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第六章1 ベレン満喫!コスモスの休暇

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反応が無さ過ぎてメンタルがガリガリ削れております。

ぜひよろしくお願いします。




―――とある時、大陸西南ガルデン帝国帝都から適度に距離のある場所にて。



水量豊富な大河と平原に囲まれた肥沃なガルデン帝国帝都周辺から南東へ離れた場所は、大小の岩山が連なるように並ぶ土地だ。

水源は地下水脈から湧き出ている数か所の小さな泉だけ。

木もまばらで、そこで生きられる野生生物は限られ、しかし魔獣だけ環境をものともせずに我が物顔で闊歩する、そういう場所である。


人間が暮らすには少々というより大分無理がある場所には、数か所空洞が存在する。


上空から見つけにくく、高低差と入口周辺の形状から近づかないと発見できない穴。

そに内部は、実は広く、内部に水源すらある中規模空洞。


鉄製防壁の巨大門一枚で覆われたその入口から内部に入ると、円形に広がる空洞中央は広く空けて、その周辺に木製建材でいくつかの居住空間を作り出している。

その建物群の中のひと際大きな作りの家屋のテラスに―――


「ヴァイスさま、ブラックローズの女侍が賢者らしい女を見たとじょーほうを得ましたワ!」


椅子にしな垂れるように座っている女へと、彼女より大分身長が低く、ややむっちりした肉感ボディを身体のラインが見えるぴっちりした装備スキンを身にまとって惜しげもなく見せる女―――トートが報告する。

普段口が悪いトートがヴァイスを前にした時だけ、可愛く上品であろうと頑張るものの、上品さをよく知らないために少々残念な話し方で。


「トトちゃあん。それってぇ、トトちゃんがヘルペナ村ではくはく君と会ったぁ、前ぇ?後ぉ?」


トートに報告を受けた女。

前頭から生える髪は白なのに、その他の部分は黒髪であり長い髪を後ろで束ねている。

赤いまつ毛に、赤い瞳の目力の強い双眸に、紺色の口紅をひき半弧を描いた口元には咥えたばこ。

妖艶なボンテージスキンを身にまとう日も、軍服スキンを身にまとう日も、ビキニの様な装備スキンを身にまとう日もあるが、総じて言えるのはどの格好も似合い、どの格好もエロ美しいと言う事。


現に、

「今日もヴァイスさまは素敵ですワ!あ、前ですワ!あ、で、でも新しいじょーほうが!はくはく達は、翼竜に乗ってたらしいですワ!こっちがじゅーような情報だと思ってトトはほーこくに来ましたワ!」

エロ美しい女―――ヴァイスと呼ばれる女を見るトートの頬が上気している。


「あはぁ!そう、だからあちこち移動が早かったんだぁ?トトちゃんは良い子だねぇ。いっつもヴァイスちゃんの役に立ってくれるもんねぇ?よおし、ナデリコしてあげるぅ」


ヴァイスはそう言うと、

「きゃ、トト嬉しいですワ!」

そう言って上気した顔を嬉しそうにヴァイスの前に差し出すトトの頭を頬を、

「良い子ぉ、良い子ぉ。トトちゃんは可愛い子ぉ」

そう言いながらナデナデし、

「えへへぇ、えへへぇ………」

トートが身をくねらせて喜ぶ様を楽しんだ。


「「「―――ゴクリ………」」」


それを周囲で多くの者達が見ている。

生唾を飲み込んだのは、皆男。

同じ赤い毒ガスマスクを被った姿の男達でその数は40名を超える。


この場にいない男も十数名いて、今もクランのためにカジノや鉄鉱石採掘現場でせっせと資材を集めているが、それは横に置き。


彼らが生唾を飲み込んだのは、眼前で繰り広げられる、エロ美しい女と、エロ可愛い小ぶりな女がいちゃこらしているから。

出来るならば、自分もああして欲しいと願望を抱くから。

ただ、絶対に口にはできない。態度にも表してはならない。


「ヴァイスさまは、男にきょーみねえぞ!ヴァイスさまをエロい目で見んな!」

普段の口の悪いトートに釘をさされているからであり、

「「「は!ヴァイス様のお目汚しにはなりません!」」」

そう誓って、赤い毒ガスマスクを喜々として被ったのは男達の方である。


彼らにヴァイスやトート、今は拠点を離れているもう一人の可愛い幹部と触れあうチャンスが無かったとしても、彼らはどうしようもなくヴァイス達三人に惹きつけられているから。


