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第四章1 ビリル神聖王都・いざ始めよう

この作品、皆さんには楽しんで頂けてますでしょうか?


読んで頂けてありがたいと思いながらも、評価などの読者様のアクションが無さすぎて毎日不安な作者です。


少しでも面白いと思って頂けてるなら嬉しいのですが、実際どうですか?


少しでも面白いと思ってるよ、という方はブックマークや評価いただけると、作者はとても安心して書き続けられるので、ぜひお願いします。




―――ナーブ辺境村より砂漠地帯と森林地帯を超えて東、魔王城にて。



豊かというよりは人の手が入らぬ鬱蒼とした森林に囲まれ、かつては清浄な水をたたえたであろう川は毒で汚染されている。

その川の水を引き込んで、周囲を水堀で囲まれた、まるで巨大な島のようなその場所の中心に黒くそびえたつのが魔王城である。


魔王城を取り囲むように残るのは、かつての民の営みを感じさせる広大な城下街の残骸。

崩れた民家らしき建造物、周囲を覆っていたであろう高き外壁、そして城下へ入るために水堀に掛けられた四方の橋。


その見る影のない広大な廃墟に、たった一つ健在でそびえ立つ魔王城は、いびつにさえ映る。


その城内に蠢く配下の魔獣を従えて、玉座に座するのは、魔王。

側頭部から捻じれ生える二本の角。

腰から生えた蝙蝠のごとき羽。

漆黒のドレスに身を包む魔王の性別は女性。

ドレスの漆黒と対象的に、白磁の肌の口元は黒に近い紫の紅。

最も印象的なのは、その目元が黒いレースの眼帯で覆われていること。

まるで、何も見ぬ、と視界を絶って世界を拒絶しているようにも見える。


「人間が憎い、世界が憎い、壊し消し去りたい!―――なのに、いったいなぜ?どうして我は動けぬ?なぜ無為に待つ事しかできぬ?」


魔王の呟きは誰にも届かぬままに消えた。


魔王の心を苦しめるのは、憎しみから人間の根絶をひたすらに願い、その力も持つにもかかわらず、玉座から動けぬから。

魔王城など飛び出して、村を焼き、街を消し去り、目につく人間全てを根絶やしにしたい強烈な欲求がありながら、それが出来ぬ苛立ちと怒りが身を焼くように魔王を苦しめていた。


欲求と、それに反して自らの意思でもってしても動けぬ不可解が、ずっと魔王の中にあった。

いつしか魔王は、動けぬ自分は『誰かを待っている』のではと考えるようになっていたが、それが誰なのか分かるはずもなかった。


そして、不可解はもう一つ。

配下の魔獣を城内に従えていても、玉座の間には魔王一人である。

なぜか、玉座の間に魔獣を置くことが出来なかった、理由はやはり魔王にも分からないままに。


その待っている誰かが憎き人間であったなら、魔王一人で対峙する愚など侵さない―――これが本来の魔王の姿勢だ。

多数の魔獣と魔王とで確実になぶり殺しにするのが最も懸命な対応だと魔王は考えているのだから。

なのに、魔獣に玉座の間に控えよと命じようとして、その言葉が出ない。

どうしても魔王は、玉座の間に魔獣を配置できなかった。


「分からぬ。我はいったい何に縛られている?我を絡め動きを封じるものを我は人間同様許さぬ!決して許さぬぞ!」


魔王の声はまた、誰の耳に届くことなく玉座の間にこぼれて落ちた。



―――魔王城、玉座の間にてただ一人玉座に座すのは『魔王』である。



◆◆◆◆



―――ナーブ辺境村よりはるか西北、ビリル神聖王国王都にて。



「うわあ!はくはく様!なんて広い都なんでしょう!それに綺麗!」


「あーあーいー!」


はくはくとコスモス、キュルは黄金翼竜に背の上からビリル神聖王国のその広大な王都を上空から眺めていた。

旋回を続けているのは、余りに眼下の景色が壮観だったからに尽きる。


「こんなに広い都をあんなに高い外壁で覆うなんて、凄いですね!でも、ここの外壁は石製ですね?では、はくはく様が奇跡を施したナーブ村やヘルペナ村の方が断然格上です!はくはく様の方が偉大です!」


