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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
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猛犬に注意!

掲載日:2026/08/20

***BL*** 後輩に懐かれた。大型犬みたいなアイツ。でも、ちょっとやばいヤツだったかも?!

ハッピーエンド



「ちょっ!やだ、、、って!めて」

彼にのし掛かられ、両手を塞がれていた。

「 ! めっ、、、」



**********



 え?めちゃ、デカい、、、。身長幾つあるんだろう、、、。185センチとか?

 僕が165センチだから20センチ位高いんだ、、、。羨ましい、、、。


「え、ちっちゃ、、、」


って思ったんだろうな。僕の顔を見るなり、目を見開いたもん。


 僕の身長は誰よりも早く伸びた。小学生の夏休みにいきなり背が高くなり、翌年も伸びた。でも、六年生の時に成長が止まり、それから身長は伸び無くなった。せめて、170センチは欲しかった、、、。


 

*****



 大学の近くで、バイトをしている。ファストフード店で調理。試験中は優先的に休みをくれるから、有難い。

 新しいバイトは、まずレジを覚える。意外と覚える事が多いし、接客担当になるから最初は緊張する。

 僕は慣れるまで、かなり時間が掛かった。

 

 彼がレジに立つと目立つ。仕事を覚えるのが早く、マネージャーはどんどん彼に仕事を教えた。気が付いたら、一緒に調理場に入っている。


 優秀なんだな、、、、。と、思いながら一緒に仕事をする。



*****



「小田嶋さんっ!」

大学で昼飯を食べようとフラフラしていると、呼び止められた。

鍬山くわやまくん」 

「昼ですか?どこで食べるんですか?俺も買って来るから、一緒に食べましょう!」


 まるでデカい犬だな、、、。やたら人懐っこい犬。


 鍬山くわやまくんはパンを2つ買って来た。デカい身体にパンだけで足りるんだろうか、、、。

「小田嶋さん、弁当ですか?」

「うん」

「実家から通ってるんですか?」

「そうだよ。家から近い大学だったし、希望の学部もあったからね。鍬山くわやまくんは?」

「俺は地方から出て来たので」

「え?一人暮らし?すごい」

「飯とか、風呂掃除が面倒で、帰っても寝るだけです」

「でも、自分だけの城でしょ?僕なんて、自分の部屋も無いよ」

「そうなんですか?」

「だから、一人暮らしに憧れる」

「今度遊びに来て下さい」

ニコッと笑った。可愛いな。



 鍬山くわやまくんはいつも元気に尻尾を振って来る。様に見える。

 僕を見つけると、友達を置き去りにして走って来るんだ。

「今日、バイトですよね!」

「うん」

「俺もです!楽しみですね」

彼がニコニコ話すと、何だか僕も嬉しかった。


 大学近くのファストフード店だから、大学生が立ち寄る事も多い。数人で集まって勉強したり、遊んだり。

「今日はなかなか忙しいですね」

彼の作るハンバーガーは、早くて綺麗だった。

「先輩、不器用ですね、、、」

「う、、、」

「沢山やれば、上手くなりますよ」

と声を掛けられて、次は頑張ろうと思う。



*****



 前から鍬山くわやまくんが歩いてくる。

 大学の廊下。

 彼は僕に気付いてポケットに手を入れた。

 もうすぐすれ違うと言う手前の位置で、何かを握った手を僕の方に出す。

 思わず両手を上に向け、差し出した。


 ポトリ


 と、掌に飴を落とす。

 

 何で?


 振り向いて鍬山くわやまくんを見ると、後ろ手で手を振っていた。

 子供の頃に食べた、味の変わる飴。パッケージもガチャガチャしたイラストで、子供っぽい飴。


 こんなの食べるんだ。何だか可愛いな。



*****



  食堂で鍬山くわやまくんが勉強をしている。

 僕には気付かないみたいだから、こっそり近付いてみた。何の勉強してるんだろう、、、。


 ノートの端に「へのへのもへじ」が描いてある。

 

