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第四章3 誠心誠意接待・幸福日常

この作品、皆さんには楽しんで頂けてますでしょうか?


少しは読んで頂けてありがたいと思いながらも、評価などの読者様のアクションが無さすぎて毎日不安な作者です。


少しでも面白いと思って頂けてるなら嬉しいのですが、実際どうですか?


少しでも面白いと思ってるよ、という方はブックマークや評価いただけると、作者はとても安心して書き続けられるので、ぜひお願いします。




―――ビリル神聖王国王都、大通りから外れた路地にて。



晴天の空の下、はくはくはキュルを肩車して、その隣のコスモスと歩く。

キュルを肩車しているのは、大人の視線から王都を見せるためだ。


「私とキュルちゃんが歩いた大通りとは違う方ですね?」


「大通りもいいけどね、王都民が知る場所や通りってのがあってね」


「あれ、はくはく様って?」


「元王都民。俺、ここで神官修行したからね」


「おーおーいー?」


「そう、王都民」


頭上から降って来るキュルの声に応えながら、はくはくは大通りから二本外れた路地を案内している。

立ち並ぶのは普通の民家、二階建てもあれば平屋もある。

庭付きもあれば、玄関扉が複数並ぶ集合住宅もある。


その外観は個性的で、路地を進むたびに違った顔を見せるからはくはくは好きだった。

庭先に干された白いシーツが風に揺れ、陽光をあびてまぶしく輝き、そうかと思えば酒樽が積まれた裏路地の小さな酒場が静まり返って佇んでいたり。


そして、この路地の先を抜け開けた視界の中にあるのが、

「王城!大きいです!真っ白です!」

「あーおー!」

「ここから見る王城が好きなんだよ」

「王城の足元に連なって建ってる建物も大きいですよ!」

「あーあー!」

「貴族屋敷だね。王城に比べると小さく見えるけど、近づいてみたら全部一軒一軒大きいよ」

眼前に、丘に建つ白亜の貴族屋敷を足元に従えるように、丘の最上に白くそそり立つ純白の王城。

神へ信奉を捧げる祭壇のうち、王都の中で最も高くにある祭壇を持つ王城は、『神の城』とも呼ばれる場所であり、王都の中心にしてその威容を堂々と見せつけて建っている。


そして、もう一つはくはくには用事があったから、この場所を選んだ。

見上げる先に王城を望む裏路地の先、低い塀で囲われた王都に四ある教会の裏である。

そして、教会の裏手には墓地がある。


その墓標の一つの前ではくはくはキュルを肩車から降ろし、祈りを捧げるように両手を結んで額に当てる。

その目は閉じぬまま、

「お父さん。色々ありましたけど、なんとかやってます。あなたが言った通り、世界中の人を助けられるように頑張ってみますから、見守っててください」

そう小さくつぶやくと、神妙な顔のキュルをはくはくの前に導いて、

「お父さん。あなたの孫、みたいな子もできました。この子の事も、それからいつも俺を守ってくれるコスモスちゃんの事も、どうか一緒に見守ってください」

コスモスを振り仰いで、かつての師に願った。


かつての師、浮浪児ルッタを救ってくれた孤児院の主を『お父さん』と呼んだ事に、少し気恥ずかしさはあったが、ルッタが師をどう思っていたのか気持ちを告げたいと思ったから、頬の赤さは我慢することにした。