「あいあいー!」


王都の巨大さ、城下のあらゆる建造物が、壁は白、屋根はオレンジ色に統一され、陽光に照り返るその美しさに、コスモスとキュルは変なテンションになっているらしい。

眼下の王都を護る者より、はくはくの方が偉大だと言い張るのだから。


「ここの外壁ね、絶対壊れないんだ」


「え?石製ですよ?はくはく様の鉄製建材より固いわけないじゃないですか」


「壊れない。それどころか、民家も全部壊れない。………なにせ、神様に守られてるから」


「ええ?神様に?」


「あーうー?」


「そう、神様に」


「ぐぬぬ、私の大神官様が、神様にはおよばないと………認めたくない!私に職業をくださったのは神様じゃなく、はくはく様なのにっ!」


「ぬぬぬー」


本来比較できようはずもない神と神官の関係。それを神官が神より上だと思いたいコスモスの重い盲信は横に置いて。


ビリル神聖王国は神によって保護されている。

最初に神の声を聞いたといわれる三人によって、神を信奉するためだけに建国されたのがビリル神聖王国だ。

城下の四方に巨大な教会が立つばかりか、王城の中の玉座の後ろ、玉座よりも高くに祭壇が据えられているほどである。


そしてビリル神聖王国への神の加護が色濃い存在が、ビリル神聖騎士団である。

HPは減るが決して死なない不死の軍団。

神聖領域指定で神への冒涜行為と認定される行為に、距離関係なく瞬間転移して神罰を与える。

神罰の代行者。


加えて、冒険者達やはくはくにとって重要な事、それは王都内は神聖領域指定で『PVP禁止ゾーン』であり、王都内では攻撃行為が一切できない部分。

PVE民にとっての完全なる安全地帯、それがビリル神聖王国王都である。

つまりは、ゲーム時代に圧倒的有利なPVP民からPVE民を救済する措置上で設定された王国である。



「ではコスモスちゃん、キュル。ここは安全だから。美味しい物を食べて、服を買って、甘い物を食べて。屋台もおすすめ、さあしっかり楽しんでおいで!」


黄金翼竜を、騎獣を専門に預かる商いの騎獣舎に預け、はくはくは二人にお金を渡す。

黄金翼竜をわざわざ騎獣舎に預けるのは、王都を一歩でも出るとそこはもう『PVP禁止ゾーン』ではないから。

王都外に待機させて、何かしらの攻撃を受けるのを防ぐためだ。


「安全………なのは分かりますが、はくはく様と離れるのは、なんだかむずむずします」


「ん-いー」


「教会の時みたいに無理やり連れ出そうとしても、門番がいて不正を見逃さないから、絶対安全。それに、二人に王都を楽しんで欲しいから。行って来て、夕方にはこの宿の部屋に戻るから」


離れがたそうなコスモスを説き伏せたのは、田舎暮らししか経験していないコスモスと、つい最近まで喜びを知らなかったキュルに、楽しんでもらいたいからだ。


一方で、はくがくが多少後ろ暗い気持ちになってしまうのは、

「カジノにキュルを連れていく訳にはいかないから………」

はくはくの王都での目的がカジノだったから、である。


既に宿泊を頼んでいる宿の前、何度も振り返ってはくはくを見る二人を見送って二人の姿が見えなくなってから、はくはくはカジノへと向かった。



公式に賭け事が許可される場所『カジノ』が存在するのは、世界で二か所。

ビリル神聖王国王都と、ガルデン帝国帝都である。

二か所存在する『カジノ』だが、特に名前はなく、どちらもただ『カジノ』という看板を掲げている。

その広い玄関の両開き扉を、ボーイの制服に身を包んだ男が開いてくれたから、はくはくはカジノ内部に入った。


「派手で明るい!」


広い空間に並ぶ、スロット台、ポーカーテーブル、ルーレットテーブル。天井からつるされたシャンデリアがキラキラと光を落とし、足元は細かな模様入りの絨毯であり、はくはくが見る限り絨毯の継ぎ目が見当たらないから、

「この広い床の大きさの一枚絨毯?うそぉ?」

どうでも言い事に驚いてしまった。


「お、見ない顔だ!」


玄関を入った所でボケっと立ち尽くすはくはくに、近くのスロット台に座っていた女が声をかけてきた。

頭上に白い名前が浮かんでいるからPVE民の冒険者である。


「ああ、どうも。初めて来たんで、派手だなあと」


「おや、えっとはくはく君か?カジノは初めてなんだ?わたし、のあのあ。なんか他人とは思えないネーミングセンスだね」


「そうですね。まあ俺のは兄貴が勝手につけた名前ですけど」


「じゃあ、他人と思えないのははくはく君のお兄さんか………あれ、なんかわたし、はくはく君になんか同士感が沸いてるんだけど、なんでだろ」


「何の同士です?」


「あ、分かった!はくはく君から、かすかーに爬虫類っぽい臭いがするからだ!はくはく君、爬虫類系の従魔が騎獣もってるとか?わたし、好きなの!」


「あーっと、どうでしょう?」


「おっと、これはわたしが悪いや。知り合ったばっかりで、細かい事聞くのマナー違反だもん。ごめんね、はくはく君。お詫びにわたしの情報を進呈させて。わたし、魔獣を愛でたいってクラン『モフ連はちゅ連』所属なの!はくはく君が興味あったら、ぜひぜひ!」


「あ、はい。考えておきます」


茶色のショートヘアののあのあは、衣装スキンからして爬虫類系。

ディフォルメされて、もこもこの翼竜衣装スキンを纏っているから、のあのあの無類の爬虫類好きが見た目からうかがえた。

間違いなく、いい人で、翼竜大好きなはくはくとも趣味が合いそうである。


しかし、冒険者クランに加入するのは危険である。

クランに参加するには、クランメンバーがステータス画面を通じて相手を『クランに招待』し、その招待がステータス画面に届いた参加者がステータス画面の招待で『クラン加入』処理をするで成立する。


