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第5話・動いた札を動かした~望む未来の絶望を~

第3章 外堀埋める大人だいじんたちの思惑



       第5話・動いた札を動かした~望む未来の絶望を~



 そんなことがあった日の夕方。


 皇宮護衛官に付き添われて主神殿の医務殿を訪れたインスは、神官長室でシリウム=ゾナール医呪神官長と顔を合わせた瞬間へなへなと座り込んだ。



「何だ? 具合でも悪いのか?」


「……いえ……」



 ぐったりとして疲れた様子を隠そうともしないインスを、面白そうに見て言うシリウムをちらりと睨む。



「……確かに、アレならペンティス呪師長も否とは言えないでしょう……それは、確かです……」



 けれど同時に、いきなり勅令を受ける破目になったインスの心的負担もとんでもないことになったが……



「一応言っておくが、アレは私の差し金ではないぞ? 流石に、一介の神官長が動かせるお方ではない」



 それはそうだろう。



 落ち着いて考えれば分かるが、話を聞いた直後はシリウムの差し金だと疑いもしなかった。



 言うならば、皇宮呪師長であるキプラが皇帝を動かせないのと同じ。



 では誰が?



 答えは簡単だ。



 皇帝と、ほぼ同格の存在。



 即ち、教皇・ステラ=シアス。



「……本当に……心臓に悪すぎる……」



 愚痴の一つや二つ零させて欲しい。



 絶対に面白がっているのが分かるだけに、インスの声には本気で怨みが籠っている。



「おいおい。アインにそんな顔、見せるなよ?」


「分かっています。だからここで愚痴っているんです……」



 呆れた声で咎めるシリウムに、若干不服そうに返したインスは溜め息一つで気持ちを切り替えた。



「……それで? その後のアイン君の様子は?」



 それから、居住まいを正してシリウムに問いかける。



「変わらずだな。夜は悪夢にうなされている。食事の方は頑張ってはいるが、お前がいる時ほどは食べれていない」



 答えに微かに眉を顰めた。



「……私が居られるのは、夜だけなんですが……」


「分かっている。けれど、それで大丈夫なはずだ……お前の運び方次第だがな……」



 呟くように言ったインスに、シリウムはにやりと笑う。



 どういう意味かと目で問うインスに……



「お前が居ない間もちゃんと食べて、ちゃんと休むように言って聞かせて、夜、こっちに来たら確認するようにすればいい」



 報告させるようにすれば、しかもその相手がインスであるなら、アインはちゃんと療養できるだろう。



 報告できないような事はしない。



「……なるほど……」



 半ば騙すようではあるが確実だ。



 あとは……



「あとはお前が、アインを心配させるような真似をしなければ大丈夫だろう」



 それが一番の問題なのだけれど……と内心で思いながらも、インスは無言で頷く。



「それと、皇宮呪師学校の方から、できるだけ早く体調を整えて授業に復帰して欲しい。と言う言伝を預かっています」



 それから改めて口を開いたインスの言葉に、さもありなんとシリウムも頷く。



「それはそうだ……神殿側こっちだって、それを望んでいる……難しいだろうが、な……」



 最後に加えられたシリウムの言葉にインスも重く溜め息を漏らす。



 そう。いくら大人たちが望んでいても、アイン自身が乗り越えなければいけないことが、まだまだ多く残っている。



 退院できて、呪師寮に戻って、授業に復帰できたとしても、これまでと同じようにはいかない。



 絶対に……



 けれども、アインに望まれているのは、()()()()これまで通りなのだ。



「……最初の授業は、私が担当することになっています……そこを越えないと、どうにもなりませんから……」



 告げたインスの顔には憂いが色濃く浮かんでいて、聞いたシリウムも重々しく頷く。



 そう、アインが乗り越えなければいけない最初の『授業』は、インスにしか担当できない。



 そして、その授業を受ける時、漸くアインは知るだろう。



 これまで通りが、いかに難しいことであるのかを。


第3章第5話をお読みいただきありがとうございます。


皇帝を動かしたのは、まさかの教皇。


大人たちが盤上の札を動かして作り上げた「出向任務」でしたが、その裏にはアインが直面しなければならない残酷な現実が隠されていました。


「夜だけ一緒にいればいい」という甘い解決策ではなく、アイン自身が自立して地獄を乗り越えるための、インスにしかできない「最初の授業」。


望まれる「これまで通り」という言葉の重みが、二人の未来に重くのしかかります。


救いであるはずの再会が、同時に過酷な教育の始まりでもある。


インスの憂いに満ちた表情の真意とは……?


次回もお楽しみに!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【第2部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第2部・レッド・フレイムの残照】

(https://ncode.syosetu.com/n5488lq/)


【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第2弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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