 思わず笑うと

「あ!」

と振り向いた。

「小田嶋さん!」

鍬山くわやまくん、絵が上手いね」

と褒めると、不思議そうな顔をして自分のノートを見る。

「わっ!」

自分が描いた「へのへのもへじ」を見られて恥ずかしくなったのか、慌てて隠した。

「勉強、頑張って!」

と声を掛けた。



*****



 鍬山くわやまくんは、あくまで可愛い後輩だった。僕には好きな人がいたんだ。高校の時通っていた塾の先生。

 ほんの少し年上で、中学生を教えていた。大学生のバイトだと思う。

 いつもすれ違う程度、知り合いと言うより顔見知り。直接受け持ってくれた事は無かった。

 高校三年生の夏、空き時間に自習室で勉強していた時、声を掛けてくれた。

「分からない事があったら聞くよ」

僕は一瞬頭が真っ白になり、アワアワしてしまった。



 大学生になって塾を辞めた。それから彼には会っていない。

 


*****



「あれ?君」

と言われて相手の顔を見ると、僕の好きだった人。

「あ!、、、今晩は」

あ!なんて、失礼だったな、、、。

「バイト?」

「はい。大学がすぐそこなんです。先生は?」

「先生って、、、古賀こがで良いよ。弟とね、大学の場所、見に来たんだ」

後ろに立つ高校生が、小さくお辞儀をした。

「今度、受験ですか?」

「うん。場所だけ確認して、オープンキャンパスは友達と来るんだって」

 古賀さんはハンバーガーのセットを二つ頼んだ。

「席までお持ちしますよ」

と言って、番号札を渡す。



*****



 僕はポテトを二つと、飲み物を二つ準備する。

 鍬山くわやまくんがバーガーを二つ作り、こちらにスライドした。トレーに載せて、2階席に上がる。

 古賀さんは道路側のソファ席に座っていた。

「お待たせ致しました」

と言って商品を届けると

「ありがとう」

と笑う。



 僕は笑っていたんだろう。

 一階に降り、カウンターの中に入ると鍬山くわやまくんに

「何、ニヤけてるんですか?」

と冷たく言われた。

「え?ニヤけてた?」

「ニヤけてます。だらし無い顔になってます」


 不機嫌だな、、、。


「知り合いですか?」

「うん、ちょっとね」

レジにお客さんが並んだので、話しは打ち切られた。



*****



 バイトが終わり、鍬山くわやまくんが

「さっきの人、、、どう言う関係ですか?」

と聞いて来た。

「んー、、、知り合い?」

「何ですか?その中途半端な返事は」

「え?だって、、、」


 どう言う関係って、困るな、、、。


「塾の先生なんだけど、直接教わった訳じゃ無いんだ」

「でも、小田嶋さんの事、知ってましたよね」

「自習室借りて勉強した時に、見て貰った事があるから」

「好き、、、なんですか?」

「や、、、え、、、っと、、、好き、だけど」

「好きなんだ」

「で、でも!高校の時だよ?二年も前だよ?」

「でも、好きなんですよね?」

「ま、まぁ、、、そうだね」


 鍬山くわやまくんの機嫌が悪い、、、なんで?


 店を出て、駅に向かう。鍬山くわやまくんは三つ先の駅で降りる。二人でドア付近に立ち、窓の外を眺める。ガラス越しに彼の顔が見えた。

 背が高くて羨ましい。

 隣の駅で人が乗って来ると、少し混んで来た。横に立つ人がヤケに近くて、チラリと見る。

「こっち」

鍬山くわやまくんが僕の腕を引き、角に立たせてくれる。

「ちっさいですから、見失っちゃうと困るでしょ?」

「そんなに小さく無いし」

「小田嶋さんは、華奢だから、フラフラどっかに行っちゃうかも知れないし」

「行かないよ?!」

「よろけて誰かにぶつかるかも知れないし」

「よろけないよ?!」 


 ふふ、と笑う。


 鍬山くわやまくんの降りる駅に着いた。

「じゃ、小田嶋さん、またね」

と言って手を振る。

「うん」

と返事をして、僕も手を振る。

 電車から降りる時、少し頭を下げた。やっぱり背が高いんだな、、、と何と無く思う。


 