「「「見てるだけで、同じ空気を吸ってるだけで―――幸せだぁ」」」


そういう事である。


『拠点』と呼ばれるもの、それがこの空洞の正体。

建材で安全を確保し、同じく居住空間と認められる建物を作り、ベッドを配置する事でその場所は『拠点』と認められ、死んだ際に選べる復活ポイントとして指定できるようになる。


メリットはそれだけではなく、同じく復活ポイントとして誰もが選ぶ事が出来る王都や町や村では、自分達クランの資産を安全に保管できないが、拠点なら可能だ。


つまり拠点があれば、殺されて復活する際に例え装備や金や資材を失っても、拠点の資産があるから装備も金も何も無しという状況を避けられるのだ。


金も資材も装備も必要最低限さえ持って出れば良く、拠点に置いておけば安心、という訳である。


その洞窟拠点の中央に、今やクランの現在の集大成と言うべきものが鎮座しており、クランメンバーの努力の結晶ともいうべきそれを、男達が誇らしげに見上げている。

その男達の耳へと、

「さあ、行こうねぇ。ヴァイスちゃん楽しみだよぅ、ワクワクだよぅ―――」

彼らのエロ美しいカリスマの声が届いて、

「は!ヴァイスさま、どこまでもトトがごいっしょしますワ!」

トートがヴァイスの手にほおずりしながら宣言し、

「「「は!ヴァイス様!」」」

男達は一斉に傅いた。


ヴァイス率いるクランの名は『スノウドロップ13』。

スノウドロップはヒガンバナ科に属する、白く可愛い花を咲かせる花。

その花言葉の一つは『希望』。

そして、もう一つは、イギリスの伝承に由来するといるという―――『あなたの死を望みます』である。



◆◆◆◆



―――商いの町ベレン西部、鉄製防壁にて。



はくはくによって渡された鉄製防壁が弧を描くように設置されているのは、ベレンの町西側である。


防壁が描く弧は、いずれベレンの町を円形に囲うように計算されているからだ。

はくはくが優先したのは転職の方だったので、防壁建材はこの西側用の量だけだったのは、この二キロ程度の防壁で冒険者の接近を回り込ませる事で遅延させ、その間に迎撃の準備をすすめる時間かせぎのためだ。


「凄いよなあ。大神官様はさあ。まさか、俺が魔法を撃てるようになるなんて思ってもみなかった」


「そりゃ、みんなそうよ。ベレン商会の商会員が、転職を教えに来てくれた時、私揶揄われてるって思ったもの」


「そうだよなあ、只人に職業をくれるなんて、そりゃ耳を疑うわなぁ」


「「「それが、本当なんだもんなあ」」」


「それに聞いたか?一昨日に、ひと月かかったベレン在住の700名以上の転職終わったんだってよ」


「聞いたわよ。大神官様ったら、すぐさま残りの防壁建材引き渡しを開始してくれたんだって、あの方ずっと働き詰めよ!私、あの人に一生頭が上がらないわ!」


「流石大神官様、で片付けちゃいけない部分だよなあ。奇跡の力とは別に、大神官様の人柄と努力の表れだし、俺に真似できるかって聞かれたら、絶対無理だって即答する」


「「「ありがたいなぁ………」」」


その防壁建材の方も、西側防壁の迎撃窓に詰める本日の担当の雑談の通り、町民と他町から派遣されてきた商会員を加えた総勢700名余の転職を、はくはくという大神官が一昨日くらいに終了し、すぐさま残る建材の引き渡しへと移行している。