「はくはく様のお父様、やすらかにお休みください」


「あーあーい」


はくはくの言葉から相手がどんな人か察したコスモスが、一般的に知人に対して祈りをささげる言葉を口にして祈ったのを見て、キュルも真似をしたようだ。


しばらく墓標に佇むはくはくを見ながら、コスモスははくはくの言葉を思い出している。


『世界中の人を助けられるように頑張ってみます』


まるでコスモスが子供の頃から好きだった童話『レイネ姫の冒険者』の中でしか見ない言葉であり、およそ普通の人間が口にする言葉ではいはずだった。


それをはくはくが言った時、コスモスの身がふるりと震えた。

お腹の中で沸きあがったのは快感であり、それはコスモスの偉大な大神官がもたらすと宣言した、世界への偉業の大きさを想像して感じた喜びで。

それを護り支えるコスモスが世界へ成す貢献でもあるから、

「私も世界中の人を救うってことだ。なんて凄い人生!」

只の村娘が世界中の人を救うはくはくの偉業を支える事は、つまりコスモスも世界を救うと言う事なのだから。

これからはくはくと共に成す偉業を想像し、その栄誉に酔って頬が上気しているのも無理からぬ事である。



父へと祈りを捧げたのは、はくはくの勝手だ。

であるから、コスモスとキュルに対しての接待は残されたまであり、はくはくはコスモスとキュルを連れて大通りに戻った。


「せめて接待くらいしないと、罪悪感が半端ない………」


なにせ、コスモスとキュルを放ってカジノで二週間勝ち続けられたのは、キュルのおかげであり、キュルと一緒にいてくれたコスモスのおかげなのだから。


そういうわけで、

「仔馬乗馬体験ですか?」

「そう。元々小さい馬の仔馬だから、キュルでも乗れるし、おとなしいから安全」

「きゃっきゃ」

石畳が覆う王都にありながら、店の玄関をくぐり反対側の玄関を出たそこに広がる芝生のような短い草に覆われた馬場。

そこにちんまりと歩く仔馬を見て、キュルがぴょんぴょん跳ねている。

きらきらした目が仔馬に向けられて笑顔だから、はくはくは喜んでもらえそうだと一安心。


「キュル、一人で乗るんだよ。乗ってみる?」


「あーいー!あーいー!」


二度嬉しそうに返事が返されて、はくはくに延ばされた両手をとって抱っこ。

店員にお金を前払いして、馬場のうち仔馬の待機場所として木柵で区切られた場所に案内されるままに進む。


茶色に黒、薄い黄色に見える仔馬もいて、たてがみやしっぽの長さやもふもふ具合も様々だ。

そのうちの一頭の前で、

「あーあー!」

キュルが薄い黄色の仔馬に手を伸ばしたから、店員の頷きをもらってキュルを仔馬へとそっと降ろす。


たてがみは柔らかく細いが長く、尻尾も同じくであり、従魔好きのはくはくも納得の一頭を選んだようだ。もっとも、馬は魔獣ではないのだが。


柔らかな座り心地に鞍に、仔馬の口に装着したハミから伸びた手綱を店員に促されて持ったキュルの顔が少し勇ましいのがまた可愛いが、

「この子でも馬を操れるものですか?」

店員がキュルに指示したのは手綱を持つ事だけだったから少し心配になり訊ねたはくはくに、

「ええ、大丈夫です。この子たちは乗り手の意思をくむのが特に上手いので」

そう言われて安心して、

「よし、キュル。楽しんでおいで。ちゃんとここで見てるから」

そう言ってキュルを送り出す。


片方の手を上げてはくはくとコスモスにまるで「行ってきます!」と言わんばかりのキュルが、ゆっくりと仔馬の待機場の開け放たれた柵から出ていく。

目はきらきらと、口元は興奮で弧を描き、仔馬をなでなでしながら歩く姿を眺め、

「はあ、キュルちゃんの可愛いが毎日更新されていく!」

そうコスモスがうっとりとこぼすのも無理からぬ事で、

「うちの子が一番可愛い!これが世界の真理だ!」

はくはくも目はキュルから離さぬままにそう言い放ったのは調子に乗ったからであるが、柵の内側で店員が手の甲を口元に当ててうつむいて肩を震わせたのは、親ばか二人を微笑ましいと笑んだからだと信じたいところである。


キュルが満面の笑顔で乗っていた仔馬を撫でて、

「あーいーあーいー!」

お礼の気持ちを口にしてはくはくとコスモスに飛びつくように飛び出してきて、

「あーあーえー!きゃっきゃ」

きっと「楽しかった!」と言っているそれをコスモスと一緒に受けて、大満足のまま『仔馬乗馬体験』店を後にした。



そして、次に来たるはレストラン。

但し『王都で一番』という枕詞が付くレストランであり、その大きな入口にはボーイが二人立って、美しい所作で客を迎え入れている。

入口の外にメニュー表もないことから、その高級さが感じられる店である。


店は五階建てであり、その内三階までが客が食事を楽しめる場所で、上部の四階五階は従業員の個人居室が並んでいるらしい。

従業員にそれぞれ個室を与えるとは驚きの企業意識である。


建物の高さもメニューの値段もとても高そうな店を見上げて、

「はくはく様。無理しなくて良いです!私もキュルちゃんも安い店で満足です!」

「あーいー!」

コスモスが心配そうにはくはくに訴え、キュルも同意とばかりに続いた。


コスモスは実に二週間、キュルと一緒に昼食は全て外食にした。

朝食と夕食しか出ないホテルだったから、昼食は外食するしかなかったからである。

実際は、職業を得たコスモスにもキュルにもインベントリがあるため、そこにヘルペナ村の料理が一か月分くらいは入っていたが、なによりはくはくからの『王都を楽しんで』という指示通りに、王都の様々な店で昼食を楽しんだ。


