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泡沫の王女  作者: シキ
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3.睡眠は大切

どうも、こんばんわ。

今回はギルドに対しての説明ですー。

冒険者の剣士の後について建物の外へ出ると,馬車が5台ほど並んでいた。

馬車の前には冒険者に倒されたのだろうネズミ顔の男とその仲間が縄で手足を拘束され地面に座っており,そのまわりを監視するように5人の冒険者達が囲んでいる。

先ほど後から部屋に入ってきた白い髪と赤い髪の二人組も、その中にいた。

そこから少し離れた場所には,先ほどまで同室にいた女子供が集まっているのが見える。

彼女たちの視線の先にも冒険者が3人程おり何やら話をしているようだ。


リアンは,かぶった灰色のフードの下からその様子を見て大所帯だなーと少々驚いた。


「あら~。凄いですわ~。馬車が5台もある所なんて、わたくし初めて見ましたわ。

 それに,冒険者の方々もあんなに。ランディー様の部下ですの?」


タイミングよく自分の横から、思っていたことを代弁するような声が聞こえてきた。

マリアである。どうやら先ほどの剣士はランディーと言うらしい。

二人は恋人同士のように寄り添っていた。いつの間に・・・。


「ははは。これだけの人たちを救出するとなると、救出後の移動も大変ですからね。

 冒険者ギルドに掛け合って馬車を用意してもらったんです。

 馬車の護衛などで人手もいるだろうと思いまして、他の冒険者のパーティに声をかけたのです。」


マリアは、驚いた声を出した。


「まぁ!!冒険者ギルドは5台もの馬車を用意できるものなのですか?

 お恥ずかしいですが、わたくし冒険者ギルドについてよく知らないのです。」


「あぁ、普通は馬車を破壊される恐れもあるので貸し出してくれないでしょうね。

 俺のギルドランクがBランクなので、ギルドに融通がきくんですよ。

 マリアさんはギルドに詳しくないとおっしゃいましたが、冒険者については知ってますか?」


その問いかけにマリアは首を斜めに傾げて,片側の頬に手のひらを当てて困った顔をした。


「冒険者についてなら少しは。

 冒険者というのは、困っている人たちを助けるのをお仕事にしていらっしゃる方々で、

 困っている人たちは問題を解決してもらう冒険者を紹介してもらうために冒険者ギルドに

 依頼を出すのですわよね?」


ランディーは、うなずくとマリアに言った。


「その通りです。

 冒険者ギルドは依頼を受けると、その依頼の難易度にランクを付けるのです。

 薬草探しなど命を失う危険性がないものは、一番下のGランク。そこから順に

 F、E、D、C、B、A、Sの順に難易度が高くなりますね。」


そこで一度区切ると、ランディーはマリアに向けてニコリとほほ笑む。


「あと、依頼と同じ様なランク分けを冒険者にもしているのです。

 駆け出しの冒険者はGランク。彼らはGランクの依頼しか受けることができません。

 そこから幾つかの依頼を達成すると冒険者のランクがあがっていきます。

 今回の救出任務のような自分の命の他に一般人の方々の命が掛っている任務はBランクとなり

 Bランクの冒険者が救出にくるのです。」


パンっとマリアが両手を打ちならし、感嘆の声があげた。


「まぁ~!!それじゃあ、ランディー様は凄くお強いのではなくて?

 こんなにハンサムで強いなんて女性の理想の男性ですわね。うふふ」


ランディーは照れくさそうに鼻の頭をかいて言った。


「まぁ、そんな凄いものじゃないんですけどね。

 一応Bランクになると今まで任務をこなしてきた信頼性があるのでギルドにも

ちょっとわがままを言えるんですよ。だから馬車も用意してもらえるんです。」


「なるほど、そうでしたのね。これだけの馬車を一度に用意するのも大変なのにって

 思っておりましたがランディー様の信頼が厚いためでしたの。

 お話を聞いてる限り、Bランクといったらかなりお強いのでしょう?

