第4話
映画館は、今、流行のシネマコンプレックスだ。
観たい映画は多くあるが、桜ちゃんと話し合っているので観る映画は決まっている。
あらかじめ、予約を入れておいたのは言うまでもない。
上映30分前なので、丁度いい具合に映画を観ることが出来た。
映画の内容はと言うと。
幼き頃に離れ離れになった、母と子が感動の再会を果たすというものである。
桜ちゃんはというと、少し目をウルウルさせていて、今にも泣き出しそうだった。
そんな桜ちゃんを見て、俺は心から彼女を可愛いと思った。
映画を観終わると二人で、お気に入りの喫茶店に入るのがいつもなのである。
この店は、時間がゆっくりと流れるようなひと時が味わえるので、二人のお気に入りなのだ。
映画の話しを少しすると桜ちゃんから意外な言葉が出てきた。
「海人君、明日も一緒にいられる?」
俺は勿論とうなずくと次の言葉も更に意外な言葉だった。
「明日ね、海人君のお家に行きたいな。私、海人君のお母さんもお父さんも好きだからダメかな?」
断れるはずがない。
「大歓迎だけど、あんな、母さんや父さんがいいの?」
桜ちゃんがクスッと笑い答える。
「うん、優しいし面白いから。ゆっくり、お話ししたかったの」
俺はあるアイデアを思い浮かべ、携帯電話を手にする。
電話先は自宅だ。
電話には母が出た。
「もしもし、母さん。明日、桜ちゃんが家に来るけど、昼ご飯を一緒に食べたいんだ」
元気な声が帰ってきた。
「桜ちゃんかい?、大歓迎よ。母さん自慢の料理を作って待ってるって、桜ちゃんに伝えてね」
俺は桜ちゃんに指でO.Kとサインをして電話を切った。
そして、桜ちゃんに予定と時間を伝える。
「じゃあ、途中まで送って行くね」
桜ちゃんは嬉しそうに言葉を返してくれた。
「うん、明日楽しみ・・・楽しみにしててね」
『楽しみにしててね』、俺はあえて聞かなかったが、桜ちゃんは何か考えがあるみたいだ。
俺は桜ちゃんを地下鉄の改札口まで、見送り、明日の予定が決まった。