*****



 僕が食堂でお弁当を食べていると、鍬山くわやまくんがチラシを一枚持って来た。

「小田嶋さん、グルメフェス、一緒に行きましょうよ」

「グルメフェス?へえ、こんなのやってるんだ」

 チラシには肉の屋台が出店予定になっている。一品の値段は結構良い値段だった。

「意外と高いけど、大丈夫?」

「うーん、、、食うか食わないかは別にして、行きたいです」

まあ、都内の公園で開かれるみたいだから、行ってみても良いけど、、、。

「いつ?」

「良いんですか?!」

めちゃくちゃ嬉しそうだな。

「次の小田嶋さんの休み、土曜日ですよね!俺も朝からバイトで10時には上がるんで、土曜日に行きましょう!」

「良いよ。待ち合わせ場所決めて」

「じゃあ、10時半に駅でどうですか?」

「分かった」

「やった!」


子供みたいだな、、、


 お互いスケジュールを登録した。



*****



 待ち合わせ時間ギリギリに、鍬山くわやまくんが走って来た。

「小田嶋さんっ!」

両手を広げて抱き付く。デカいから、前が見えない。

「相変わらず、ちっさいですね!」


 、、、うるさいな。


「仕事、ちゃんと終わったの?」

「勿論です!問題ありません!」

「そっか」

僕が地図を見ながら歩きだすと

「どっちですか?」

と顔を寄せる。フワッと香水の香りがした。

「何か付けてる?」

「デートですから!」

「デートじゃ無いし、、、」

「え!デートじゃ無いんですか?!」


 もう、面倒臭いな、、、


「デート、デート。早く行こうよ」

と答えると、鍬山くわやまくんは嬉しそうな顔をした。


 公園は、ただの広場で、屋台が両脇に立っていた。真ん中に屋根付きの椅子とテーブルが並んでいる。

 開始時間が11時からだったらしく、入り口には数人並んでいた。

 屋台とチラシを見ながら、何を食べようか相談する。串焼きも有れば、豚丼もある。ステーキ肉、ロコモコ、唐揚げ、ケバブ、、、悩むな、、、。

 一品が1000円する。バイト学生には何皿も食べる勇気は無かった。

 11時に公園入り口が開き、順番に入って行く。チケットを買う決まりになっていた。よくよく見ると全品1000円。計算しやすい様にかな?

