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第五章8 幕間コスモス大人の階段

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―――商いの町ベレン一番の高級ホテルの一室にて。



はくはくがベレンの町民の転職を開始してから一週間目。

コスモスは、はくはくの朝食と昼食用の軽食をホテル一階のレストランで特別に作ってもらっている。


本来夕刻のレストランでは夕食のみのメニューに切り替わり、朝食や昼食メニューは扱わない。

それを、町の恩人であるからと嫌な顔ひとつみせずに、快諾してくれていた。


手早く食べられる食事、かつ大きすぎず、口に放り込める食事を料理人は工夫して、毎回違う内容で作ってくれるからありがたい話である。


一口サイズのサンドイッチに、ミートボールとライスボール、野菜スティックに、スプーンの上で料理を固めたワンスプーン料理、シュウマイや小籠包といった点心もサイズを小さくしたものなどなどである。

中には一口サイズあんぱんや、メロンパン、中華まんなどもあって実にバラエティーにとんでいる。

毎食、はくはくに美味しく食事を食べて欲しいという料理人の心遣いであって、感謝しかない。


「飲み物の方も明日の一日分ご用意してあります。こちらをどうぞ」


レストランの給仕の女性が、料理とは別に飲み物が乗ったトレイを持ってきてくれた。

そのどれも、蓋つきの紙コップでストローまで用意されている。


「町ごとお世話になりっぱなしの私達なのに、こんな事くらいしかできず………」


「いえ!いつもありがとうございます!はくはく様も喜びます!」


そうお礼を返すコスモスの中にあるのは、誇らしさだ。


「私の大神官様の偉大さが、皆に伝わっていく!なんて素晴らしい!」


コスモスはインベントリに軽食と飲み物を収納し、レストラン内で食事中のキュルとシリルを残して、はくはくの部屋へと急ぐ。

ホテル内どころかベレンの町に、現在冒険者の姿がないとしても、はくはくの守護者であるコスモスは、はくはくをできるだけ一人にしたくないのだから。


「はくはく様は………寝てる」


部屋に入ったコスモスの視界に、三つ並んだうちの真ん中のベッドの上で突っ伏すようにうつ伏せで眠るはくはくの姿があったから、何もあるはずのない部屋の中でコスモスはそれでも安心し、インベントリから買い置きの料理を取り出して、食事をとった。


