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第5話・情報《パズル》の破片《ピース》が嵌まる時~知りたくなかった現実に~

第1章 旧都に潜む事件の面影



     第5話・情報パズル破片ピースが嵌まる時~知りたくなかった現実に~



 皇都・アンシェは南と北に大門があり、出入りはこのどちらかからしかできない。



 更に、皇宮は皇都の中央。主神殿は皇都の東端にあり、そこから南北、どちらかの大門に向かうのは皇宮からよりも時間がかかる。



 目的地は皇都西方にある旧都・アンヴァなので、南から出ても北から出ても大差がないように思えるが、アンヴァに続く旧道は北門側にしかなかった。



 急ぎではあるが急行する必要はないため、二人はのんびりと大通りを北門へと向かい、ステールの徽章で外へと出る。



 街道では並み足で馬を走らせ、旧道に入る前にいったん休息を取った。



「さて、ステールさんは前回の調査で何が起きたのかの情報共有は受けていますか?」



 街道脇の森の入口で馬から降りて、手近な倒木に座ったインスの問いかけに、馬に水を飲ませてやりながらちらりと見たステールは真面目な顔で口を開く。



「廃離宮の西の塔に近づいた皇宮呪師が三人、発狂していきなり火の魔法を使ったと聞いている。()()の発見報告があった場所だからと、討伐隊から派遣された者たちで、全魔力を込めて使われたせいで同行していた調査隊の呪師たちでは『火消し』をしきれなくて、救援の呪師が追加で派遣された」



「周囲の魔力濃度と塔内部の魔力濃度があまりにも違っていて、不用意に近づくのは危険だと調査隊の呪師の方が注意をしたそうですが、だからこそと向かって、充てられたようです」



 頷いて、補足したインスの説明にステールは眉を顰めた。



「おい。まさか……」


「最悪、可能性はあります」



 まじかよ……



 皆まで言わせずにあっさりと言うインスに、ステールは空を仰いだ。



 ああ。空が青いなぁ~。あの雲、羊みたいだ……旨そうだなぁ~。



「現実逃避しても、現実は変わりませんよ?」


「うるさい」



 少しぐらい逃避させろとインスを睨む。



「だからこそ、護符を用意して頂いたんです。前回の調査団は事前準備も特にせずに、万が一、残党が居た場合の時間稼ぎとして討伐隊から呪師を派遣したそうですよ」


「……時間稼ぎどころか、そいつらが足を引っ張ったんだろう?」


「仕方ないでしょう。()()()()()も与えられず、『倒したはずの()()の討伐確認をして来い。』とだけ言われて行っているんですから」


「……………」



 さらりと言われて、ステールの動きが止まる。



 秋の爽やかな風が二人の間を駆け抜け、ブルルと馬が首を振った。



「………ぇ?」


「ですから、正しい情報を……」


「そこじゃない!」


「倒したはずの魔族の討伐確認の方ですか?」


()()じゃなくて?」


()()ですね」



 ステールの手から水の入った筒が落ちた。



「っ。…………何、を……考えているんだ! あの、耄碌爺っっ!!」



 突然の怒声に、驚いた馬が高く嘶いて前足を振り上げる。


『ジジイ! ジジイ……! ジジイ……』と木霊すステールの怒声と馬の嘶く声が静かな森に響き渡った。



「どうどう……」



 倒木に座ったままのインスは馬を宥めるように軽く風の魔法を使って切り分けたリンゴを鼻先に近づける。



 同時に、一切れをステールの口元にも飛ばす。



 反射で受け取ったステールはぶるぶると肩を震わせながらも口の中にリンゴを突っ込み、咀嚼する。



 馬の方も匂いにつられて食べ始め、落ち着きを取り戻す。



「ペンティス呪師長の無茶ぶりなんて、今に始まったことじゃないでしょう?」



 あっさりと言うが、その結果、死にかけたり……実際に命を落としたり……戦線離脱したりする皇宮呪師が多いのは事実。



 確かに護衛官は、もしもの場合は呪師を殺してでも止める役割を負っている。



 だが、その本質は『魔法を使える唯一の存在』である呪師の『護衛』だ。



 むやみやたらに犠牲を増やすことではない。



 翻って、インスが言っていることが真実だとすれば、廃離宮に出たのは『魔物』ではなく『魔族』だったということ。



 しかも、ステールはそこにジャンヌたちがいたことも知っている。



 皇女殿下が魔物退治もありえないと思ったが、魔族の討伐などもっとあり得ない。



 確かに、ジャンヌは神剣を手にしており、その力を使えるようにと訓練もしていた。


 けれど、実際に戦ったことがあるのは、インスが作った影人形……その支配下を離れて暴走してしまってはいたが……本物の魔物ではない。



 それなのに、いきなり魔族と戦った?



 ジャンヌの専属騎士団長であるファンがそれを許すとは到底思えないのだが……



「ジャンヌ様たちが戦うことになったのは不可抗力ですよ。向こうが強制的に呼び出したのですから」


「は?」



 ポカンとしたステールにちらりと目を向けて、インスは指先に小さな水球を作り出し、それを口の中に放り込んで水を飲み干す。



「……向こうが、呼び出したのです……私は皆さんを一所に集めるための目印ですね……」


「……っ!?」



 事件の流れが、ステールの頭の中で繋がった。


第1章第5話をお読みいただきありがとうございます。


リンゴを咀嚼しながら怒りに震えるステールと、淡々と爆弾発言を落としていくインス。


二人の対照的な温度差が印象的な回でした。


ついに「パズルのピース」が嵌まり、物語は旧都アンヴァへと加速していきます。


果たして旧都で二人を待ち受けているものは?


次回もお楽しみに!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【第2部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第2部・レッド・フレイムの残照】

(https://ncode.syosetu.com/n5488lq/)


【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第2弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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