「取り敢えず、全部見ようよ。量も分からないし」

「全品1000円かぁ、一品しか食べられないな」

鍬山くわやまくんが気にならないなら、シェアしようよ」

「え!良いんですか?」

「折角来たんだから、食べないのも淋しいし、ね」

「え〜、じゃあ、どれにしようかな、、、」


 かなり長い時間悩んで、ボリューム重視になった。

 豚丼と味噌カツ丼、、、。

「両方丼だけど、良いの?」

「めちゃくちゃ腹減ってて」

と笑う。朝からバイトで、もう昼前だもんな。

「好きなモノって、先に食べますか?後にしますか?」

「うーん、僕は先かな、、、。小学生の頃、好きなモノを後にしてたら、最後のデザートが食べられなくて悲しかったんだ」

「俺は、後に食べます」

「じゃあ、鍬山くわやまくんはどっちから食べたい?」

「、、、悩むなぁ!」

「だよねぇ、、、」

「俺、味噌カツ丼食べた事ないんですよね」

「僕も」

「豚丼から食べようかな、、、」

「じゃ、僕が味噌カツ丼からで良い?」

初めて食べた味噌カツ丼は、こってりした甘辛の味噌で、ちょっとしょっぱい気もする。ゴマが振ってあって美味しかった。

 半分ずつ食べて丼を交換する。丼と言ってもプラスチックの容器だけど。

 豚丼も甘辛くて美味しかった。タレが艶やかで、見た目も美味しそうだ。思った以上に、肉が柔らかかった。

 僕は頑張って食べたけど、途中でお腹一杯になってしまった。

鍬山くわやまくん、食べる?」

「良いんですか?食べます!」

「育ち盛りだねぇ、、、」

と彼の食べっぷりを見ていると

「小田嶋さんはもう少し食べて、背を伸ばさないと」

ニヤニヤする。


「意外とカップルも多いんだね」

男女で仲良く、ビールを飲みながら食べている。

 昼から外でビールを飲んで、好きな相手と美味しいモノを食べる。幸せそうだな。

「先輩はもう、酒、飲めるんですか?」

「来月、誕生日が来ればね」

「お持ち帰りされない様に、気を付けて下さいね」

「お持ち帰りって!」

「世の中には、とんでも無い人がいるんですよ。自分が男だからって、油断しないで下さい」

「分かった、分かった。気を付けるよ」

と笑うと。鍬山くわやまくんはブスッと機嫌が悪くなった。



*****



「そう言えば、小田嶋、もうすぐ二十歳はたちだよな!」

「じゃ、お祝いしないと!」

「お祝いって!」

「飲みに行こうよ」

と誘われてしまった。

 あっという間にメンバーが集まり、誕生日の後の週末、大学の近くで飲み会になった。

「みんな、飲めるの?」

と聞くと、数人はサークルの飲み会に参加した事があり、ビール以外なら飲めるらしい。

「やっぱりビールって苦手?」

「うーん、どこが美味しいのか、まだ分からないね」

「苦いだけだよ」

なんて話し出す。

 女の子も話しに加わり、すでに二十歳はたちを迎えて、飲み会大好きな彼女は

「最初は果実酒とか、甘いお酒が良いよ」

と教えてくれた。



*****



 今日もバイトが忙しい。

「え?飲み会?」

「うん」

「いつですか?」

「誕生日の後の週末」

「、、、小田嶋さんの誕生日って何日ですか?」

「、、、来週18日」

「来週末、飲みに行くんですか?!」

「うん?そうだよ?」

「俺、バイトですよ?!」

「大学の友達と行くから、鍬山くわやまくんは参加出来ないでしょ」

と笑う。

「何かあったらどうするんですか?」

「はい、そこの二人、声が大きい〜」

マネージャーに怒られた。

 鍬山くわやまくんは小声で

「店、何処ですか?何時までですか?何人位参加ですか?」


 え〜、、、女の子の父親みたい、、、


「何かあったらいけないから、迎えにいきます」

「大丈夫だよ」

「念の為です!」

鍬山くわやまくんは手を動かしながら喋っている。それなのに、ハンバーガーを綺麗に作る。

「後で、店と時間、メッセージで送って下さいね」


 心配性だな、、、。



*****



 飲み会は設定されているけど、誕生日当日におめでとうを言ってくれたのは鍬山くわやまくんだけだった。

「プレゼントは?」

と笑って聞く。

「もっと前持って言ってくれないと、、、」

と言いながら、ポケットからチョコレートを出した。

「土曜日、バイト休みですよね?何か買いに行きましょう」

彼が言う。

「良いよ。チョコレート貰えたから」

地方から出て来て、仕送りをして貰っているんだ。チョコレートで充分嬉しかった。

鍬山くわやまくんの誕生日は?」

「え?祝ってくれるんですか?!」

嬉しそうだな。

「何かご飯でも食べに行こうか」

「はいっ!」

めちゃくちゃ喜んでくれる。



**********



 週末、小田嶋さんは飲み会だった。店の名前も聞いた。開始時間と終了時間も聞いた。俺はバイトが終わると、急いで店の前に来た。

 大きなガラスの向こうに、大学生のグループがいる。きっとあれだ。ほら、、、一人、酔い潰れてユラユラしている。

 一緒に参加した女の子が介抱していた。


 俺の小田嶋さんに触れるな、、、。


 そう思いながら睨み付ける。相手には見えないのに。


 男が二人、彼に近寄り立たせた。一人が彼を支えて、一人が荷物を持つ。


 相手が男だからって、安心しない。小田嶋さんは綺麗な顔をしているから、たまに同性からも思いを寄せられているんだ。


 店の前に、大学生が15人程集まっている。最後に小田嶋さんが出て来た。

 二ヘラっと笑い。肩を組んで支えている友達に笑い掛ける。

 何であそこにいるのが俺じゃないんだろう、、、。そう思いながら、近付く。

 駅までの道のり、一番後ろを歩く3人。

「このまま、何処どこかに入っちゃう?」

「小田嶋と?まぁ、顔は女みたいだけど」

「色も白いし、華奢だから、意外とイケるかもな」


ギャハハッ!


