲しんではいられない。
ロウも危険な状態のままだ。
その時ハニーが思い切ったことを言った。
「どうせこのままでは助からない。なら思い切って、改造手術をすれば助かるかもしれません」
「かいぞうしゅじゅつって何だ?」
と、ソージョーが聞いた。
「私のように機械の体にすることよ」
「きかい?」
ソージョーにはまだ理解できていなかった。
だが、それで助かるなら、ハニーに全てを任せようと皆思った。
「問題はこの世界で材料が手に入るかどうかです」
その時、ボロボロの青年がラークの家に入り込んだ。
「25号!」
青年は人造人間25号だった。
「材料なら僕の体を使ってください」
「えっ?」
「僕の体ももう限界です。秀吉さんはあいつ等に連れて行かれたし、過去でもこの時代でも負け戦になってしまいました。最後くらい、誰かの役に立ちたい。そう思い、っボロボロになりながらもあなた方に会いたくて、ここまで来ました」
「本当にいいの?」
「はい。僕は貴女と違って、完全に無か生まれた人造人間……血が通っていない冷たいロボット……」
「ハニー、お前も昔は人間だったのか?」
と龍馬が尋ねた。
「はい……私の名は織田ハニー。秀吉の娘です」
その言葉に皆が驚いた。
「生まれはアメリカですが、でもほとんど日本で過しました。そして17歳の時に父に改造手術をされました」
「何て親父だ。自分の娘を実験材料にするなんて」
龍馬は激しく怒った。
「とにかく急ぎましょう。ロウさんが死んでしまったら、血の通わない人造人間になってしまいます」
「最後にこれだけは伝えたい。僕は血の通っていないロボットなのに、1号……いや、ハニー、貴女に恋していました」
「25号……ありがとう」
そして手術が始まった。
25号はハニーにもう一つ伝えた。
それは西の国には近づくなという警告でもあった。
さすがにハニー一人では困難だ。
そのため、助手には機械のことなど分からぬが、それでもロウを助ける手助けをしたいと思うレイカが助手をすることとなった。
他の者たちはドーラを火葬。
そしてドーラの骸を骨壷に入れ、国に戻れたら、立派な墓を立て、埋葬するつもりだ。
「ハニーさん」
「なんですか?」
「さっき、25号は西の国には近づくなと言っていましたが、そんなに恐ろしい国なんですか?」
「昔、この国がまだ日本と呼ばれていた頃、海を西に渡ると、中国、タイ、韓国、台湾など様々な国が存在していました。さらに西の方へ行くと、ヨーロッパと呼ばれる大陸があり、そこにもフランス、イタリア、ロシア、スペインなど様々な国がありました。争いを繰り返したりもしていました。でも200年くらい前に世界を旅したとき、西の方の国は平和な国でしたよ」
「では、秀吉がその国を支配するため、攻め込んだから、その国の方たちが秀吉と戦っているだけで、本当は今も、優しい人たちが暮らしている。そういうことですよね」
「分かりません。ただ、魔法ではなく恐ろしい科学力を持っているみたいです」
「えっ?」
「ハニーさんは見ていないので、あれですけど、黒い円盤……あれはまさしく科学が作った物」
「黒い円盤ですか……」
「(でもあの円盤……はるか昔に見た記憶が……)」
手術が始まってから、半日が過ぎた。
果たして、ロウの手術は成功するのだろうか?
そして謎の黒い円盤。
まだまだこの世界は謎だらけであった。




