僕は感情を知らない
僕はなぜか殴られていた。いつもそうだ。僕はかなり感情が薄い。
殴られ蹴られようが悪口を言われようが何も感じない。一見、何も感じないのは楽そうに見えるが、とても辛い。
ただただ辛いと感じる。そういう意味では何も感じないわけでもないかもしれない。
その時、僕はナイフで刺されていた。理由もわからない。
僕から血が流れている。もちろん痛いし辛い、だがそれは恐怖へとは至らない。
僕は倒れた。死ぬんだなと思った。でもそれですらどうでもよかった…
2
ーー僕は転生した。
そこは魔法のある世界だった。自分が転生したことに気づいたのは、物心ついた頃だった。
赤ちゃんの頃は、脳が小さいからか何も考えていなかったので自分が転生していることにすら気づかなかったようだ。
親は優しい人だった。父親はコルス・サルバート、母親は、ニーシャ・サルバート、どっちもとても変わった名前だ。
まぁ僕も人のこと言えないけど。僕の名はイカシス・サルバート
まぁとりあえず日本人の名前では無い。
「おい、イカシス!剣の訓練の時間だぞ」
「はい、今行きます。お父様」
別にこの世界に魔法があるとはいえど父親も母親も別に、魔法が得意なわけではない。
だから、魔物から身を守るためにある程度、剣の特訓をやらされている。
剣に関しても別に才能は無い。まず本気を出したことがない。出さないのではなく出せないのだ。
人が自分の利益にならないことをするのは不可能だ。
なぜ不可能だと言い切れるかと言うと、例えば、1つボタンがあるとしよう。それを押すと自分の大切な人が死ぬ。
でもそれを押さなければ自分が死ぬ。だからボタンを押さない。
これは一見、利益やらないことをやっているように見えるがそれは違う。
自分は人を助けた。自分は素晴らしい人だ。それ以外にも今存在している言葉では、表せないような感情、そういうものが溢れてくる。
まぁ簡単に言うのならば幸せだ。結局はそこで幸せを得る。そのために死ぬのだ。
他にもシンプルにその人が死んだら悲しいからその悲しみを避けるために自分が死んだり。
利益がないことをできるのは何も感じることができなくて何も考えることができないそんな人だけだ。
ともかく人は自分の利益にならないことはできない。これだけはすべての人が覚えておいて欲しい。
本題に戻るが僕にとって本気を出すと言うのは何かを感じるということだ。
僕だって辛い、悲しい、楽しい、いろいろな感情を感じるが何か行動を起こそうと思うほど感情を感じた事は無い。
辛いけどまぁいいか。悲しいけどまぁいいか。そんな僕にとって本気出す事はかなり難しい。
本気を出す。何かの感情などを得たいと思う。つまり幸せを得たいと思う。
僕は幸せを得たいと思った事は無い。感情を感じにくい僕にとって、本気を出すと言う事は何か行動起こすほどの感情を感じないといけない。
死ぬ間際ですら抵抗しない僕が、どうやって自分を動かすほどの感情を感じるのか自分でもわからないのだ。
だがここで矛盾が生まれる。僕は自分を動かすほどの感情を感じてみたいと思っているのだ。
幸せを得たいと思った事は無いと言ったが、僕は感情を感じてみたいと思っている。
それは幸せになりたいと同じ意味なのでは?つまり僕は嘘をついたのかもしれない。
まぁここら辺でもう終わっておこう。
だから僕は感情を感じるために、少しこの異世界で行動してみようと思う。
ちなみに、一話で言うことでは無いのですが、この物語は完全版を出しています。なのでこれではなく完全版を見たほうがいいかもしれません! 作者本人が、一話で続きは見ないほうがいいって言うのは確実におかしいですけど、多分完全版の方を見たほうがいいです。