「じゃあ、じきにこの西側防壁の伸延工事が始まるなあ。安全な町ベレンかあ」


「夢みたいよねえ」


「ああ、でも現実になっていく。いや、大神官様がしていってくれてるんだ」


「おい、泣くなよ」


「だって、私………」


「嬉しくて泣いてんなら、いいじゃねえか。なあ………」


まだ時間はかかるだろうが、いずれベレンは金属製の高い防壁に完全に守られる町になる。

空中を除き魔獣の侵入は絶対防げるだろう。そんな想像をして、町民が感涙を流すのも無理はない。

彼らが見知った者が魔獣によって亡くなった数は少なくなかったのだから。


雑談を交わしながらも高所にある迎撃窓から周辺を窺う担当者は、彼らだけでなく二キロの西側防壁の全ての迎撃窓に担当が張り付いている。


その人影を見つけたのは、雑談を交わしていた三人であったのはたまたまだったに違いない。

西側防壁二キロの最北側で途切れる防壁へ、彼らの担当する防壁へと歩いて来る姿を凝視して、

「どうやら白い名前の冒険者だな、安心な方だ」

その女の頭上に白い名前を確認した。

「私も確認した。白い名前ね」

「よし、町長の手順書にあった通り、二名以上の確認、俺は町長へ伝令に行くから、あとは頼むぞ!」

そう言って、三人のうちの一人が東へと走っていくのを背中で見送って、残る二人は白い名前の冒険者に声をかけるべく、彼女の到着を待った。


「こんにちは。冒険者さん、商いの町ベレンへようこそ!」


「防壁上からごめんなさい。歓迎します、冒険者さん!」


「あ、ああ、ご、ご丁寧にありがとうございます。わ、私、ぼ、冒険者でスピーアと言います。に、に、西から旅をしてきまして………。ところであの、わ、私どこから町へ入れば?」


それを聞いて、防壁状の二人は顔を見合わせて、

「「手順書の手順忘れてた!」」

町長カイネによって決められた訪問者を迎える場合の迎撃担当は、自分の担当の防壁下部の扉を開いて迎え入れるべしという手順を失念していたわけである。

彼らの立つ防壁は北端だから、回り込んでも町へは入れるのだが、防壁が完成した場合はそんな事は不可能であるから、今の内から手順書通りにするが良いのである。


「ああ、ごめんなさいね!今すぐ開けますから!」


「冒険者さん、こっちです。ここから中へどうぞ!」


町民の迎撃担当女性は、防壁下部の小扉を開いて冒険者を招き入れながら、

「頭に気を付けてくださいね。西からベレンへ来たのなら、長旅だったでしょう?お風呂で汗を流してぐっすり休んで下さいね」

そう声をかけたのは、ベレンの西で最も近い村は歩きで二週間はかかるからだったが、

「え、ええ。そ、そ、そうですね、つ、疲れました………」

眼鏡姿で凛々しい姿の冒険者が彼女の横を過ぎて防壁中に入る時、

「―――?」

違和感を感じたのだが、気のせいかもしれないと何も言わなかった。



その後起こった事件を聞いた彼女は、思い返して違和感の正体に気づく。

西から旅をしてきたという彼女の顔も手も―――あまりに汚れていなさすぎた、と。



◆◆◆◆



―――商いの町ベレンのホテルにて。



はくはくがベレン在住の民を全て転職し終えた事で、次は残りの大量に必要な鉄製防壁と、鉄製防壁足場セット・二段を延々と引き渡す作業に移った。


この作業も時間を惜しむはくはくは、きっと食事もろくにとらないだろうと、お世話を焼く気まんまんだったコスモスだったのだが、

「駄目です!コスモスちゃんにはせめて三日間は休養してもらいます!」

はくはくはそう言って、万が一にも冒険者に見られる事が無いよう、ベレン商会の倉庫を締め切って中で引き渡し作業を進めると言ってシリルとキュルを伴い、コスモスを置いていってしまった。