問題は、はくはくがNPCである事。

果たして『クランへの招待』がはくはくのステータス画面に届くだろうか?それが分からない。


加えて、はくはくがNPCに関して抱いている、彼らも一人一人人間だ、という思想を理解してもらえるか分からないからだ。

村をかたっぱしから要塞化したい、なんて言い出すはくはくをどう思うだろうか、それも分からない。



「ねえ、他に何か聞きたい事があったら教えるよ?」


「ああ、じゃあ、今PVE民とPVP民ってどうなってます?」


「はくはく君、その辺知らないって事?あ、またやっちゃった。ごめん!PVP民のやつらは、ガルデン帝国側で拠点を構えたりしてるね。遠征もいってるみたい。PVE民の方は、ほとんどが、ここビリル神聖皇国王都にいるよ。PVE民が使える神官は、王都の神官四人以外には全滅。PVP民に独占されちゃってると思う」


「うわあ」


「そうだ、ちょっと聞いてよ愚痴!あいつら、ずいぶん長い間この王都の周辺でPVE民待ち伏せしててさあ、わたしも何度殺されたことか!こちとら、魔獣の飼い馴らしのために強くならなきゃ始まんないのに、何度も何度も、場所を変えては待ち伏せされて!」


「ひ、ひどいですね………」


「遠征に行こうにも、転職させてくれる神官は王都にしかいなからさ。遠征道中でどんどん強くなって転職って事が出来ないわけよ。仕方なく、王都の周辺でクエスト受けたりほそぼそとやってるのに、それを待ち伏せされてさあ!」


「………」


「ああ!思い出したら腹立ってきた!それに、あいつらクエストラインを何個も独占しちゃてるのよ。クエスト受注対象周辺に陣取って、他クランの受注を妨害してくんのよ!なんていっても滅茶苦茶腹立つのが、『飛空艇』入手クエストラインも独占状態って事よ!ふざけんな!」


「滅茶苦茶困るじゃないですか!俺も欲しいです!」


「わたし達だって欲しい!飛空艇は死んだ場合の復活地点に指定できるから遠征に最適なのに、手に入らない。おかげでわたし達の成長が遅くて遅くて。わたし、翼竜狙いなのに、いつになったら東部に行けるやら、ぐすん………」


翼竜と東部が示すのは、翼竜の発生地が東部にしかない事である。

翼竜発生個所は二か所、一か所は東部北の『黄金洞窟』。

もう一か所は東部南の『風啼き渓谷』である。


ゲーム時代『魔獣使い』であったはくはくも東部を目指したから、のあのあの気持ちが分かりすぎてしまい、なんと声をかければ良いのか、はくはくは言葉を探していたが、

「あー、のあちゃん!またカジノにいた!まだ東部に行けないのに、スキンだけ先に手に入れたって仕方ないだろ!」

のあのあの仲間と思しき男が声をかけたから、はくはくとの会話はおそらく終わったと察して、オブジェのように突っ立っていた。


「だーってー、翼竜を手に入れたら、かわい子ちゃんには、黄金翼竜スキン付けてあげるのが礼儀でしょー!」


「あ、そうだ!それなんだ!のあちゃん、落ち着いて聞けよ?王都に、もう翼竜を従魔にしてるやつがいるんだ。それも、黄金翼竜スキン付きで、騎乗鞍も装備済の完成形だ!」


「見たい見たい撫でたい!どこ?どこ!早く、答えて!」


「三番騎獣舎―――」


それだけ聞くと、のあのあは猛ダッシュでカジノを飛び出して行き、仲間の男が一瞬呆気にとられた後、追いかけるように飛び出して行った。


はくはくは、カジノに入ってから、のあのあと話しただけで、未だ賭けを行っていないが、貴重な情報は得たから、のあのあとの会話の時間は全く無駄ではなかった。


教えられた現状から、状況はかなりまずい。

はくはくにとっては、味方ともいえるPVE民の強化が遅れていて、PVPクランが旺盛に強化にいそしんでいる。

追加経験値や報酬が得られるクエストが抑えられているのも問題だし、なにより『飛空艇』クエストラインを独占していると言う事は、そのクランが飛空艇入手クエストラインに挑んでいるかもしれないと言う事を示している。


相手も飛ぶとなると、はくはく達の危険が一層増す。

一刻も早く、仲間を強くしなけらばならない。


よって、はくはくは計画を進めようと、

「よし、賭けを始めよう!」

そう言ってはくはくは、インベントリからクッキーを取り出して口に放り込んだ。


『クエストライン』とは、複数のクエストをクリアすることで最終的な経験値や報酬が得られる、数珠繋ぎのクエストの事である。クエストの複数クリアが必要なクエストラインの、その報酬は破格である。



―――ちなみに、三番騎獣舎の黄金翼竜、はくはくの愛獣である。




星評価やブックマークしてもらえると、書き続けるモチベーションが迷子にならなくなります。

切実なので、よろしくお願いします。

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