第4話 『新しいスマートフォン』(アフターストーリー)
翌日。
雨子は、割れたスマートフォンを小さなタオルで包んで、ショップのカウンターにいた。
受付のスタッフが、画面を見て少し目を見開いた。
「……うわ、大きくいきましたね……痛いですねこれ」
「……はい……昨日の、夜です……」
事情を話すと、スタッフは手慣れた様子で操作を進め、すぐにこう言った。
「大丈夫ですよ。端末補償、入ってますね。自己負担少しだけで、新しい本体と交換できます」
――その瞬間、雨子の目にふわっと光が戻った。
「……ほんと、ですか……?」
「はい。ここにサインしてもらえれば、2~3日で届きます。データも移行できますし、大丈夫ですよ」
雨子は、そっと胸に手を当てた。
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数日後、新しいスマホが届いた。今度こそ、しっかりと保護フィルムとケースも装着済み。それこそ落とさないように丁寧に入念に。
画面を見つめながら、雨子は小さく微笑む。
「……保険、入ってて、よかったです……ほんとに……」
新品のスマホの画面には、あの日撮った桜の写真。割れていないその美しさが、今はまぶしくて仕方なかった。