第2話・火消して生じる火種の熾火~封鎖された廃都に残る~
第1章 旧都に潜む事件の面影
第2話・火消して生じる火種の熾火~封鎖された廃都に残る~
あれから、皇宮に駆け込んだ連絡要員の皇宮護衛官からの報告で、救援の皇宮呪師が派遣され、暴走した三人の皇宮呪師の魔法の火消しを完了させる。
力を使い果たした呪師たちが死屍累々となる中で、辛うじて意識を残しているのは調査隊のリーダーを務めていた呪師一人。
その彼も、魔力の使い過ぎで体調は最悪。
正直意識を飛ばしてしまいたいところではあるのだが、できるだけ早く、情報を伝えておく必要があった。
旧都から皇都への道すがら、馬車の中で救援部隊の皇宮呪師を相手に起きたことを話していく。
「……塔の周辺の魔力濃度と、塔内の魔力濃度が違い過ぎた……おそらく、彼らもそれに気づいたから様子が気になったのだろうが……」
その結果、あまりにも濃密な魔力に充てられて、精神が崩壊した。
恐慌状態に陥り、全身全霊でその恐怖から逃れようとして、もっとも速く構成できる魔法を使った結果があの火柱。
三人共が派手な魔法を好む質で、黒魔法以外では精霊魔法でも火炎系を得意としていたが故の暴挙。
「……正直、あの三人で抵抗できない濃度だというのなら、下手に近づけば同じことになりかねない……彼ら以上の魔力を持つ者であれば多少は持つかもしれないが……」
今すぐ動ける中にそんな呪師は数えるほど。
いつ彼らを派遣しなければいけない事態が起きるかわからないのに、最悪全員が戦線離脱するような破目になったら目も当てられない。
「当面は、封鎖するのが最善だろう……」
そこまで伝えるのが限界。
調査隊のリーダーの呪師も意識を失い、廃離宮の調査は一時中断されることになった。
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報告に、皇宮呪師長・キプラ=ペンティスは一つ頷いた。
皇都西方の旧都・アンヴァの廃離宮の調査は途中撤退と言う形で終了。
第二回目の派遣は当分行えないという結論に達していた。
調査隊に所属している呪師と言うのは、魔力の感知能力の高い、どちらかと言えば繊細な魔法の使い方を得意としている。
その調査隊の呪師たちが、接近不可と判断したのであれば、並みの実力者では対応できないのは明らか。
一人、心当たりがないわけではないが、その一人は今、重傷を負って主神殿の医務殿に入院中。
とてもではないが派遣できる状態にない。
よって旧都付近には暫く近づかせないように注意をするにとどめる。
幸いだったのは、わざわざ旧都に近づく者など元々殆どいなかったということ。
城下を含めて近隣には「魔物の発生があったばかりなので近づかないように。」との通達だけがなされ、特に混乱もなく表面的には落ち着きを取り戻した。
代わりに……
真実を知る者の中には不満と不安を訴える者も。
真実を知らないが故に不満と怒りをぶつける者も。
囀る声は微かに皇宮中に響いていたが、キプラは沈黙を保った。
彼にとっては、どちらの声も同じようなもの。
『知って』いるが故の『恐怖』と『知らない』が故の『無謀』と……どちらからも向けられる《《畏怖》》。
人は、わからないものが『怖い』のだ。
それをキプラはよく『知って』いる。
かつて、人間の女呪師が魔族と化し、女神と覇権を争った大陸・インフォース。
その中にあって、最大の面積を誇るここ、エスパルダは、同時に最古の聖皇国。
赤毛の魔女の神話から、魔法が厳しく管理される中、最も多くの使い手――呪師を抱え、女神の秘宝を有している。
暁の女王・ディエルは公正を司り、その秩序を守る為、自ら戦場を駆ける戦女神。
聖皇国は、かつて女神と共に戦った英雄によって興された国。
今また女神は、己が巫女として、現皇帝の孫に当たる姫を祝福した。
けれど、その結果は、五年前の魔族による襲撃事件。
皇太子夫妻を始め、多くの者が犠牲になり、皇孫皇子であるジョン。
カルロス・グラジオス・ジョーン皇子殿下は魔族の呪いに侵され、時を止めたように眠り続けていた。
その、弟皇子の呪いを解かんと、女神の巫女である姉姫・ジャンヌ。
ジニア・プローフ・ジャネット皇女殿下が神殿の奥深くに隠された小堂から女神の至宝である神剣を持ち出したのが少し前。
その後、五年前の襲撃犯である魔族との戦いが起こり、ジョンの呪いが解かれたのが三日前のこと。
戦いで疲れ果てたジャンヌはジョンの目覚めを確認した後、泣き疲れて眠ってしまい。
目覚めたとはいえ、五年も眠らされていたジョンも体力が衰えているため、眠ったり起きたりを繰り返しているらしい。
キプラは二人の様子を直接見るようなことはないので、ただその報告だけを受け取っていた。
果たして、弟皇子を救うために、姉姫であるジャンヌが神剣を手にしたことは本当に正しかったのか?
その答えを知る者は、今はまだどこにも居なかった。
第1章第2話をお読みいただきありがとうございます。
圧倒的な魔力濃度によって、精神を崩壊させた呪師たち。
火柱の騒動は収束したものの、廃離宮の調査は事実上の「無期限中断」となってしまいました。
本編でジャンヌたちが戦った廃離宮は、いまや熟練の呪師ですら足を踏み入れられない「禁域」と化してしまいました。
知るがゆえの恐怖、知らぬがゆえの無謀。
呪師長キプラの冷徹な視線が見据える、人間の『無知』と『畏怖』。
そして、本編で弟皇子ジョンを救ったジャンヌの決断が、この先にどのような波紋を広げていくのか……。
物語はここから、さらに深い「影」の部分へと踏み込んでいきます。
【第1部はこちら】
姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】
(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)
【第2部はこちら】
姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第2部・レッド・フレイムの残照】
(https://ncode.syosetu.com/n5488lq/)
【番外編・第1弾はこちら】
皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~
(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)
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【第2弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】
【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】
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ノリト&ミコト