 わたくし身体も余り強い方じゃないので,ランディー様がいてくだされば心強いですわ。」


これまで二人の会話に耳を傾けていたリアンは、マリアの甘えるような声色に、

よく言うよと、突っ込みたくなった。


「まぁ、冒険者ランクがBランクになるのは結構大変ですね。

 魔法を使用する動物で魔物って分かりますよね?

 それを倒す依頼がCランクでよくあるんですが、なかなか強くて倒せない者が多いんです。

 なのでBランクに昇格できる冒険者の数は少ないですね。

 まぁ、Aランクは数えるくらいしかいないしSランクの冒険者なんているかいないか

 分からないので、ギルド内でよく見かける中ではBランクが1番上だったりするんです。」


はははっと爽やかにマリアに笑いかけるランディー。

マリアに凄いですわと褒められるのを満更でもなさそうに,会話をしている。

そんなときだった。

軽やかに走ってくる足音をリアンの耳が拾った。

足音の方に目を向けると、女性たちが集まっていた方向から、まだ幼さを残した青年がこちらに走ってくる。

短髪の青い紙に黄色のバンダナを巻いて活発そうな青年である。


「おーい。ランディーの兄ちゃん!」


彼は笑顔でランディーに呼びかけた。褐色の肌と笑った口元から覗く八重歯が特徴的である。


「どうした?ドル?」


ドルと呼ばれた青い髪の少年は大きな青い目をキラキラさせてランディーの横に並ぶと,自慢げに胸を張る。その様子は,褒めて褒めてと全身で訴える子犬のようだ。


「僕たちの方は、救出した人達にこれからの予定について話おわったよん!

 とりあえず、一通りの説明も終わったから、いつ頃出発するか兄ちゃんに聞きにきたんだ!

 救出した人達も外にいるの不安だろうし、早く馬車に乗せてあげたいからねっ」


先ほど何やら説明していたのは、今後の予定についてだったのか・・・

リアンが一人で納得しているとマリアが近付いてきた。


「リアン、リアン、今後の予定について、あなた何か聞きまして?」


「いや、僕は何も聞いてないけど・・・・って、なんでそんな呆れた目を向けられないといけないの?」


言ってリアンはマリアを見上げた。マリアの頭はリアンよりの頭より半分ほど高い位置にある。


「だってリアン、あなた今まで何をボケっとしてましたの?

 まさかここに、ぼーっと突っ立ってた訳じゃありませんのよね?」


「いや、別にぼーっとはしていないけどさ。」


マリアから向けられていた視線は、本当に?と疑わしそうなものに変った。


「う・・・。そんなこと言ったらマリアだってランディーさんだっけ?

 彼とラブラブしてただけじゃないっ!!

 だいたい、ギルドについて今更聞くことでもないだろっ!!」


「しっ!声が大きいですわ、リアン!」


リアンの口を急いで手で押さえたマリアはランディー達がいる方向とは反対の方をむき、こそこそと言う。


「リアン、あなた声が大きいですわよ。」


リアンの声も自然と小さくなる。


「聞かれて不味いことしなきゃいいだろ。

 だいたいギルドについて聞かなくても知ってるじゃないか。」


「はぁ・・・。リアンは昔から先のことを少しも考えていませんのね。何のために、わたくしが

 あんなへっぽこ剣士の自慢話を黙って聞いていたと思ってますの?」


・・・なんでだろう。可愛く見られたいから・・・とか?

