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泡沫の王女  作者: シキ
2/5

1.睡眠は大切

夜も深まった時間。

この一室では、今日何度めかの問答が繰り返されていた。


「ねぇねぇ、マリアそろそろ起きてよ。」


そう言ったのは、目深に灰色のマントを被った線の細い人物。

茶髪の女性が寝ているベットの横に立ち、女性をのぞき込んでいる。


「もうっ!マリアってば!!」


ベットに横になっている女性は、自分の名前が呼ばれているのにも関わらずピクリとも反応しない。

先ほどから何度も何度も起こしているのに反応がない女性を見て、名を呼ぶ方からは、はぁっと溜息がもれた。

なんで起きないんだよっと言いながら、ベットに広がる綺麗な茶色の髪を軽く引っ張ってみることにしたようだ。


「マリアー、いい加減に起きて!ねぇ、ねぇ、」


「・・・・・。」


くいっ、くいっ、っと髪を引っ張るも反応なし。

そのうち、髪を引っ張る力は段々と強くなっていく。


「ねぇねぇ、起きてー起きてー!マリアー!・・・・あっ!」


寝ている女性の首が、がくっとこっち側に引っ張られた。

途端、女性の目がカッと見開き、髪色と同じ茶色い瞳が相手を射ぬく。


「・・・何を、やってるんですの?」


言われた方は、その見下げたような瞳にビクッと体を震わせる。


「なかなかマリアが起きないから・・・さ」


「わたくしの眠りを妨げる権利がリアンにあるのかしら?だいたい今、何時だと思ってますの?」


リアンと呼ばれた彼は、時間とともに増すマリアの威圧感に堪え切れず、はははっと苦笑した。


「確かに、夜だけどさ・・・現状を見て欲しいなーっとか」


そう言い、あたりを見渡すリアンの視線を追って、マリアもあたりを見渡す。

木でできた部屋は、窓ひとつない。

天井にはランタンがかけられ、薄暗い中オレンジ色の光が揺ら揺らとゆれて不気味さを増していた。

部屋の中には4台のベットが設置され、2台には小さな子供が体を縮めて5人ずつ眠っている。他の1台は、マリアが占領しており、もう1台には2人の女性が横になっていた。ベットに入りきらない人々は、床に座って肩を寄せ合っていたり、壁に寄り掛かって眠っていたりと様々で、部屋の中には、おおよそ女性と子供で30人ほどの人々がいる。

どの人を見ても、例外なく服は着古されて、ところどころ汚れていた。

部屋の中を一周見渡したマリアは、ゆっくりとリアンに向き直った。


「それで?」


え?っとリアンは目を見張る。


「それで?って、この状況が分からないの?え?」


鋭い目つきでみてくるマリアに、リアンは恐る恐る声をかけた。


「あの・・・その・・・もしかして本気で分かってない?

 僕たち、人身売買の組織に捕まってるんだけど・・・あれ?知らなかった?」


「なんですって?人身売買の組織に捕まっているですって?」


「あれ?マリア本当に知らなかったの?

 てっきり、僕は気づいてるのかと思ってたから・・・。

 あのね、落ち着いて聞いてね。

 僕たちは人売り達に攫われて、ここに連れてこられたんだ。

 ここは、彼らのアジトなんだよ。

 この部屋に一緒にいる人たちと逃げ出さないと何処かの変態おやじに売られてしまうんだ。」


そうと決まったら、さっそく脱出の準備をしようと右手を差し出したリアン。

そして彼は背中に冷たい汗を流した。鬼の形相と化したマリアの表情を見て・・・。


「リアン、あなた・・・そんな事で、わたくしを起こしましたの?」



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