第1話 ハズレスキルと、最初の収穫
気づいたとき、俺は土の上に寝ていた。
「……は?」
空が、やけに青い。
いや、違う。
ビルがない。電線もない。
代わりに広がっているのは、どこまでも続く草原と森。
「……夢か?」
そう思った瞬間――
頭の中に、直接声が響いた。
『転生が完了しました』
「……は?」
『あなたにはスキルが付与されています』
目の前に、ゲームみたいなウィンドウが浮かぶ。
⸻
【スキル】
成長促進
⸻
「……地味すぎるだろ」
思わず声が出た。
剣も魔法もない。
チート感ゼロ。
いや、待て。
「……俺、なんで転生してるんだ?」
記憶が蘇る。
終電。
真っ暗なオフィス。
鳴り止まないチャット通知。
そして――
「……あー、死んだのか」
デスクに突っ伏したまま、意識が途切れた。
あれ、過労死だな。
「……まあいいか」
不思議と、ショックはなかった。
むしろ――
「もう働かなくていいのか……」
その一言で、全部どうでもよくなった。
⸻
「とりあえず……生きるか」
レンは立ち上がり、周囲を見る。
何もない。
本当に何もない。
あるのは、雑草みたいな植物だけ。
「……これ、食えるのか?」
しゃがみ込み、適当に引き抜く。
その瞬間――
ふわっ、と光った。
「……は?」
さっき抜いたはずの場所から、
同じ草が一瞬で生えてきた。
しかも、さっきよりデカい。
「……え?」
もう一度、引き抜く。
また光る。
また生える。
今度は、さらに立派に。
「……これって」
視線を、スキルに向ける。
⸻
成長促進
⸻
「これの効果、か?」
試しに、その草を口に入れてみた。
――甘い。
「……うま」
いや、普通にうまい。
しかも――
体が、軽い。
「なんだこれ……」
明らかに、さっきより動きやすい。
筋肉に力が入る。
「……バフ?」
レンは思わず呟く。
もう一度、草を抜いて食べる。
また体が軽くなる。
「……これ、やばくね?」
無限に育つ。
食べると強くなる。
つまり――
「無限強化、できるってことか?」
思わず、笑った。
「……勝ちじゃん」
⸻
その日、レンはひたすら草を育てて食べ続けた。
日が沈む頃には――
「……腹減らねぇ」
体力も、まったく落ちていない。
むしろ、元気すぎる。
「これ、農業やれば無敵じゃね?」
そう思った瞬間だった。
ガサッ、と音がした。
「……?」
振り返ると――
森の奥から、誰かが倒れ込んできた。
長い金髪。
尖った耳。
そして、ボロボロの服。
「……エルフ?」
その少女は、レンを見るなり――
「……水……」
そう呟いて、気を失った。
⸻
「……いや、イベント早くない?」
レンは思わずツッコんだ。
だが、放っておくわけにもいかない。
「……まあいいか」
レンは肩をすくめて、彼女を抱えた。
「どうせなら――」
空を見上げる。
「のんびり暮らすついでに、助けるか」
⸻
このときレンはまだ知らなかった。
この“地味なスキル”が、
世界のバランスを壊すことになるなんて。
そして――
この少女をきっかけに、
レンのスローライフが、ハーレム化していくことも。