というか、へっぽこってなんだよ。助けてくれた人にむかって。


「まったく。いいですわ。教えて差し上げます。

 まず、あちらに止まっている馬車をみてちょうだい。」


言ってマリアは5台ほど並んでいる馬車を指差した。


「いいですこと?ここにある馬車は5台。それに対して、救出された人数は30人ほど。

 馬車の1台は人売り達の護送用とかんがえて、残りの馬車は4台。

 まぁ、1台に7人~8人程が乗ることになりますわね。」


「たしかに・・・。そうなりそうだね。」


「そうでしょう?でも、あの馬車の大きさは6人乗りですわ。」


たしかに用意された馬車は寄合い馬車などで用いられる15人乗りなどの大きなものではなかった。


「たしかに6人乗りだけど、体の小さな子供もいるし1台に7、8人乗れるんじゃない?

 丁度いいと思うけど・・・。」


「・・・丁度いいですって?」


マリアの目が鋭くなる。


「リアン、何おバカなこといってるの!!」


「・・・・え?」


「そんなにギュウギュウにつめられたら横になることなんてできないじゃないっ。」


リアンの顔にマリアは顔を一層近づけた。


「わたくしは、夜はゆっくり眠りたいんですの。そのためだったら何でもしますわっ!」


マリアはリアンのそばから離れるとランディーの方へ、すすすっと近寄っていく。

その様子を唖然と見ているリアンに、マリアの甘えた声が聞こえてきた。


「ランディー様ぁ~。そちらの方も冒険者なのですか?」


「ああ、マリアさん。彼は今回の救出に協力してくれたんだよ。

 ドル、こちらはマリアさん。」


紹介されたドルは、マリアにニパッと八重歯を出して笑いかけた。


「ども。僕、冒険者ランクDのドルっていいます。お姉ちゃん、よろしくね!」


「あら、ご丁寧にありがとうございます。

 わたくしは、マリアと申します。今回は、わたくし達を助けてくださりありがとう。

 すごく心細かったので、大変感謝しておりますわ。」


「全然、気にすることないよっ!これが僕たちのお仕事だもんっ!」


にこにこと笑顔のドルの前で、あっ!そういえばとマリアは、リアンに手まねきをした。


「リアン、こっちにいらっしゃい。」


呼ばれたリアンは、マリアの方に近づいていく。


「ランディー様、ドル様、こちらは、わたくしの連れでリアンと申しますの。

 リアン、お二人に感謝のお礼とご挨拶を。」


言われたリアンは、今までかぶっていた灰色のフードを外し軽く会釈した。


「えーと、ランディーさんとドルくんでいいのかな?

 僕はリアン。今回は助けてくれてありがとうございました。」


ランディーは,フードを外して現れたリアンの顔に視線をやった。

現れたのは目元も隠れる滝のようなみだれ髪に,透き通るような白い肌であった。

華奢な容姿と毛先が遊ぶ細い顎のラインから見るに、まだ少年というほどの年齢だろう。

なんとなくだが,髪色と雰囲気がマリアに似ている。兄弟だろうか。


「よろしくリアン。俺はランディオールだ。みんなランディーって呼ぶし

 ランディーで構わないよ。それでこっちの、ちっこい小犬みたいのがドルだ。」


ちっこい小犬と称されたドルは,ぷくぅっと頬を膨らませた。


「なんだよ子犬って!!僕は人間だぞー!!!しかも、リアンのがちっこいじゃないかっ!

 もうっ!兄ちゃんは、いつもそうやって僕を子供扱いするんだからっ!!」


まぁまぁ、おちつけとランディーに言われ,不本意そうにリアンへとドルは顔を向けた。


「まぁ、兄ちゃんはこう言ってるけど、ちゃんとギルドにも所属しててDランクを持ってる

 からねっ!リアン、道中は僕が守ってあげるから安心してねっ!」


そういってえへへっと笑ったドルに,リアンもよろしくといって返した。


どうやらこれから,馬車にのって移動するらしい。

何事もなければいいのだが・・・そう思っていたリアンは,マリアを視線を向けて考えを改めた。

マリアがいる限り,何もないなんてありえない。彼女自体が火種、いや爆弾であろうことを今までの経験上否応なく学んだのだから。

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