っと、品の無い笑い方をした。


 俺は電話を掛ける。小田嶋さんはスマートフォンを探す。


「くわやま?」

「後ろ」

小田嶋さんは、後ろを振り返り

「おーい!くわやまくーん!ここ、ここー!」

と叫ぶ。

俺は通話を切って、小田嶋さんの側に行く。

「お疲れ様です。荷物貰いますよ」

上級生に声を掛ける。

 彼はすんなり、鞄を寄越した。

「小田嶋さん、帰りますよ」

と手を差し伸べると、男の肩から離れて俺の手を掴んだ。

「飲み過ぎですよ」

と彼に優しく言う。

「誰に飲まされたんですか?」

上級生を、睨みながら声のトーンを下げる。

「悪いね、後は任せるよ!」

そう言うと、二人は前を歩く集まりに合流する様に走った。


鍬山くわやまくん、気持ち悪い、、、」

あーあ、、、こんなに飲んじゃって、、、。

「どこかで休みますか?」

うん、と言う様に頷く。駅前の商店街に、小田嶋さんを座らせる様な場所は無かった。取り敢えず、ガードレールだな。

 ユラユラ、ユラユラしている彼の横に立つと、俺の身体に頭を寄せ、体重を掛けて来た。

 すぐ、そこにホテルがあるのは知っている。

 でも、使った事も無いし、財布に余分な金は入って無い。



 金があったら、迷う事無く入っているのに、、、



*****



 結構長い時間、そこにいたと思ったけど、商店街の時計を見たら10分しか経っていなかった。

「ん、、、」

小田嶋さんの声が聞こえて

「大丈夫ですか?」

と聞くと

「大丈夫、、、」

と返事をした。

 駅まで歩き、電車に乗る。座席に座らせるとうつらうつらしている。

「帰れますか?」

「うん」

眠そうだ。

「俺の家でも良いですか?」

小田嶋さんは顔を上げ、ヘラッと笑う。

鍬山くわやまくんの家?、行きたい」


 可愛い、、、


「駅、着いたら起こすんで、寝てて下さい」

「ん」

と俺の肩に頭を預ける。


 はぁ、、、無意識でやってるんだろうけど、、、。



 駅に着く少し前で、小田嶋さんを起こす。

「降りますよ」

と立ち上がると、彼も着いて来た。


 まだ、酔っ払ってるんだ、、、。


と、思いながらそっと指を繋ぐ。改札を出て、5分位歩くと俺のアパートに着いた。

「どうぞ」

と玄関を開けると

「お邪魔します」

と深々とお辞儀をする。

「シャワー浴びますか?」

玄関横のユニットバスの前で聞くと、中を覗き、目を輝かす。

「初めて見る、、、」 

「使った事、ありますか?」

「無いよ」

そうか、初めて見るんだもんな。

「カーテンを閉めて、水が外に出ない様にシャワーを浴びて下さい。カーテンは中に入れたままで良いですよ」

「入っても良い?」

「どうぞ、バスタオル持って来ます。鍵、開けておいて下さい。カーテン閉めたら見えませんから」

小田嶋さんは、さっさと中に入る。


 バスタオルを準備して、着替えは、、、下着は貸せない、、、。シャツとズボンだけ、何か無いかと探す。

 エアコンいれなくちゃ。


 ユニットバスからシャワーの音が聞こえる。


 小田嶋さんが家にいる。嬉しくて、ニヤけてしまう。



*****



 小田嶋さんが俺のシャツを着ている、、、。

 狭い部屋に布団を敷いたら、座るのは布団の上しか無かった。

 彼は、ズルズルと布団に飲まれて行く、、、。

「俺もシャワー浴びて来ます」

そう言って、ユニットバスを使う。彼は綺麗に片付けてから、出て来てくれた。ビニールカーテンも、壁も泡が着いていなかった。


 タオルで髪を拭きながら出て来ると、彼は何故か体育座りをしている。

「どうしたんですか?」

「髪が濡れてるから」

「ああ、ドライヤーですね。済みません」

仕舞ってあったドライヤーを取り出し、コンセントに差し込む。

 スイッチを入れて、彼の髪を乾かす。


 え?


