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第2話・孤独の内に沈むのは~弱さの結果の残酷な~

第3章 外堀埋める大人だいじんたちの思惑



      第2話・孤独の内に沈むのは~弱さの結果の残酷な~



 半ば一方的に謝罪を告げ、訓練に行った三人の皇宮呪師を見送り、一人部屋に残されたインスの表情は暗い。



 見送りのために一旦立ち上がったが、断られてしまった。


 その場での見送りとなって……


 扉が閉ざされるのと同時に、沈むように椅子に座り直す。



 そっと、堪えきれない溜め息と共に、漏らしてしまった言葉にハッとして口を閉ざした。



 自分のことを煙たがっている者が一定数居ることをインスも自覚している。



 けれど、全員から好かれるなんて到底無理だし、多少の嫌がらせやら陰口やらは別に何の支障もない。



 それで彼らの不満が多少なりとも解消されるのならば、どんどん言えばいいとすら思っている。



 今のところ任務や生活に支障が出るようなものはないし、結果的に彼らの気が晴れて、任務が滞りなく進むのならばそれでいい。



 どちらにしろ、一人でできることなど知れているというのは変わらない。



 いざと言う時、わざと足を引っ張るような真似をして、任務に支障が出たり、無用な犠牲を生むようならば問題だが、流石にそこまで馬鹿な真似をする者はいない。



 むしろ、彼ら自身に自覚があるかはわからないが、いつも協力はしてもらっている。



 そう、先ほどの三人だって、気づいてはいなかったようだが、いつもちゃんとインスを助けてくれていた。



 どれだけ強い魔力を持っていようとも。


 どんなに強力な魔法が使えようとも。


 本当に守りたいものを、守れなければ意味はない。



 知っていることと、やれることは全然違う。


 多少魔法が使えようとも、他の人と比べれば少しばかり魔力が多くても……


 本当の脅威の前では人間など等しく塵芥に過ぎない。



 そう――。



 魔族に、アーグに連れ込まれた廃離宮の西の塔で。


 蠱毒の呪いで操られた子供たちを生きて助けられなかったことも。


 だからせめて、と。

 使った魔法で。


 それでも三人も取りこぼしてしまって……


 結果、アインに手を汚させてしまったことも。


 むしろ、自分の存在が。


 子供たちに深い傷を与え。


 苦しませる原因になってしまったことも。



 全部、全部。


 自分が無力すぎるから。



 手も足も出せないで、ただただ良いようになぶられて……


 アインや他の子供たちも苦しめて。


 逆に利用されて、ジャンヌたちも危険に晒して……



 一人でできる事なんて、何もなかった。



 主神殿の医務殿で、生死の境を彷徨うアインを見た時もそう。



 どうして自分は神官呪師ではないのかと、半ば本気で考えた。



 せめて神官呪師のような精霊魔法の使い方をもう少しできれば、多少は慰めになったかもしれないが……



 けれど、神殿の精霊補助師の使う精霊魔法は、皇宮呪師の使う精霊魔法とはあまりにも違い過ぎて……


 しかも失敗が一切許されないのが分かっているから……すぐには無理だと自覚した。



 いうならば、あれは本当に熟達した者の技。



 最初から『そうあるべし』として学ばなければ習得するのは難しい、繊細過ぎる使い方。



 ただの魔力のコントロールとは全く違う。



 調査任務だって、先に調査に赴いた者たちからの報告と、自分が知っていた情報とを元に、できうる限りの対策はしておいたけれど……



 それでも、想定外の事態に追い込まれてしまった。



 護衛官は確かにいざと言う時には呪師を殺してでも事態の終息を図る。



 しかし、だからと言って、無用に傷つけるような真似はしない。



 けれどもあの時……ステールが抵抗していたのもあっただろうが……


 インスを殺すだけなら簡単にできたはずなのに、抵抗する隙があった。



 わざと急所を外して、痛みを長引かせるような、そんな……



(……明らかな、悪意を感じる……)



 インスも、ステールも、二人ともを、ひたすらなぶろうとしているかのようだった。



 そう思ってしまうのは考え過ぎなのか……それとも……



「……魔族、か……」



 目を閉じて、ぐったりと椅子に背を持たれかけて、そっと、吐息のような囁きを漏らす。



 ひそやかに、誰にも気づかれないように。



 これまでも、あの時も、その後も。



 思い起こせば思い起こすほど、いかに無力であるかを突き付けられる。



 それなのに、望まれている事が多すぎて、重すぎて……



 そっと、けれど深く、息を吐く。



(……そろそろ、決めておかないと、いけない……かもしれない……)



 ゆっくりと開いた瞳の奥に、微かな陰りが浮かぶ。



「……っ!?」



 直後、扉がノックされて、ハッとしたインスは意識をそちらに向ける。



「……少し、いいか……?」



 返事をしたインスに、扉の向こうから聞こえてきたのは、先の調査任務で調査隊のリーダーを務めていた皇宮呪師の声。



「……今日はずいぶん、お客様が多いですね……」



 口の中だけでひそかに囁いて、インスは彼を迎え入れるために立ち上がった。



第3章第2話をお読みいただきありがとうございます。


謝罪に訪れた先輩たちの明るさと、一人残されたインスの暗い沈黙。


この対比が、彼の抱える孤独をより一層際立たせる回となりました。


周囲からは羨望の眼差しを向けられながらも、独りになった途端に溢れ出すインスの深い無力感。


守れなかった子供たち、そしてアインへの消えない罪悪感……。


旧都でステールを操った、あの不気味な「悪意」。


インスが感じ取った、ただ殺すだけではない「なぶるような意志」の正体とは……?


そして、彼が見据える「決意」とは一体何なのか?


次回もお楽しみに!


【第1部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第1部・レッド・フレイムの呪い】

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【第2部はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~【第2部・レッド・フレイムの残照】

(https://ncode.syosetu.com/n5488lq/)


【番外編・第1弾はこちら】


皇宮呪師は護りたい!聖皇国列伝秘聞①~悪夢の海で瞑る翳・代償と贖罪の狭間で望まれる~

(https://ncode.syosetu.com/n5697ln/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日12時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第2弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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