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魔法使いロデルの晩年~老境に入ってから未知なる冒険が待っていた~

作者: ちゃむにい

年老い、衰えるというのは案外寂しいものだ。


魔法使いのロデルは冒険者として活躍したが、体力と気力の減少により社会との繋がりはなくなっていった。


妻を数年前に亡くしてから、その孤独はさらに増した。


「何時死んでも良い」


そう思ってからが長かった。ロデルは野を駆けるウサギの魔物を仕留めるくらいにはピンピンしていた。


「この調子では、まだまだ長生きしそうだのぅ」


ため息をつきながら、ロデルは手慣れた腕前で獲物を解体していった。


体力は落ちているが、魔法の腕前は、冒険者だった頃と何一つ変わらず、むしろ技量は年を重ねるごとに深みを増しており、健在だった。


食も以前に比べると細くなったが、一人で食べるには十分過ぎる肉を手に入れることができた。


村の住人に解体した獲物をお裾分けをすると喜ばれるので、それが、ささやかな喜びだった。


「お、魔石じゃ。けっこう貯まったから、そろそろ売りに行こうかのぅ……」


小さな魔石は安いが、集めればバカにならない。袋一杯集めれば、いい値段になる。

先日、孫夫婦の間に子供が生まれている。その出産祝いぐらいには、なるかもしれない。


「死を待つのも退屈なもんじゃな」


ロデルは暇をもて余していた。


寿命は誰にも分からない。すぐ死ぬかもしれないし、思っていたより長く生きるかもしれない。


長生きするのも良いことばかりではない。妻の後を追うように、体の弱かった息子は先に旅立ってしまった。


このまま、土に還っていくのを待つよりも、誰かのために、人助けでもしたほうが良いのだろうかという気持ちが芽生え始めていた。


(わしに出来るのは、魔物を狩ることぐらいだ)


魔物に困っている人を助けようにも、生活を変える気にはなれなかった。猫や鶏も飼っているし、住み慣れた家から離れるのは抵抗感があった。


その家は、妻と過ごした思い出のある場所だった。

この家にいると、まだ妻が傍にいるような気がして、ロデルの心を癒してくれた。


そんな家を空き家にしてまで、人助けをしに行く気にはなれなかった。


「こんなところに、草が生えてるわい!」


その日、ロデルは家の掃除をしていた。家には亡き妻の要望で地下室があって、食料品を貯蔵していた。


しかし、出入りが多いからか、外から雑草の種が入ってきたらしく、取っても取っても雑草が生えてきた。


魔法を使って燃やすわけにもいかないので、地道に手作業で取るしかない。


ぷりぷりと怒りながら地下室の扉を開いたロデルは驚いた。


「これは……、どういうことじゃ?」


ロデルは、ぽかんと口を開けた。


そこは、以前とは別世界になっていた。まるで鍾乳洞のようだった。もっと狭かったはずだが、開けた場所になっており、ごつごつとした岩肌からは紫の水晶が生えていた。


「貴方が、この家の主人ですか!?」


どこからか、パタパタと妖精みたいなものが飛んできた。

妖精から説明を受けたが、どうやら偶然、地下室と妖精の住み処が繋がったらしい。


「お願いします! どうか、僕たちの女王様が羽化するまで、守ってもらえませんか!?」


そしてロデルは守護者に選ばれたらしい。


「なんで、わしが?」

「このあたりには貴方以上に魔力が高い生き物がいないからです。ここはダンジョンですから、ウサギを守護者にしても、僕たちの加護で大きくなるから、喜んで人間が倒しに来て、逆に危なくて……」


妖精はため息をつきながら言った。どうやら、ウサギを守護者にしてひどい目にあったらしく、命からがら逃げてきたらしい。


外敵がおらず、この辺りのウサギは丸々と太っており、冒険者にも人気のある獲物だった。


(ウサギの肉は美味だからのう)


ロデルもウサギの肉が好物だ。


だからこそ、あまり生息数が減らないように、乱獲はしなかった。


たしかに大きなウサギがいたら、真っ先にロデルが狩りに行くかもしれない。


「この下は、ダンジョンになっておるのか?」

「はい。我々が管理し、住んでいるのは上層部だけです」


その言葉にロデルは懸念を覚えた。ダンジョンから魔物が溢れ出すことをスタンピードという。

もし溢れ出そうものなら、ロデルの家は跡形もなく壊れてしまうだろう。


「出来れば、ダンジョンにいる魔物を倒して管理して欲しいのですが、そこまでは求めません。守護者になってもらって、魔力を分けてもらうだけで十分です」


妖精の言葉を聞いて、ロデルの胸からは熱いものが込み上げてきていた。


(なんじゃ、この胸のざわめきは……? まさかワクワクしているというのか……?)


齢を重ねた今になって、未知なる冒険が待っているとは、誰が思ったであろうか。


年甲斐もなく、まるで若かりし頃のように胸が高鳴った。


(こんな気持ち、久しぶりじゃ)


その変化が、嬉しくて仕方がなかった。


「そういえば、地下室に置いてた食材はどうなったんじゃ?」

「それは分かりません、ごめんなさい」


食材だけではない。医薬品などの備品も置いていた。見た感じ、消え失せているようだ。


(まぁ、まだ冬にはならないから、集め直すしかないか。茶でも飲みながら考えるかの。茶菓子ぐらいは棚に残っているはず)


ロデルは妖精を客間に通して、久しぶりの客を出迎えた。





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