「コスモスちゃん、ちょっとは休んで?そうそう、広い露店風呂がある宿があるらしいよ」


そう言い、コスモスが持った事のないような大金をコスモスに渡して。


「ちょっとは休んでってこっちの台詞ですぅ。はくはく様のいじわるぅ………」


そう呟いたコスモスだったが、それがはくはくの優しい気遣いであると分かるから、

「とりあえず買い物をしてから、その広いお風呂のある宿に行ってみようかな」

気持ちを切り替えて素直に休む事にした。


「そういえば、町に着くなり教会の神官様がいなくて転職を始めたから、ろくに町を見てなかった」


ベレンの町に入ってから、実にひと月もの間。

教会とホテルの往復しかしていないのである。


商いの町ベレンの商会で入った事があるのは、ベレン商会くらいだ。

もちろん、それすらも買物目当てではなかったが。


だから、ベレン中央を割る主要町路の両脇に立ち並ぶ大小様々な商会、商店、レストラン、食堂、を冷やかして回る。

なるほど、『なんでも揃う町ベレン』と言われるだけあって、王都でも見ない商品もちらほら見かける。


特に多いのが討伐した魔獣が消える際に落とす、魔獣のドロップ品―――所謂魔獣素材の類であるが、これは素材であって製品ではないから、商人や職人でないコスモスには興味は無かったが、そのお値段には少々驚くことになった。


「魔獣素材って高い!」


そういう事である。

まさか自分の故郷と呼んでいいナーブ村が卸した魔獣素材品が、ベレン商会から他商会へと購入されていった物を目にしているとは夢にも思ってはいなかったが。


小さくて可愛らしい外装の店で売っていた、色とりどりの飴玉が詰まった瓶やら、一口サイズのチョコレートが詰まった瓶、柔らかいグミが詰まった瓶などを、『ご自由に味見ください』と示された皿から取って味見をして、

「あ、優しい甘さが良い!………こっちも良いけど、色が違うと味も違うの?すごい!」

そう騒ぎながら結局インベントリにいくらでも入るのだからと、数十瓶買ってしまった。


それもこれも、はくはくが過ぎる大金をコスモスに渡した上で、

「使いきるつもりでね。ベレンの町にお金を落とすのも大事だから、町を助けると思って!」

そんな事を言い出すのがいけないのである。

本来コスモスは浪費家ではなく、どちらかというと倹約家なのだから。


昼時になって、思い切って最初に目に入った店に入ってみるぞと、食堂に飛び込んでみた。

調理場のすぐ近くに客が座るカウンター席で、初めて見るメニュー『らーめん』なるものを頼んでみる。運ばれてきた丼の中には麺がスープに浸っているが、

「………ああやって食べるんだ………」

食べ方が分からなくてどうしたものかと思ったものの、離れた席で男女がズズズと音を立てて麺をすすって食べているのを見て、真似てみた。

「美味しい!あ、ズズズって一気にすすると麺にスープが絡んで口に入ってくる!」

とても美味しい初体験であった。


昼食後町を歩いて腹ごなしをし、そのうちベレンにもある露店で、クレープなるフルーツと生クリームがたっぷり入った甘味を食べて甘さとほのかな酸味にご満悦になり、口直しに炭酸ジュースを飲んでさっぱりしたり。


途中で白い名前が頭上に浮かんだ女性冒険者を見かけたが、彼女も買物中だったから、気には留めなかった。もともと、町長カイネから昨日、白い名前の冒険者が一名町に入ったとはくはくへ報告が来ていたのだから。


加えて、はくはくはその対応について、

「俺が防壁建材を取り出すのを見られなければ、大丈夫」

そう言っていたのだから、過度の警戒は必要ないのだ。


横目で店舗の看板やショウウィンドウを眺めていたコスモスに、

「ああ、見つけた!コスモス様、ベレン商会の商会員です。はくはく様から露天風呂付宿の場所をお教えするようにと頼まれまして。コスモス様、残念ですがこっちの方角じゃなくてですね、宿は町中央通りの北側主要町路にあるんですよ」

走ってきた商会員がコスモスに教えてくれたから、

「ああ、私東側と西側ばかり探してました、教えて頂きありがとうございます!」

そう礼を行って方向転換し、まずは中央へ戻る事にした。


なんだかんだと休暇を満喫中のコスモス目指すは露天風呂付の宿である。



ただし、コスモスは気づいていない。

コスモスへと宿の場所を伝える商会員の声を―――聞いていたものがいた事に。




星評価やブックマークしてもらえると、書き続けるモチベーションが迷子にならなくなります。

切実なので、よろしくお願いします。

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