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第一章2 協力

少しの間3話から2話投稿して、以降は1話投稿にしたいと思います。

投稿時間は最初悩んでコロコロ変えると思いますが、毎日投稿しますので大目にみてください。




―――神官拉致監禁



文字通り神官は『囲われる』。

冒険者の転職を行える神官は、『幻夢』世界の成長の要である。

例えば、冒険者が「自分がゲーム内最強でありたい」と望んだらどうだろう?

魔獣を多く倒し、経験値を得てレベルアップし一つ一つ上位職へ転職してまた経験値を得てレベルアップして………これが自分自身が強くなるための行動だ。


しかし、他の冒険者も当然同じ事をする。それでは差がつかない。

では、どうするか?他冒険者の成長の要『転職』を阻害してやればいい。自分たちだけ転職できて、他者を転職させないようにする、つまり神官の独占である。


『クラン』とは冒険者が二人以上同意して結成される仲間勢力である。

ゲーム時代どのクランも、自分のクランに神官を確保し、他クランに神官が確保されるのを防ぐために、手あたり次第に神官を確保するために動いた。


この場合、神官を殺しては意味がない。神官はゲームシステムの根幹にかかわる重要な存在であり、神官が死ぬと、再配置されるためだ。


殺さずに、手間をかけ、複数いても利がない神官をわざわざクランの拠点に監禁してはじめて他クランへの妨害工作として成立するのである。

そしてこの他者への妨害工作に熱心なのがPVP民達である。


そして、目の前のPVP民がまさにその妨害活動の真っ最中であり、はくはくをクランで監禁するとはっきりと答えたわけである。


監禁。

生まれ変わった世界で監禁される。

自由はなく、冒険もできず、特に神官として利用されることもおそらくない。

ただただ、監禁されるのである。

誰だってそんな第二の人生は望むまい、はくはくだって心底嫌であり、

(逃げよう!)

そう心は決まるわけである。



「冒険者って死ぬとやっぱり復活します?」


「ゲーム通り復活するぜ、デスペナルティは食らうけどな!」


はくはくは、突然冒険者としての名前が表示された神官はくはくを前に、興味が沸いたらしい冒険者殺し達のぐいぐい教会外へ連れ出そうとする力が弱くなったのを感じて、逃げる隙を伺おうと話かける。


ここで言う『デスペナルティ』とは、直訳の『死への罰』の言葉通りであり、ゲーム時代は所持金や所持アイテムをその場に落として肉体は消え去り、職業熟練度を示す『レベル』が幾分下がった上で、死後自分が選んだ再復活場所でよみがえるといったものだ。


「NPCが死んだらどうなります?」


「再配置されるが、別の個人になってるんだとよ。村中のNPCを殺したクランがいてよお、数日後に行ってみたら全員見たことない奴になってて普通に暮らしてたんだと」


「………」


『NPC』とは、プレイヤーとは別に世界に配置されたキャラクターであり、ゲーム時代ではプログラムによって行動や役割を与えられた、世界を彩る存在だった。

冒険者に『クエスト』と呼ばれる依頼を出す者がいたり、宿屋や装備屋の店主のように冒険者にサービスを提供する者もいるが、その他圧倒的多数は、ただただ冒険者に何ももたらさず、話しかけても似たような返事しかできない者達だった。

容姿や言動、衣服まで比較的作りこまれていたが、ゲーム時代には命ある相手としては見られない存在だったのだが。


「そいつら、美人村娘が出るまでガチャるって、何度もNPC殲滅しては再配置させてたんだと」


「なぜに?」


「そりゃおめえ、娘と遊ぶためだろ。意味分かるよな、女とあ・そ・ぶ・ん・だ。この世界なら本当にあそべちゃうからなぁ」


「うわぁ」


「それに、遊んだらちゃんと子供もできるらしいぜ!ガキはいらねえけ――――」


胸糞の悪い話が続くと思われたが、毒ガスマスクの一人がガスマスクを外して、教会玄関に近い最後列の長椅子で祈り続ける少女に見入ると、

「美少女村娘、激熱一発大当たり!うひー!」

そう言って口角を半月に上げた。非常に下卑たねちっこい笑みである。


しかし、その視線にも言葉にも村娘は反応せず、目を閉じて祈りに集中している。


「どうする気ですかね?」


「遊ぶんだよ、遊んじゃうんだよ!俺の子を孕ませちゃうぜ!」

片方が興奮気味に唾を飛ばして言い放つから、

「よし、お前を眠らした後、お楽しみだぁ!ちゃっちゃと歩け、おらぁ!」

もう一人も俄然やる気をみなぎらせた。


神官の拉致方法は、まず神官を教会の外に連れ出す事。

教会は『準神聖領域』として設定されている。

教会内で神官へのいかなる攻撃も、無効化される上、神罰を受ける。

神の声を聞いたという最初の信奉者達が建国したと伝えられる『ビリル神聖王国』の騎士団、ビリル神聖騎士団の騎士が転移して、神官に攻撃を加えた者を、神の冒涜者として処刑する、これが神罰。


