試験(2)
なんて言うか、楽しいかも。
「君から魔力を吸い取ったら、どうなっちゃうかな!」
「神に願う。我が道を遮る者に悪の鉄槌を、グレヴォ」
ゼーンがそう言うと、僕の魔力が吸い取られた。
「うっ! なんだ、この魔力濃度は!」
「くは!! 体がはち切れそうだ!!」
「ふー、あのまま吸い取り続けてたら爆発してたよ」
「君、魔力の塊だね! とても人間だとは思えない! 君が本気で魔力は圧縮して解放したら世界が滅ぶんじゃないかな?」
「安心しろ、そんなことはしない」
「まぁいいさ、君がどれだけ強だろうと、私は戦い続ける」
ゼーンがそう言った時、どこからか声が聞こえてきた。
「ゼーンさーん!!」
「ん? 君はさっきの生徒か」
「はい、ゼーンさんにあの攻撃をされて、正直心が折れました」
「でも、ここでもし諦めたら俺はもうこれ以上成長できないと思ったんです! だからまた戻ってきました! 続きお願いします!」
まさかあそこから追いかけてくるとは…この状況見られると少し怪しまれる可能性がある。
ここは、何か言っておくか。
「助かったよ、今ちょうど葉蔵とゼーンが戦ってて、僕もその巻き添え食らいそうになってて死ぬかと思ったよ」
「それは災難だったな! 葉蔵とやらはゼーンさんと渡り合うレベルの実力派だからな! 俺たちみたいな普通の生徒が近くにいれば巻き添えでやられちまうからな!」
「そうか、これで終わりか…なかなかに楽しかったよ。またいつか再戦しよう」
「え? どういうことですか?」
「いや、君には関係ないよ。ただの独り言さ! 続きやりたいんだって? かかってきなよ!」
僕は誰にも聞こえないような小声でつぶやく。
「僕もなかなかに楽しかったよ」
2
そうしてゲームは生徒側の完敗で終わり。
僕と葉蔵は、2人で家に向かって歩いていた。
「ゼーンの野郎、サイコパスすぎだろ!」
葉蔵が、ゼーンの愚痴を僕に向かって言ってくる。
「僕には君もかなり残虐な人間に見えるけどね」
「お前ほどじゃないだろ! お前、自殺したり、大量殺人したり、やってることが人間じゃねーんだよ!!」
「別に普通のことだ。僕からしたらいちいち人助けをする奴らとかの方が、とても思考が理解できないようなやばい奴だ」
「人助けをして何の感情を得ているんだろうか? 想像つくがそれは想像に過ぎない。明確な答えがわからないな?」
「まぁ、知りたいとも思わないがな」
「やっぱりお前よくわかんない奴だな!」
「どういう思考回路してんのかこっちが聞きたいわ!」
そうして僕たちは、そんなたわいもない会話をしながら、家へ向かった。