と言う顔をする。知らんフリをして、ドライヤーを掛け続けた。

「はい、お終い」

とドライヤーを自分に向けると、小田嶋さんは布団に寝転んで

「冷たくて気持ち良い、、、」

と布団に頬擦りをする。、、、俺の布団。

 ザッとドライヤーを掛けている間に、小田嶋さんの呼吸がゆっくりになり、寝てしまった。

 俺はドライヤーを仕舞い、彼に覆い被さる様に上から見下ろす。


 無防備だ、、、無防備過ぎるだろ?俺だから良いけど、もし、これがさっきの二人だったら、、、。


 ドロリと黒い感情が持ち上がる。


 彼の細い両手首を右手で掴む。

「んう、、、」

左手で、目を覆う。

鍬山くわやまくん?何、、、?」


 不安そうな声。


鍬山くわやまくん、、、?」


「自分が男だからって、油断しないで下さいって、言いましたよね?」

「ちょっ、、、」

力を入れて、逃げようとする。


「ちょっ!やだ、、、って!めて」

俺にのし掛かられ、怖がっている。

「 ! 止め(や)っ、、、」


 パッ!と手を離す。


鍬山くわやまくんっ!」

「、、、さっき、、、小田嶋さん、連れ込まれそうになったんですよ?覚えてますか?」

「え、、、?」

「二人にです。もし、ホテルにでも入られたら、俺でも助けられません」

「ご、、、ごめん、、、」

「初めての飲み会で浮かれちゃうのも、分かりますけど、次は気を付けて下さい」

「うん」

「水しか無いですけど、飲みますか?」

「うん、、、」

俺は冷蔵庫から冷たい水を取り出し、グラスに注ぐと、小田嶋さんに手渡した。

 彼は喉が渇いていたのか、ゴクゴクと飲み干す。

 空になったグラスを受け取ると、小田嶋さんはパタンと背中を向けて布団に寝転んだ。


 怒らせたかな?


 それでも良い。彼が自分の身の危険を感じ、次から気を付けてくれた方が、安心出来る。



**********



 くっ、鍬山くわやまくんのバカッ!

 あんな事されて、不覚にもドキドキしてしまった。

 恐怖心を感じながら、彼の大きな手に捕まれた手首と、覆い隠された目を思い出す。


 年下のくせにっ!


と思いながら、心臓がドキドキと煩くて困る。


 あのまま、鍬山くわやまくんに乱暴されていたら、、、。変な妄想が、僕の身体を刺激した。


 彼が台所から戻って来た。狭い布団に寝転ぶ。


「小田嶋さん、、、怖がらせて済みません、、、。でも、心配だったんです、、、あの二人が、小田嶋さんとならイケるとか、何処かに入るとか話していたから、、、。本当に気を付けて下さいよ?」


 鍬山くわやまくん、、、。


 僕は、彼の方に身体を向ける。寝返りを打つ様に、モゾモゾと体勢を変えると、思った以上に近かった。


 、、、ヤバい、、、。


 彼に抱き締められた。


「部屋が狭くて済みません」

「そんな事無いよ」

彼の胸が目の前にある。身体が反応してしまいそうで、少し離れると

「すぐ、壁だから、、、」

と更に身体を密着させた。


鍬山くわやまくん、ち、、、近か過ぎる、、、」

顔が赤くなってしまう。

「何、赤くなってるんですか?」

「だって」

彼が背中を撫でた


 ゾクゾクゾクッ!っと何かが這い上がって来る。


「俺、小田嶋さんが好きなんです、、、」

更に身体を密着させる。

「油断しないで下さいって、何度も言いましたよ?」

「うん、、、」

彼がシャツの中に手を差し込む。

「良いんですか、、、?」

シャツ越しじゃ無くて、直に僕の背中を触る。

「どうなっても知りませんよ?」


 息が、、、


「酔っていたからなんて、言い訳は無しですからね?」


 頭が、、、


「俺、好きって言いましたからね?」


「僕も、、、好きだから、、、鍬山くわやまく、、、ん、、、」


 頭がふわふわする。まだ酔っ払ってるのかな?

 鍬山くわやまくんが好きだ、、、、



*****



 可愛いワンコが、猛犬になってしまった、、、。



**********



 僕は、今、猛烈に反省している。

 でも、全てちゃんと覚えていて、お酒の所為にしてはいけないと、自覚していた。


 狭い部屋で、大きな彼に抱き締められて目が覚めた。


 彼に好きと言ってしまった、、、


 鍬山くわやまくんがモゾモゾ動く。ゆっくり目を覚ました。口元が笑って、僕にキスをする。

「小田嶋さん、、、好きです、、、。俺達、両思いですね」

と言って、キュッと抱き締められた。

「いつから俺の事、好きだったんですか?」

頭の上から声がする。

「俺は初めて会った瞬間に恋に落ちました」

髪にキスをして来た。

「両思いなんて、、、」

鍬山くわやまくんの下半身が密着する。

「ちょっ!」

「だって、仕方が無いじゃないですか。好きな人を抱いてるんですよ?生理現象です」

「だからって!」

「俺の事、嫌いですか?」

「す、好きだよ。好きじゃ無いと、あんな事出来ないよ?!」

「あんな事って、どんな事ですか?」

鍬山くわやまくんがニヤニヤしている。

健人たけと、、、」

「え?」

「今日から健人って呼ぶ」


 僕がそう言うと、健人は真っ赤な顔をして喜んだ。


 僕の小さな仕返し。



 でも、この後、健人は猛犬になり、約束だった買い物は行けなくなってしまった。



 猛犬に注意、、、。






 

若いからすぐ、猛犬になっちゃうかも、、、

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