このビリル神聖騎士団の騎士の異常なところは、神の冒涜者を処刑するまで、逃げても逃げても転移して追いかけ処刑するまで行動を止める事がない部分だ。

死の追跡者と呼ぶ者もいたほどである。つまり、教会内で神官への攻撃は、デスペナルティ確定と同義である。


但し神官への攻撃であっても教会外であれば、ビリル神聖騎士団に感知されず、攻撃自体も無効化されない。

よって、神官を教会外へと連れ出し、そこで麻痺系の攻撃で拘束してクランへと担いで帰る、これが神官拉致のセオリー。


ゲーム時代では、神官を掴んで持ち上げて教会外へ移動させて拉致していたが、これをNPCとも対話が可能になった世界では言葉で願えば素直な神官はほいほいと教会外に出るため苦労はいのかもしれない。


はくはくが前世の記憶を思い出す前の行動は、まさしく冒険者に頼まれるまま素直に教会外に出ようとしていたのだから。

加えて、もう一つ非常に手間のかかる強硬手段もあるのだが―――


しかし、はくはくにとって状況はさらに悪くなった。

冒険者殺し達は祈りを捧げる少女を襲うと明言したからだ。

はくはくにとっては初対面の相手はしかし、神官として生きて来た記憶の中、献身的に神官であるはくはくを気遣い、毎朝三食の食事を作ってくれて、彼女の仕事が休みの日は神官の居室の掃除までしてくれる健気な娘であった。彼女の悲しい境遇も知っている。

村娘の名はコスモス。

決して初対面などとは言ってはいけない記憶が確かにはくはくの中にあった。


助けたい、そう思うのはNPCをゲーム時代のNPCと同じ命無い存在とは思えないから。

―――前世を思い出す前の、神官ルッタとして生きて来た記憶が懸命に生きてきた過去を示しているから。

彼らにも意思があり、感情があり、過去があり、関わり合い、生きている。確かに生きているんだと思えるから。


(NPCだって生きてる―――)


