表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/17

第3話・皇宮呪師の帰還~強制召喚ともいう当然~

第1章 旧都に潜む事件の面影



       第3話・皇宮呪師の帰還~強制召喚ともいう当然~



 インス=ラントは皇宮勤めの皇宮呪師こうぐうじゅしである。



 一か月ほど前、皇孫皇女であるジャンヌと、その護衛騎士団の中から数名だけが参加した極秘訓練が行われたのち、皇宮内神殿の医務殿から、入院中の神官呪師しんかんじゅし見習いの少年・アインと二人。一時行方が分からなくなった。



 その後、血まみれの姿でジャンヌの部屋で発見され、主神殿の医務殿に転院。



 緊急手術を受け、長期間にわたって入院することになった。



 呪師が、その所在を確認できない状態と言うのは大罪。



 しかし、今回の行方不明事件は本人の意思によるものではないのが分かっていたので、尋問ではなく事情聴取が行われ、事実確認のみがなされた。



 見た目ほどの大きな怪我……致命傷となりうるもの……はなかったものの、出血多量で一時心肺停止に陥ったインスは、生命力も枯渇していたため、回復魔法での治療が困難な状態。



 そのため、入院期間が重傷によるものではなく、重症によるものとして長くなり、漸く治療が完了してからもなぜか、退院するのをごねていた。



「……と言う訳で、ラント呪師を引きずってでも退院させてきてください」



 皇宮護衛官であるステール=ベルンを前にそう告げたのは、この皇宮の呪師殿で総括を務める呪師長のキプラ=ペンティス。



 五十五歳ほどの外見の、明るい緑色の髪と暗い紅紫色に近い茶色の瞳をした男性。



 ワンレングスの髪は若干くせがあり、肩甲骨の下辺りでひと纏めにして結ばれている。



 皇宮呪師長の青と黒のローブを身に纏い、若干困ったように微笑む。



「残念ながら、動けるのであればして頂かなければいけない仕事がありますので」


「……は」



 続けられた説明に、ステールは表情を変えずに頷く。



 それはそうだ。としか言えない。



 正直、「何を考えているんだ!あいつは!!」と内心怒鳴り散らしたい気持ちは大いにあるが、顔には出さない。



 そうして、ステールは主神殿の医務殿へと向かって……



「嫌です」


「嫌じゃない」


「もう少しくらいいいでしょう?」


「ダメだ」


「ケチ!」


「そういう問題じゃない」



 子供のように駄々をこねるインスに、表情を変えずに相手をしているステールは内心うんざりとしていた。



 まだ十八歳でしかないインスは、普段は聞き分けの良い、大人顔負けの冷静さと明晰さを見せるのに、ごくたまにこんな風に子供じみた我儘を言う。



 インスに付くことがある皇宮護衛官はごくたまに出るこの我儘に手を焼かされることがあった。



 最近……具体的に言うなら、アインの実技指導の担当者になった後辺りから……減っていたというのに、一体どうしたというのか……



「……正直、今、離れるのは良くない気がするんです……」



 子供のように頬を膨らませ、そっぽを向きながら駄々をこねていたインスが、不意に小さな声で呟く。



 一体どういう意味だと、顔には出さずにステールは眉を顰めた。



「そうは言うがな……」



 やり取りを、苦笑を隠さずに眺めていた大神官だいしんかんのチェスパス=インゼラが口を挟む。



「皇宮呪師としてのお前が必要なのは当然だろう。廃離宮の調査も中断されたままだと聞く」



 言われて、インスはムッとしながらも口を噤んだ。



 明確にインスに調査をさせると聞いたわけではないが、ステールもキプラが言っていた『仕事』というのが廃離宮の調査であろうと言うのは予想ができていた。



 もちろん、インス自身も分かっている。



「……インゼラ大神官……」



 ややあって、溜め息を漏らしたインスはチェスパスにあることを頼む。



 言われて、チェスパスもステールも少し目を見開き、考え込んだ。



「……構わんが、五日はかかるぞ?」


「そのくらいなら何とかやり過ごせますね」


「お前……」



 腕を組んでしばし黙考したチェスパスの答えに、にこりと笑って言ったインスの言葉に、流石にステールが呆れを見せた。



「もっと、()()()が仕事をしてくれればいいんですよ。何年皇宮呪師をやってるんですか」



 再びプイっと顔を背けていったインスに溜め息。



「とにかく! 皇宮に戻るぞ!!」


「え? ちょ……っ!? ステールさん!?」



 がしりとインスを掴み、そのまま肩に担ぎ上げる。



「お騒がせしました」


「いや……お前も、大変だな……」



 当然暴れるインスを力ずくで押さえ込んで、辞去の挨拶をするステールに、憐みの眼差しを向けて返したチェスパスに見送られ、二人は医務殿を後にした。


第1章第3話をお読みいただきありがとうございます。


ようやくインスが退院……もとい、強制的に連れ戻されました。

普段は冷静沈着な天才呪師インスですが、ステールの前ではなかなかの駄々っ子ぶり。

最終的にはステールに「肩に担がれて連行される」という、呪師としての威厳が台なしな幕引きとなりました(笑)。

もしかすると護衛官の肩に担がれてインスがジタバタする姿は、呪師殿の「いつもの光景」なのかもしれません。


しかし、インスが漏らした「離れるのは良くない気がする」という「嫌な予感」はこの先の不穏な展開を予見しているのでしょうか?

廃離宮で起きている異変と、彼の直感はどう結びつくのか。


次回もお楽しみに!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【第2部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第2部・レッド・フレイムの残照】

(https://ncode.syosetu.com/n5488lq/)


【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第2弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