第一章 揺れる季節の中で
どうして、貴方はその笑顔をあいつにばかり向けているんだろう。
どうして、貴方はそんな顔をしてあいつを見ているんだろう。
どうして、こんなにも上手くいかない恋なんだろう---・・・。
---・・・少しずつ、風が寒さを含み始めた10月。
夏の残暑が終わりを告げてから1ヶ月ばかり経って、少しずつ季節は冬へと向かっていた。
・・・ここ、「晦冥高校」では、主に3年生達が受験生の意識を高め始め、学校全体の雰囲気も、ピリピリとした緊張が漂っていた。
だけど、俺、川上 信二は、そんな勉強なんかに学校生活の大半を奪われるつもりは無い。
まだ、高1だし、何より今は、もっと夢中になっている人が居るから・・・。
「・・・あれ、信二君じゃん。どうしたの?こんな廊下でぼーっとして。」
「・・・先輩!」
・・・噂をすれば影。
まさにこの人こそが俺の想い人、国重 悠里先輩・・。
多分、俺のひいき目を抜いたって、この学校の中で一番美しい人だと思う。
さらりと流れる様な美しい髪。
白く、柔らかそうな肌。
少しふっくらとした頬。
パッチリと澄んだ瞳。
ピンク色をした形の良い唇・・
・・どれも、どんな人よりも美しいと断言出来る程、その人の全ては美しくて、つい見惚れてしま
う。
「・・・信二君?」
その姿に気を取られて何も喋らない俺を心配したのか、先輩が少し首を傾げてたずねてきた。
肩にかかっていた髪がさらりと落ちて、ドキリと鼓動がなった。
「・・・・・・あ、はい、なんすか。」
「・・いや、何も言わないからどしたのかな、と思って。」
「・・いや、ちょっと考え事を・・。」
「へー信二君が。」
「ム・・。なんすか、それ。」
「・・いや、何でもナイ」
先輩は小さく笑って、それから「じゃあね。」と行ってしまった。
すれ違う瞬間、フワリと先輩の髪が俺にかかって、シャンプーの良い香りが漂った。
・・・・自分の鼓動が大きく鳴って、身体が熱くなった。
・・もう少し話していたかったなあ、と思いながら、俺はさっきまで先輩の居た廊下を見つめて、小さく溜め息を吐いた。
・・・先輩と話すのは楽しい。
先輩に会えると嬉しい。
先輩が笑うと可愛い。
・・・先輩が、溜まらなく、愛しい。
・・・だけど、先輩を見つけると悲しい。
いつも、アイツを見ているから。
先輩が笑うと可愛い。
だけど、アイツの前ではもっと美しくて。
先輩と話すのは楽しい。
なのに、先輩はアイツと話しているときの方が愉しそうで。
溜まらなく、悔しい。
溜まらなく、悲しい。
絶対に、俺の方が先輩のこと好きなのに。
ーーーー・・・。
俺の、大好きな先輩。
愛しくて、たまらない人。
・・・だけど、先輩にも、・・・あの人にも、・・・・・。
・・・・
-----俺が、先輩に会ったのは桜が舞い散る4月の頃。
廊下で誰かと話しているのを少し見ただけ。
第一印象は、「綺麗な人」。
こんなに綺麗な人が居るんだな、なんて思っていた気がする。
それからも、何回か廊下で見かけたけど、別に、それ以上のことも無く、お互い無関心に過ごしていた。
・・・・だけど、今ならいえると思う。
多分、あの頃から、俺はあの人に惹かれていたんだって。
・・先輩にはこんな事、絶対いえないけど。
・・・・
ーーーー先輩の事が好きだって自覚したのは、それから何週間か経った、五月頃。
学校にも慣れてきた俺達一年生は、部活に入る事になった。
俺は、中学からやっていたバスケ部に入ると決めていたので、その日のうちに希望届けを書いて職員室に向かった。
・・・ちょうど、その時、廊下で先輩に会った。
「・・・あれ、その紙。君、一年生?・・部活何にしたの?」
・・・いきなりそう話しかけてきた事を、今でも鮮明に覚えている。