ごく自然とそう思い、ゲーム時代の炎魔法の中でも高威力・広範囲の魔法の詠唱を、

「くらえ!【豪炎焼-ジンジア・ギ―――」

「「―――っ!」」

放てるかどうか知りもしない魔法を―――偽装した。


「くらえ!」の部分は気を引くためであったが、恥ずかしさにトリハダが立って後悔。

咄嗟にはくはくから離れた冒険者殺しの行動はしかし、はくはくを自由にする結果を招き。

はくはくは、その隙をついて村娘の手を取って、すぐ横の神官の居室への扉を開いて飛び込み、すぐさま鍵をかけた。


コスモスの腕を掴んだ瞬間、脳内に弾ける感覚が起こって混乱しかけたが、なんとか立てこもりに成功した形だ。

但し、神官居室に他の出口など、無いのだが。



「あ、あの神官様。何かあったんですか?」


蒼の大きな瞳が上目使いで向けられる美少女の可憐な美しさという暴力に耐えられたのは、ひとえに妹がいた経験の賜物だ。

妹が美少女だったわけではなく、少しだけ女性慣れできていたという経験だが、確かに役に立った。


しかし、はくはくは向けられる眼差しの下の頬が朱色に染まっている事に気づくと同時に、未だコスモスの腕をつかんだままである事にもようやく気付いた。

はくはくは、そっとコスモスの細い腕から手を離した。


「あ、ごめんなさい。コスモスさんは祈りに集中していて気づいていなかったんだけど―――」

説明しかけたはくはくの言葉を補完するように、

「くっそ、てめー騙しやがったなあ!女返せ!」

「てめーこの野郎!もう痺れさせて終わりにゃしねえぞ!痛めつけて泣かしてやらあ!」

外で扉をガンガン蹴りつける音と、罵声が響いた。


「外に悪い冒険者が来てて、俺とコスモスさんを狙ってる。俺は神官として拉致するため、コスモスさんは、襲うために」


「………」


驚き、手もとを見るように顔を伏せたコスモスを他所に、はくはくは思考する。

時間は多少稼げたが、有限だ。

教会は準神聖領域指定であり、教会内で神官への攻撃は許されない。


しかし、建物としての教会への攻撃は可能で、多少硬度が高く壊れにくくはなっているが壊せる。

教会を壊してしまえば準神聖領域指定は外れるため、元教会敷地内で神官に攻撃して拉致する、これが

神官拉致の二種類の方法の残る一方、非常に手間のかかる強硬手段である。

もっとも、手間ばかりが膨大すぎて誰もやらないのではあるが。


とにかく、居室への扉は壊すことができてしまう。

後は無理やり教会の外へ引きずり出されれば監禁まっしぐらである。


「【斬撃】!おらあ!」


「【斬撃】!うらあ!」


既に神官居室扉への破壊攻撃は始まっていて、壊れるまで長くはかからない。

神官の行う『転職』は相手に触れる仕草で行われるためだろう、彼らに肩組をされていた腕を通して、神官であるはくはくには彼らのステータスも脳内に浮かんで見えていた。

レベルは80と高くとも職業としては最初期職の『戦士』である。スキルもステータスも強すぎはしない。

もっとも、はくはくの方に戦う力があれば、の話ではあるが。


「ステータス」


改めて口にして、宙に浮かぶように表示される、ゲーム時代と同じ自分のステータス画面に目をこらす。


「え、待って。なんで俺、NPCって表示なの?」


通常『冒険者』と表示されるステータス画面の最上段の項目が、『NPC』になっている事に驚き、困惑する。

そもそもゲーム時代に『神官』という職業はプレイヤーには選べなかった。

その『神官』に転生した上、扱いがNPCとはどういう冗談だろうかと考え始め、

「あれ、俺死んだらどうなるの?まさか復活しないとか?怖ぁぁぁぁぁぁ!」

復活するかしないか試しに死んでみるなど、絶対やる気になれない。


「落ち着こう、一旦落ち着こう。こちとら神に仕える神官なんだ。神の加護的なすんごい力があるはずだ、きっと!」


今必要なのは自分に戦える力があるか確認することだと切り替える。


「職業は『神官』でレベル………1、低い!スキル『転職』だけ、ちくしょう!魔法は魔法使え………【癒-イルメ-】【解異癒-ペルメ-】って、最弱回復魔法と状態異常回復だけ………くそ、俺がまるで使えないっ!武器適正、『メイス』と『聖書』。メイスはここに無いけど、聖書はあるぞ!この聖書の能力は?装備欄の聖書を選んで………『聖書の角で殴打されると痛い』って、ネタ武器か、バカヤロウ!監禁される未来しか見えない!あ、そうだ自分を転職………できへんのかい!」


ゲーム時代、冒険者にはなれなかった職業『神官』だったからこそ、期待があった。特別な職業で、凄い能力を秘めているのではないか、と。


がしかし、

「神官なのに、神の加護的な力はないのかよぅ………」

まぎれもない危機に直面しながら、あまりの自分の使えなさに、思考は現実を拒否し始め―――


はくはくは、監禁されている自分を想像する。

日々何もやることがなく、ただただ生かされる日々。いや、いじめられたりもするかもしれない。

そんな生活耐えられない。きっと途中から現実逃避するだろう、

(それこそ前世の記憶でも紙に書き起こして、だーれも望んでない自叙伝でも作るんだぁ………)

と想像している今現在も既に現実逃避気味。


兄弟妹が、本当にゆるーく協力しあった一生。

時に兄に助けられ、時に妹を助け。助けられた礼の言葉を鬱陶しそうに手で払う兄や妹が、少々格好良く見えたものである。


村娘ガチャと言ってNPCを殺して回る輩と違い、協力とは素晴らしい、関わり合ってしか生きられない人間の良さがある………そこまで逃避的思考にふけったはくはくの中に、ひとつのひらめきが浮かんだ。

「協力しあえば良くない?」と。


もう一つ。

消していなかったステータス画面の端に、あるものを見つけたから―――


「おっと、まさかアレが使えちゃう?」



―――はくはく、行動開始である。




星評価やブックマークしてもらえると、書き続けるモチベーションが迷子にならなくなります。

切実なので、どうかよろしくお願いします。

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