観音様
おじいさんのありがた~い おはなし。
さて、やっとのことで、又八は、「初瀬」にたどり着くことができたそうな。
「長谷寺」までの長い参道には、いろいろな食べ物やや、お土産を売る店が並んでいて、「わらしべ饅頭」、「わらしべ煎餅」、「わらしべなりきりキット」、「わらしべ長者のわら」、「木刀」などが売られていたそうな。
入り口の門から、長ーい通路を登って、やっと、本堂にたどり着くと、又八は、それからずっと、祈りつづけたそうな。
夜になって、お寺のお坊さんが、
「熱心なことですなぁ、しかし、今日は閉山です。お帰りなさい。」
「おら、21日お祈りを続けなければ、ならないんだ。」
「ほう、感心なことだ、三七日参りですね。」
「だから、ここから帰るわけにはいかねえだ。」
「いえいえ、また明日いらっしゃい。21日間、一日も欠かさず、来るんですよ。」
「おらの家に帰ったら、明日までに戻ってこれねえだ。」
「ふもとまで下りれば、宿はありますよ。とにかく、今日は閉山です。」
といわれて、しぶしぶ、又八は帰ったそうな。
それから、又八は毎日欠かさず、入口の門から、長~い通路を登って、本堂でお参りをしたそうな。すると21日目の夜、又八の枕元に……。
「これ、又八、起きなさい。」
「ん?なんだぁ。」
「わしは、観音じゃ。」
「おーっ!観音きたー!」
「騒ぐな。おまえは何を望んでおるのじゃ。いまいち、よくわからんのじゃ。」
「おら、縁結び食いてえ。」
「縁結びは、食えんのじゃ。」
「食えんのか。わんちゃんあるって、かーちゃんが言ってたんだ。」
「わんちゃん?」
「わんちゃん、嫁さん来るって」
「嫁さんか?おお、縁結びじゃの。」
「それから、わらを交換しろって。」
「それの。あれはうまくいったがのう。あの後『わらしべ長者』が、はやってのう。みんな同じことを願うんじゃ。」
「そっか。みんな長者になったんか?」
「そんなことはないのう。最近ではみんなお土産に買っていっちょるわい。そもそもわしは『最初に触ったものを大事に持っていなさい。』って言ったんじゃがのう。」
「交換はなしか?」
「ああ、貴族の娘とくっつけてやろうと思ったんじゃ。それが、自分が着とった『わらみの』のわらを拾ってのう。あせったが、うまくやったもんじゃ。」
「それ、観音様のおかげじゃないんか。」
「ああ、わしは縁結びが、専門じゃ。」
「おお、縁結び、わんちゃんか。おらそれがいい。」
「よしよし、それでは明日、本堂で参って、門から出て、最初に触ったものを大切にするんじゃぞ。」
というわけで、又八は、よく朝、喜んで寺にむかったそうな。
【ごきょうくん】
おじいさんとのやくそくだよ。
観音様のお告げは守ろうぜ。
本当にありそうなお土産