表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/17

第3話・使者は来りて笑顔で迫る~絶対的な一声で~

第3章 外堀埋める大人だいじんたちの思惑



       第3話・使者は来りて笑顔で迫る~絶対的な一声で~



 皇宮内の一角には、呪師たちが日ごと詰める『呪師殿』と呼ばれる建物がある。



 そこには、事務棟、実務棟、各所属隊ごとの詰所。


 専用演習場、食堂や浴場などの生活関連棟と、正式な皇宮呪師が入寮可能な個室呪師寮が建ち並んでいる。



 更に別の一角には皇宮呪師見習いが学ぶ皇宮呪師学校及び学生専用の呪師寮。


 そして、生徒専用の演習場や図書殿などもあり、学習に集中できる環境が整えられていた。



 そんな呪師殿の周辺域には、各呪師家系の者が住まう皇宮呪師街と呼ばれる住宅地も存在し、皇宮の敷地内にありながら一つの小さな集落を形成している。



 これらは当然、彼らが勝手に外へと出て、その魔法の力を悪用することがないように監視し、管理するための仕組み。



 同様の仕組みが主神殿にも存在し、そちらでは神官呪師らを監視・管理・育成している。



 もちろん、皇宮呪師を多く出している家系から神官呪師に向いた子供が産まれることもあれば。


 神官呪師の家系から皇宮呪師に向いた子供が産まれることもあり、どちらを選んでも問題がない子供が産まれることもある。



 そういった、実家が自身の才能とは逆の呪師街にある呪師たちが個室呪師寮へと入寮することが多い。



 とはいっても、呪師の才は遺伝することも知られている。


 だから、古くからある家系などは特に婚姻などで血が入り混じって「みんな親戚」状態であることも多く、そういった親類の家に入る者もいた。



 更に、呪師と言うのは長命である。



 その身の内の魔力が一定値を超えると、生命力へと還元されて寿命が延びると考えられていて、還元された生命力がまた魔力になる。


 といった循環が起きる結果、魔力が一定値を超えた年齢から老化がほぼ止まる。



 完全に止まるわけではなく、止まったかのように緩やかに年を取っていくことが多いため、若い外見のまま百を超え、二百に届く者も出てくる。



 実際に、皇宮呪師長のキプラ=ペンティスは外見だけなら五十代中頃だが、既に百五十年ほどは生きているだろう。



 他にも、今も現役で長く活躍している呪師らは百歳に近かったり、それ以上であったりと様々。



 逆に本当に若い外見の者は年齢通りとみて間違いはない。



 緩やかに年を取るようになるのは「魔力が一定値を超えて、生命力との循環」が発生するようになってから。



 だから、どんなに早くても二十代の中頃以降。


 普通は三十代に差し掛かってから。



 結果、第一線で活躍する呪師の多くが三十代頃から五十代頃の外見をしている。



 正直、年齢が百五十歳ほどの筈のキプラの外見は若すぎる。


 それは、それだけ魔力と生命力の循環が滞りなく繰り返されている証拠でもあり……


 その外見と肉体の機能年齢はほぼ同じはずなので……


 影で耄碌爺呼ばわりされるほどボケてはいない。



 そのキプラは現在、皇城から送られてきた書簡を前に溜め息を漏らしていた。



「……ずいぶんと、無茶を仰いますね……」


「無茶は当然承知の上です。ですが、損失が計り知れないとの陛下のご意向ですので……」



 相対しているのは皇城からの使者。



 六十歳ほどの文官は、皇帝の秘書官を務める公爵本人。



 オーヴァ・カルヌア・ケルン=ガー・サティーラ。



 公爵家を表す「ガー」を家名に持つサティーラ家の当主、ケルン卿オーヴァその人。



 皇宮呪師長程度では逆らいようのない、文字通りの権力者。



 しかも、書簡の中身は最高権力者である皇帝その人からの勅書。



 それをわざわざ皇帝秘書官筆頭である公爵に()()()()()



 そう、本来であればキプラと、勅書に該当する皇宮呪師とを皇城に呼び出せばいいのに、わざわざ持ってきたのだ。



 身分は明確にケルンの方が上であるというのに、年齢がずっと上であるという理由からか、キプラに対しても丁寧な態度を崩さない。



 秘書官筆頭などをしていれば、各国の要人とも相対することになるので、自国の不利になるような隙を見せないためにもそう努めているのだろう。



「しかし、彼でなければできない任務も多くあります……私としても、一人に業務を集中させたくはないので、他の者たちにも割り振ってはいますが……」



 困ったように眉を下げるキプラの説明にケルンも頷く。



「ええ。当然、一人に業務を集中させるなど、あってはならないことです。その一人が抜けた途端に崩壊するような仕組みなどもっての外。ぜひとも他の者たちに割り振って、健全な組織を運営して下さい」


「……………ええ。もちろんです」



 穏やかでありながら、有無を言わせないとはこういうことか。



「では、本日夕方より、インス=ラント皇宮呪師には、夜間は主神殿・医務殿にて、アイン呪師見習いの特別介護要員として出向して頂きます。……宜しくお願いします」



 了承したともしていないとも取れる曖昧な返答に、ケルンはにこやかに告げ、最後に念押しするようにキプラを見た。



「……あまり、無理はさせないで下さいよ……ラント呪師も、まだお若い……」



 溜め息を堪えて返したキプラに、ケルンは笑顔で毒を吐く。



呪師長(あなた)にだけは言われたくない気もしますね」



 その、インス一人に業務を集中させている者が何を言うかと言外に伝える。



 実を言えば、インスを主神殿の医務殿に出向させられないか? という相談は、数日前にキプラの下に届いていた。



 その相談を送って来たのは主神殿の医務殿で総括を務める医呪神官長のシリウム=ゾナール。



 けれど、皇宮呪師を主神殿に出向させる。などと言う前例はなく……


 どうしてもインスが必要だというのなら、皇宮内にある神殿の医務殿に行かせるのが限界だ。



 なぜなら、主神殿は皇都の東の端にある神官呪師たちが住まう場所だから。



 対して、皇宮呪師の住まう場所は皇宮で、皇宮の外に行かせるのなら護衛官を伴う必要がある。



 例外は、該当の皇宮呪師が重篤な場合。



 皇宮内の神殿にある医務殿では治療が難しいとなれば、その生命を守るためにも設備や施設が整っている主神殿の医務殿に転院させなければならない。



 だからそのように返事をしたのだが、まさかその後、皇帝からの勅令と言う形で出向を認めさせるとは……



 誰の差し金かは知らないが、相当な度胸の持ち主だ。



(……面白いことを考えますねぇ……)



 内心、素直に感心して、けれども表情にはいかにも致し方なくと言った苦笑を浮かべて、キプラはインスを呼び出させた。


第3章第3話をお読みいただきありがとうございます。


今回は呪師たちの「若さ」の秘密や、意外な年齢設定が明かされました。


150歳を超えてなお現役のキプラ呪師長……その底知れなさが改めて浮き彫りになりましたね。


そんな老獪な呪師長を、笑顔と正論で黙らせた皇帝秘書官・ケルン卿。


異例中の異例である「主神殿への出向」という勅命は、インスとアインにとって救いとなるのか。


しかし、キプラがこのまま黙って見守るとも思えず……?


次回もお楽しみに!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【第2部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第2部・レッド・フレイムの残照】

(https://ncode.syosetu.com/n5488lq/)


【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第2弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