楽しんだのだが、

「王都の物価はすごく高い!」

急速に減っていくお金に身をもって知る事になった。


「ここは止めておきましょう、はくはく様!私、手ごろで美味しい店を知ってますから!」


「あーいー!」


どこか必死に引き留めようとするコスモスとキュルを前に、

「いや、ここにします。二人へのお礼としては足りないくらいです!それに財布の中に―――」

そう断言して二人を安心させるべく所持金額を耳打ちをしたが、

「え?今いくらって?あの桁がよく分からなかったです………」

コスモスの理解の及ばなかった額を告げてしまったらしいと反省。


「とにかく、大丈夫。我が家は今、お金持ちです!」


そう言って二人の手をとってレストラン入口へと向かった。

絶妙なタイミングで玄関扉を開くボーイの笑顔の間を通り過ぎ、入り口に入ると目の前に店員が待ち受けていて、

「三名様でよろしかったでしょうか?お席は一階が自由席、二階が間仕切りによる半個室、三階が完全個室になります。いかがなさいますか?」

一切の淀みなく問われて、

「じゃあ、二階の席をお願いします」

はくはくはそう答えた。


店員が別の店員を促して、その店員の後に続いて二階への階段へ向かい、二階席に案内された。

店内は明るすぎず暗すぎもしない、落ち着く雰囲気。

壁こそ白いがその明度は調整されたものだろう、大きな窓から差し込む陽光をやわらかく受け止めている。

間仕切りは三面あり、開けている方向は眼下に王都の中央通りを眺める大きな窓である。


「うわぁ、素敵な席ですね!はくはく様!」


「あーあー!」


「二人に喜んでもらえたなら、なによりです」


コスモスの椅子を引いてくれた店員に、あわててお辞儀をして座ったコスモス。

身長が低いキュルには少し高いテーブルに、座面が高い子供用補助椅子がささっと運び込まれたのも、流石高級店である。

男性であるはくはくだけは、自分で椅子を引いて座ったがこれは女性と子供優先という世界の基準に則ったものであたりまえの事である。


そして、メニューはというと、

「はくはく様、メニュー表がありませんね」

「ないんだ、ここ。コース料理一択」

「値段が分からないのに?」

「そう。値段が分からないままに」

おそろしいが、流石高級店である。

ちなみにこの知識はルッタ時代のものである。


若干不安そうな顔を浮かべたコスモスだったが、

「キュルちゃん、ほら。この店から王城が見えますよ!」

「あーいー!」

窓の外、賑やかに人が行きかう太き大通りの先に高い作りの商店やホテルが立ち並ぶ先に、白き王城を一望できる景観に見入って、不安は消えたらしい。


そして、運ばれて来た料理に―――

「うわ」

「え?」

「あー!」

驚く事になった。


黒いテーブルの上、真っ白い皿のコントラストが美しく、前菜から始まった料理はいずれも一口食べる度に驚きと感動があった。

前世の記憶があってもはくはくは庶民だったから、高級料理の名前など知らなかったから、店員が料理名を口にしても、それがどんな料理であるかわ分からなかったが。

それでも、盛り付けの美しさ、美味しさは分かった。


その評価は、

「生まれて食べた料理の中で一番おいしい」

そういう事であり、

「前の皿を食べた後の次の皿で美味しさが跳ね上がるのはどうして?」

コスモスも美味しさに唸りを上げたのも頷けて、

「次に続く料理まで計算され尽くしてる………」

はくはくはそう推測するしかできなかった。

前の料理の味が、次の料理の味を引き立てるように続くのだから驚きである。


なにより、幼子であるキュルには完全に子供用の別メニューが運ばれてくる徹底ぶり。

単に子供が好む料理というだけでない繊細な料理に、キュルが満面の笑顔を浮かべている。

その手にはまだ慣れないスプーンやフォークを握りこんで、

「あーあー!あーうー!」

一生懸命口に運ぶ姿にはくはくとコスモスもほっこりした気持ちになって。


はくはく達は優雅でゆったりした時間を過ごして、最後にデザートに珈琲を頂いて、

「あー最高だった」

「はくはく様ぁ、私生まれてきてよかったぁ!」

「あーいー!あーいー!」

そう呟いたのも仕方なのない程、高級という言葉の意味を存分に理解した。


驚きは肉料理も魚料理も食べたし、何品の料理が出されたのか指折り数えないといけないほどの料理を食べたというのに、満腹ではあっても、心地よい満腹感だった事。

つまり、三者に対して完全に調整された料理の量だったということだ。


「満足してもらえた?」


「はい、はくはく様!最高でした!」


「あーいー!」


「良かった。コスモスちゃん、キュル。二週間も放っておいてごめん!今回は、そのお詫び!」


「二週間、はくはく様と離れてるのは正直不安でしたけど、私もキュルちゃんも耐え抜きました!」


「あーいー!」


「ごめん、それとありがとう!」


はくはく達は、大満足でレストランを出た。

会計の際、神官時代の二年分の給金にあたる額を支払う事になり、コスモスは少々青ざめていたが、そんな額は今やはくはくにとっては小銭程度の額である。



キュルの祝福の暴威によってはくはくの所持金は今や―――億を軽く超えているのだから。




星評価やブックマークしてもらえると、書き続けるモチベーションが迷子にならなくなります。

切実なので、よろしくお願いします。

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