「・・・あ、ハイ。・・バ、バスケ部に入ろうと思ってます」
先輩の様な綺麗な人に話し掛けられるのは初めてだったので、俺は内心ドキドキしていて、あんまり上手く喋れなかった。
「・・・え!マジで。やった!新入部員!・・・私もバスケ部なんだ!・・ほら、4月頃に新入部員の勧誘やってたの覚えてる?そこでさ、私もバスケ部のビラ配ってたんだ!」
先輩の、少し興奮した顔。
これも、ハッキリ覚えてる。
・・・実は、ちょっと見惚れていたから。
「・・・あー、スイマセン、俺、ちょうどその時インフルエンザで四日間寝込んでたんです・・。」
「・・・そーなの?!」
先輩はちょっとだけ目を見開いて、それから、「んじゃあ、残念。」と、小さく笑った。
・・・その笑顔が、やけに眩しくて、俺は目を細めた。
・・・鼓動がいつもより早く鳴っていた事には、まだ気がついていなかった。
・・・・
部活が始まって、俺は先輩を意識し始めた。
・・というよりも、自然に目が先輩を追っていた、という言い方の方があっているのかもしれない。
・・先輩もけっこう声を掛けてくれて、だんだんと俺は、自分が抱いているこの気持ちが、「恋」という名のものなのだと気がついた。
・・・・
先輩への思いに気がついてから一週間後。
先輩の近くに居る男の存在に気がついた。
廊下で見かけたときなんかも、けっこうその男は先輩の近くに居て、親しそうに話している。
何だかムカムカしたので、先輩に、
「先輩の近くに居る男の人、先輩の彼氏ですか??」
なんて、嫌味も込めて聞いてみた事がある。
・・・・聞いた直後、すぐに後悔した。
先輩の反応が、あまりにも可愛かったから。
・・・顔を赤くして、耳まで真っ赤になって、
「そんなわけ無いって!!!」
なんて、否定したから・・。
・・・好きなんだって、すぐに分かった。
ああ、やっぱり好きだったんだ、って、思った。
・・・・
ちなみに、あの後、その男について分かった事といえば、先輩と同じクラスって事と、先輩から「広軌」と呼び捨てされているって事・・。
・・・・
ーーー・・鐘の音が俺の耳に飛び込んできて、ふと我に帰る。
気が付けば目の前に少し古めの見慣れた廊下が続いていて、何と無く現実に戻った様な気がした。
・・教室に戻る前に、もう一度だけさっき先輩の居た場所を見直して、胸がぐっと締め付けられた。
先輩が好きなのに、こんなにも好きなのに、どうして叶わない想いなんだろう、どうして先輩は俺を見てくれないんだろう。
そんな事を、何度も、考えてしまう。
・・・自分でも、欲張りだと自覚しているし、自分勝手だな、なんておもったりもしてしまう。
それに、一方では、先輩が幸せならそれでいいって、思っている自分もいる。
・・・自分でも、自分が分からない。
・・・俺は、一体どうしたいんだろう・・。
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ーー・・揺れる、揺れるこの気持ちはどうしようもないくらい苦しくて。
とても、息苦しいもの。
ーー・・・なのに、想いは止められない。
先輩へのこの感情は、苦しいものなのに、俺にとって、とても大切な気持ち・・。
どうすれば、いいんだろう。
この心は、どうすればいいんだろう・・・。
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少しだけ肌寒いこの季節。
風も、空気も、どれも、ちょっとだけ冷たくて。
まるで、自分の気持ちの様に、中途半端なものだった。
・・・どうだったでしょうか?><(ドキドキ)
なんだか、主人公、女々しいな!とおもいつつ、なんとか描かせていただいています(汗)
・・・ここまでよんでくださった貴方に、心から感謝です!!
有難うございました!!