表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時空の羽  作者: 夢宇希宇
9/48

第8話

父の会社に入るには、まず、この守衛所で入門許可証をもらわなければならない。


ここでも異変に気付いた。


守衛所の外に警察官が一人、立っていたからである。


俺は、その警察官に気付かないふりをして、いつものように守衛さんにガラス越しに話しかけた。


「こんにちは、工藤健一郎の息子の海人です。父に着替えと食事を持ってきたのですが、パスの発行をお願いします」


守衛さんは、少し緊張しているみたいで、いつもと異なった返事をしてきた。


「確認を取りますので、お待ち下さい」


50歳くらいであろうか。


守衛さんは、急いで内線の電話を取り、誰かと話をしているようだ。


そして、俺の車を覗き込むように答えを告げる。


「お二人ですね。パスを発行しますので、会社入口の受付で、IDカードを受け取って下さい」


「ありがとうございます」


守衛さんにパスを二枚もらい俺は車へと戻った。


車に戻り、桜ちゃんにパスを渡し、こう説明した。


「このパスを首からかけてね。それから、会社の受付でIDカードをもらうから、それで中に入れよ」


桜ちゃんは、今までの不安感を吐き出すように俺に話しかけてくる。


「海人君、お父さんの会社って、いつもこうなの?。警察の人もいるし、あの車は自衛隊でしょう?」


ある程度予想出来た疑問である。


「実は、俺も会社の近くで警察や自衛隊の車を見るのは、初めてなんだ」


自分でも少しの不安がある。


桜ちゃんは、目をパチパチさせて、話しを続ける。


「何かあったのかしら?、大丈夫なのかなぁ」


桜ちゃんの心配を取り除こうと、俺は桜ちゃんに説明した。


「パスをもらったからね。見たところ、それ以外は何もないから大丈夫だよ。車を会社の駐車場に停めるからね」


俺は会社の門の前へと車を近づける。


閉まっていた門は開いて、車を会社の駐車場へと車を停めた。


駐車場から少し歩くと、会社の入口が見えてきた。


ここは普段通りである。


安心して社内に入り、受付でIDカードをもらおうと、受付にいる女性に話しかけた。


「こんにちは、工藤健一郎の息子の海人です。父に着替えと食事を持ってきたので、IDカードの発行をお願いします」


受付の女性は困惑の表情を浮かべている。


そして、内線電話をかけながら、「少々お待ち下さい」と俺たちに返事を返した。


どうやら、父と直接話しをしているようである。



もし、この会話を聞ける者がいるとすれば、こんな内容だ。


「所長、息子さんとお嬢さんがいらっしゃってますが、IDカードの発行はどうしたらいいでしょうか?」


「ああ、海人と桜ちゃんだな。聞いているぞ。カードを発行して通したまえ」


「しかし、所長は現在、レベル5にいらっしゃってますが、どのレベルのカードを発行いたしましょう?」


「レベル5でかまわんよ」


「所長、しかし、レベル5のカードは一般の方に発行するのは危険だと思いますが」


「私がいいと言っておるのだ。早く、カードを発行したまえ。それとも、私にそこまで行けと命じるつもりなのか?」


「申し訳ございません。ただちに、レベル5のカードを発行いたします」



話しが終わったようである。


受付の女性は受話器を置き、俺たちにカードの発行とそれについての注意点を説明し始めた。


「このカードは、レベル5のIDカードになります。そして、このカードがあれば、会社内の全ての鍵となります」


そして、付け加えた。


「所長のいらっしゃる場所は、そのレベル5にあたりますので、そちらのエレベーターで地下5階の特殊開発ルームへお入り下さい」


不満そうに説明を終える。


「ありがとうございます」


俺は軽く会釈をして、2枚のIDカードを受け取り、1枚を桜ちゃんに渡した。


おかしい。


今までは、レベル4のカードをもらい、地下4階には行ったことがある。


しかし、地下5階の存在には気付かなかった。


疑問と不安が脳裏をかすめたが、桜ちゃんに心配はさせられない。


「じゃあ、行こうか」


桜ちゃんに話しかけ、地下へと続く、エレベーターへとその歩みを進めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