第十三話:『非売品』への祝祭と刻印
寝室の扉が閉まると同時に、ルネは壁に押し付けられていた。 カチリ、と鍵の回る音が、夜の始まりを告げる。
「……セディ、まだ……っ」
言いかけた唇は、嵐のような熱い接吻によって塞がれた。 昨夜の「上書き」の時とは違う、深く、執拗で、どこか狂気すら孕んだディープキス。セドリックの舌がルネの口腔内を蹂躙し、彼女の肺から酸素を奪い尽くしていく。
もつれ合うようにして寝台へ倒れ込む間も、セドリックの手は止まらない。 昨夜、ルネがたどたどしく解いた彼のシャツを、今夜は彼自身が引き裂かんばかりの勢いで脱ぎ捨てる。ルネのドレスもまた、彼の黒百合の刺青が刻まれた指先によって、瞬く間に無力な布切れへと変えられていった。
「……『非売品』、でしたね」
月光の下、露わになったルネの肢体を、セドリックは飢えた獣のような瞳で眺め回した。
「……あ、……ぁ、……っ」
「あんな大勢の前で、私を自分のものだと言い切ってくださるなんて。……お陰で、私の理性がどれほど悲鳴を上げたか、分かりますか?」
セドリックはルネの震える膝を割り、その内側に顔を埋めた。 逃げようとする彼女の腰を、逃がさないという強い意志を込めて掴む。
「……ひっ、……あ、っ、セディ、……そこ、は……っ!」
「ダメですよ、お嬢様。……貴女が私を独占すると決めたのです。なら、私は貴女のすべてを……隅々まで、私のものだと再確認しなくてはならない」
言葉責めと、執拗なまでの愛撫。 セドリックは、ルネが快楽に涙を浮かべ、自分の名前を呼び、理性が崩壊するのを待っていた。 不慣れなはずのルネの身体が、早くも彼の熱を覚えて反応する。その様子が、セドリックの独占欲をさらに燃え上がらせた。
「……お願い、……もう、……っ、セディ……!」
「……ええ。お望み通りに」
セドリックは、ルネの体を裏返し、四つん這いの姿勢にさせた。 視界を奪われ、背後に彼を感じるだけの姿勢に、ルネは恐怖と期待で背中を震わせる。
背中越しに伝わる、彼の荒い吐息と、硬く熱い脈動。 セドリックはルネの腰を強く引き寄せると、昨日以上に情け容赦のない熱量で、彼女を深くまで貫いた。
「あ……っ、ん、……ぁ、っ!!」
背後から受ける衝撃に、ルネはシーツを掴んで弓なりに背を逸らす。 視線が合わないからこそ、繋がっている場所の熱さと、彼が自分を完全に支配しているという事実が、脳を真っ白に塗りつぶしていった。
「……聞こえますか、ルネ。貴女の体から、私を求める声が溢れている。……貴女はもう、私以外の男では、壊れてしまう体になったんですよ」
耳元で囁かれる掠れた声。 セドリックは彼女のうなじに噛み付くように口づけ、自分の獲物であることを、その身に刻み込み続けた。
「昨夜、あれほど愛し合ったのに、まだ足りませんか? ……お嬢様があんな『非売品宣言』を仰るから、私も昨日までの加減を忘れてしまいます」
歓喜に狂った男の独占欲は、夜が明けるまで止まることはなかった。 ルネはただ、背中から降り注ぐ逃げ場のない愛の中で、何度も、何度も、意識が遠のくほどの悦楽に溺れ続けていくのだった。




