表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時空の羽  作者: 夢宇希宇
7/48

第6話

母と桜ちゃんが料理の後片付けをを済ませたのは2時30分くらいだった。


本当は母一人でする予定だったのだが、桜ちゃんが私もと志願してくれていた。


「じゃあ、お二人には、3時のティータイムが終わったら、お父さんの会社に行ってもらおうかな」


母はこう付け加えることを忘れなかった。


「ゆっくりでいいのよ。桜ちゃんには、その間に海人の面白いエピソードをたくさん聞いてもらいたいから」


冗談ではない。


俺は自分の顔が赤くなっているのではないかと心配になる。


「冗談よ」


母は笑いながら、桜ちゃんにウインクしている。


絶対に言うつもりだ。


紅茶とクッキーを持ってきた母が、桜ちゃんにこう切り出した。


「あのね。海人が小学6年生の頃だけどね。高校生と喧嘩してきたことがあるのよ」


あの話かぁ。


俺も覚えている。


確かこうだ。


小学6年生の時、俺が友達と公園で野球をしていた時のこと。


そこに割り込むように入ってきた、高校生らしき男6人組。


俺たちを脅すように公園から、追い出そうとしていた。


「おらおら、ガギども、これからこの公園は俺たちが使うんだ。とっとと出て行きな」


小学生である弱者に対する態度。


俺は許せなく、怒りが体を支配してしまったようだ。


「今、俺たち使っているんだけど、何でどかないといけないの」


高校生たちは笑うように言う。


「ガキは大人の言うことを聞いていればいいんだよ」


一人の高校生が俺の胸の辺りをつかんだ。


「おら、どきな」


その瞬間である。


その男は大きな円を描いて宙を舞い、背中から地面に落ちた。


空気投げ。


他の男たちは予想外の出来事に何かわめいている。


そして、残り5人の男たちが俺につかみかかろうと手を伸ばしてきた。


結果は同じだった。


5人が次々に大きく宙を舞い、地面に叩きつけられていた。


そして、俺は自分の運の悪さを疑うことになる。


ちょうど、その時、警察官が自転車で巡回中で、その現場を目撃していたからだ。


男たちは上手く逃げ出していたが、俺には逃げる理由がないので、交番で連絡を受け飛んできた祖母に説教をされることになった。


祖母は拳で軽く俺の頭を叩き、「よくやった」と褒めてくれたのを今でも覚えている。


その話を母が桜ちゃんに話し終えた後に桜ちゃんはビックリして俺に話しかけてきた。


「海人君って、子供の頃から強かったんだね」


これが、俺の子供の頃の武勇伝である。


話の終わりと紅茶を飲み終えた母は、タイミングを計ったかのように切り出してきた。


「じゃあ、今回のお話しはここまでで、また次の時にもっと面白いお話しするからね」


「海人、桜ちゃん、悪いけど、お父さんの着替えとお弁当、お願いね」


そう言って、いつの間にか作っていた、弁当と着替えの入ったバッグを俺に差し出した。


「はいはい、わかりましたよ」


俺はバッグを受け取り、桜ちゃんに声をかける。


「じゃあ、桜ちゃん。悪いけど、一緒に行こうか」


桜ちゃんは「うん」とうなずき、


「海人君のお父さんとお話しするの楽しみ」


目を輝かせながら、椅子から立ち上がった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