しばらくして、

「ただいま戻ったよ。今日も美味しい食事だったね、キュル?」

「あーいー!」

キュルとシリルが部屋へ合流し、食事を終えたキュルは、はくはくのベッドで遊んでそのうち眠ってしまった。これもここ最近の見慣れた日常風景である。



幼子が眠りについたここから、コスモスとシリルの少し大人の時間が始まる。

つまり、お酒の時間である。

コスモスはすっかりお酒を気に入り、毎夜シリルとりとめの無い会話を交わしている。

昔話もあれば、はくはく絡みの活躍の話も、子供の頃何になりたかったかとか、そういう他愛もない話も、コスモスには楽しかったから。


「でも、私達ばかりこうして楽しんでていいんでしょうか?」


「はくはく君が起きていたなら一緒に飲もうと誘っているよ。それにこうして英気を養う事は大切さ」


「でも………」


ほろ酔い気分のコスモスはシリルと座っているテーブルから離れ、はくはくのベッドに腰掛ける。


小さく寝息をたてるはくはくの髪が乱れ汚れているから、コスモスは何もできない自分がもどかしく、そっと手の平で、はくはくの髪を整えるように撫でた。


「はくはく様がこんなに疲れてるのに、何もしてあげられないから………」


「………」


「せめて髪だけでも洗ってあげられたら良いのに………」


「ああ、そうか。それならあるよ。シリルはどうして今まで思い出さなかったのだろう。悔しいな………」


「あるんですか!それは何をするんですか、シリル様!」


「シリルに侍女たちがしてくれた、マッサージをするのさ―――」


「ああ、そんな方法が!私にもできますか?教えてください!」


はくはくを癒せるかもしれないマッサージとやらに喜び食いつくコスモスだったのだが、

「お風呂の中でね!」

シリルがそう言ってキラっと笑ったから、

「なんて?」

間の抜けた返事を返す事になった。


「ほら、はくはく君。私の可愛いお嬢さん。ここで服を脱いでいこうね」


「え、あ、シリル様。ほ、ほ、本気ではくはく様をお風呂に入れるつもりですか?」


「もちろんさ」


「ふ、服を脱がせると言う事は、つ、つ、つまり、はくはく様の身体を全部見るってことですよぉ?」


「将来のシリルの花嫁の身体だからね。シリルは隅々まで見るつもりだよ?」


「い、い、いいんでしょうか。そんな事をして、本当に………」


「悪い事などなにもないさ。シリルにはやましい気持ちなんてないし、はくはく君の身体が見られるのはただの役得さ」


「わ、私だってもちろんやましい気持ちはありませんよぉ。で、で、でも………」


「ああ、そうだ。シリルも服を脱がないとお湯に濡れてしまうね」


「え?いえ、あ、ちょっとシリル様なんでここで脱ぐんですかぁ?」


はくはくの服を脱がせる前に、自分の準備を済ませようとしたのだろうが、コスモスの目の前でシリルが当然のように装備を脱ぎだしたから、コスモスは慌てる。


「城ではいつもこうだったよ?シリルの裸に侍女たちが喜んだものさ。それに、今はコスモスしか起きていないんだから、良いだろう?」


「それはそうですけど………い、いや、シリル様?ま、ま、まさかシリル様も裸ではくはく様のそのマッサージをするつもりですか?」


「そうだよ。侍女達は湯あみ用の薄着を着ていたのだけれど、シリルは持っていないからね」


コスモスが目の前で腕装備を外し、脚装備を外していく、いよいよシリルの白磁の肌の割合が多く、コスモスの目にも眩しい。


「は、は、裸のはくはく様を、裸のシリル様が、ま、マッサージ………だ、駄目!駄目ぇ!」


コスモスはいよいよ下着すら外して胸をはだけようとするシリルに、インベントリから取り出したそれをシリルへと差し出しながら、

「せ、せめて水着を着てください!お願いですからぁ!」

そう懇願したコスモスの眼前に一糸まとわぬシリルの肢体があって、その胸元が見慣れなかったから、

「お、大きい?」

自分の胸と交互に見比べて、

「ど、ど、どうして?シリル様の胸はもっと慎ましやかだったんじゃあ?」

驚きに思わずそう呟いて、

「ああ、いつもは下着で絞っているよ。胸が大きすぎない方が侍女達の好みだったからね」

そう答えたシリルがまたキラっと笑むから、

「もったいないっ!」

そう大声を上げてしまったのは、大きな胸への憧れがコスモスの中にもあったから、

「そうなのかい?はくはく君はどっちが好みだと思う?」

シリルの問いの答えをコスモスは持たないが、

「し、知りません!」

コスモスなりの予想すら答えたくなかったのは、コスモスの中に起こった変化だったのかもしれない。

つい最近まで、はくはくはコスモスにとって尊敬の対象で、それ以上でも以下でもなくて、はくはくの女の好みなどコスモスにはどうでもいい事だったのだから。


顔を赤らめたコスモスだったが、状況は決して終わっておらず続いている。

シリルが水着を不思議そうに眺めてから、長い脚からその身を水着へと通していく。

シリルが水着を纏った後に始まる事、それははくはくを裸にする事である。


「ぐむむむむ………」


自分は指をくわえて、シリルがはくはくを癒すのを見送るだけでいいのか、とコスモスが悩み唸る。

しかし、コスモスが風呂場に同行してマッサージを行う場合、コスモスもはくはくの裸を目の当たりにするのである。


「わ、私、男の人の裸なんて見た事ないのにぃ………」


そういう事である。

コスモスは幼少期に両親を失ったから母親から性教育を受けていない。


ナーブ村で住み込みで働いていた宿屋兼食堂のおかみが親代わりのようなものだったが、おかみはコスモスの亡き本当の両親を気遣ってか、必要以上にはコスモスに構わなかったから育ての親とはまた違った。

ともかく、そのおかみから、なんとなく程度には性教育を受けただけであり、当時のコスモスは力を得ようと木剣を振り、毎日神に祈る生活をしていたのだ。色恋などしている暇はないと。

