目立ちたくない
そうして、葉蔵と魔物の戦いが始まった。
「おまえ、つよい」
「うわ!マジがこいつ魔物のくせにしゃべりやがった」
階級が上がれば上がるほど知能も発達するのだろう。そいつはぎこちない言葉をしゃべり始めた。
そうして、葉蔵と魔物のハイレベルな殴り合いが始まった。
両者の拳がぶつかり続け、どちらも一発もまともな攻撃を食らっていなく。勝負が尽きそうになかった。
「めちゃくちゃ強えぇな!」
「しょうぶ、つかない」
魔物はそう言うと、少し下がって詠唱を唱え始めた。
「マジか!?詠唱付き魔術も使えんのかよ!?どこで本を拾ったんだよ!!」
「神に願う。我が道を遮る者に正義の鉄槌を、グレヴォ」
「それはやばい!?」
魔物が詠唱を唱え終わると、葉蔵の魔力がどんどん魔物に吸い取られていく。
「チッ!詠唱は禁止してたのに!使うしかないか!」
「神に願う。我が道を遮る者に悪なる鉄槌を、スパオ」
その瞬間、魔物の体がどんどん部品が外れたかのように壊れていく。
腕はおもちゃのように取れ、血が吹き出る。
だが、魔物はそれでもなお、再生し葉蔵に魔力弾を打つ。
葉蔵はそれを難なく避け、魔物に接近し、新たに詠唱を唱え始めた。
「神に願う。我が道を遮る者に悪魔なる鉄槌を!インテルフィケレ!!」
葉蔵がそう言うと、魔物は魂が抜けたように、その場に倒れた。
「はぁー!はぁー!ちょっとえぐい魔術を使いすぎたか」
「2段なんて久しぶりに戦ったよ」
「さらに、詠唱解禁したから楽しくなっちゃって、インテルフィケレ使っちゃったよ」
「これはもう、三日は魔術使えないわ」
「とてもすごい戦いだったな」
「ああ、ありがとう、イカシス」
「イカシスも戦えばよかったのに」
「全く釣れないやつだよ」
その後、魔物の死体をお金に変換しに行った。
「あの、魔物討伐してきたんですけど」
「何を討伐されたんですか?」
「一応2段のやつを」
「いやいや、冗談はよしてしてくださいよ」
「いえ、本当です!」
葉蔵はそう言いながらドヤ顔で2段の魔物の死体を置いた。
「嘘!?2段を討伐したんですか!?」
そう言って、その従業員のような人は裏に行って誰かを呼びに行った。
そうして、裏から慌てたおっさんが出てきた。
「き、きみたちが2段を倒したって!?」
「いや、僕は何もしてない」
「凄すぎるよ!これは国に連絡だ!」
「え!?まじで!?」
「そんな大事になっちゃうのこれ!?」
どうやら、葉蔵も2段をお金に交換するのは初めてのようだ。
「ちょっとそれは困るわ!」
「え?なんでですか!?もしかしたら歴史に残る人物になるかもしれませんよ!?」
「とにかくやめてくれ!それならこの死体は捨てておく」
「そんな、なんですか!?」
「とにかくやめろ!そして他言するな。すれば殺す」
「そ、そんな〜」
「わかりました。討伐主がそういうのであれば…」
そうして、僕たちは、一級と三級の魔物の死体をお金に替え、家に帰った。
「よかったのか葉蔵?歴史に残れるかもしれなかったんだぞ」
「お前だって嫌だろ?」
「まあな」
「あまり目立ちたくないんだよ俺も」
そして僕たちは少し早めに寝た。