だから、コスモスには男の裸を見る勇気がもてるはずもなかったのだが、

「コスモスは、はくはく君に何もしてあげなくて良いのかい?」

そう問われても、

「ううう、私、私ぃ………でも裸がぁ………」

ふんぎりがつかず、

「では、シリルが先にはくはく君を癒すとしよう。それでいいんだね―――先輩?」

シリルが意味ありげにコスモスを見るから、

「は、はくはく様の一番の守護者コスモス!わ、私も一緒にはくはく様を癒しますっ!」

とうとう決心したコスモスの顔が、はくはくの裸体を見る前から既に赤いのは仕方のない事である。



同じく水着姿になってコスモスは、シリルが目の前ではくはくの僧服を脱がせるのを、手を覆った両手の指の間から、恐ろしいものを見るような心境で見ている。


僧服は貫頭衣であるから、上半身を片手で支えて上げ、裾を引っ張り上げて頭から抜いて脱がし、中の白い肌着の前のボタンをはずしていく、次第に胸元の肌色が大きくなっていくのを前に、

「ごくり」

コスモスは喉を鳴らした。


露わになったはくはくの上半身は、筋骨隆々とはいかないが、ほどよく締まっている。

肌の色は男の中では白い方だが、コスモスやシリルのような女性の比べれば、肌色は濃い。

コスモスは、女の身体とは違う固さを伴う肉体に、自分の頬が熱くなるのを感じている。


そして、シリルがはくはくのズボンに手をかけたのを最後に―――完全に目を閉じた。

とても開いていられなかった。コスモス、完全敗北である。


「シリルの将来の花嫁の身体は、十分素敵だね」


衣擦れの音に続いて、わざわざ口にしたシリルの言葉に、どこが『十分素敵』なのかを想像して、

「―――っ!」

そういう内容に疎いコスモスも、思い当たってしまい、一人悶絶する。


「ああ、可愛いお嬢さんは重くないね。さあ、シリルと一緒にお風呂へ行こうか」


そう言ってお風呂の方へ音が消えてから、やっとコスモスは目を開けたのだが、

「―――はっ!これじゃあ、私何のために水着を着たか分からない!」

だから、コスモスは勇気をもってバスルームの扉を開いた。


「来たね、コスモス。では手本を見せるから、同じようにやってごらん」


「はい、シリル様!」



「こういう風に指先と手の平を使って揉み解すんだよ?」


「もみもみと、こういう感じですね!」


コスモスは無心で、はくはくを癒す事だけを考えるようにして、

「シリルははくはく君の頭を揉み解すから、コスモスははくはく君の足と手をお願いできるかな?」

はくはくへと奉仕することに集中する。


「は、はい。シリル様」


「特に足の裏を揉み解すと身体が随分楽になるらしいから、入念にね?」


「は、はい!足の裏、はくはく様の足を、湯へ私が手を入れて………と、よし―――」

はくはくを癒す事だけを考えた無心のコスモスの頭には、はくはくの裸体への注意が抜け落ちていたから、はくはくが浸かる浴槽の足側から、はくはくの左足の裏へ手を伸ばしたコスモスの視界に、それが映って、

「―――っ!」

それは、女の子には無いものであり、少女であるコスモスが決して見慣れぬものである。

コスモスは再び悶絶することになった。


こうして、シリルとコスモスによって、はくはくは湯につかりマッサージを受けて、翌朝に体調万全で目覚める事になったのだが。

はくはくを再びベッドへ横たえて、シリルが服と僧衣を元のままに着せ終わった時、コスモスは湯だったタコのように顔を真っ赤にして、へたりこんでいた。

まだ少女といっていいコスモスには、刺激が強すぎたから。


がしかし、翌朝はくはくが見るからに元気になっているのを二人は確認し、

「コスモス、三日ごとにはくはく君を癒していこうね?」

実に良い笑顔のシリルにそう言われて、

「はくはく様の裸に慣れる気がしませぇん!」

そう泣き言を口にしたのも仕方のない事であろう。



ともあれ、一歩大人の階段を上ったコスモスとシリルという二人の乙女によって、はくはくは知らぬ間にその裸体を見られている―――実に隅々まで。




はくはく君とコスモスちゃん、キュルにシリル様が少し気になる、応援したいと思っていただけましたら、ぜひ下の☆☆☆☆☆をポチっとして★★★★★に変えていただけると嬉しいです!

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