第43話
残り1体になって、シャフトの様子が変わった。
正確に言うと、新たにその姿を変えたのである。
それは、1mくらいのガマガエルであった。
「グゲ、オマエゴトキニ、ヤラレルトハ、バルディサマニナントオワビヲシタライイノカ。シカシ、コノセカイハ、ワレワレノモノダ。オマエゴトキ、バルディサマノアシモトニモオヨバヌ」
「海人、こ奴の言うのは本当のようじゃ。お前がバルディに敵わぬということ以外はな」
「ナナカミ、どういうことなんだ?」
ナナカミは何かを感じているらしい。
「海人、この世界にはバルディの魔力が未だに残っておる。そして、その力の中心は・・・こいつだ。このガマガエルに強い力を感じる。海人、確かバルディは球に魔法をかけておったな。どうやら、こ奴がその球を飲み込んでいるようじゃ」
確かに、バルディは球・・・透明な水晶玉みたいなものに魔法をかけていた。
それが、シャフト・・・このガマガエルの中にあるだって?。
「海人、こ奴の口から手を突っ込み、その球を取り出してみるといい」
「ナ、ナナカミ、何言ってるんだよ。その手には乗らないよ。うっ」
「海人、お前さん、実は・・・カエルが苦手なようじゃな。先程から、頬が引きつっておるし、態度が変じゃ」
バレた?。
俺が唯一苦手とする「カエル」の存在をナナカミに知られてしまった。
「海人、早く球を取り出し、この国を解放せねばならぬ。そして、こ奴をロケットに封じることを忘れるではないぞ」
どうやら、ナナカミは俺の弱点を知り、楽しんでいるようだ。
「ナナカミ、球はこのままナナカミで打ち砕くことにするよ。ロケットへの封印は・・・ナナカミがやってくれないかい?」
「情けない。一まず、球を打ち砕くのは手伝ってやろう。しかし、ロケットへの封印は、海人、お前さんにしか出来ぬぞ。手じゃ。素手でこ奴を封じるのじゃ」
ナナカミは完全に楽しんでいる。
俺はナナカミに気を送り、このガマガエルの球があるところ目掛け、思いっきり、斬りつけた。
「グゲェェェェ!」
ガマガエルが絶叫している。
その声と手に伝わった感触が俺の背筋を凍らせた。
ガマガエルの口から球が飛び出し、空中で砕け散る。
「よかろう。次はロケットに封じるのじゃ。素手でな」
くっ!。
「海人、どうした?。顔色が悪いぞ」
意識が集中出来ない。
あのガマガエルを素手で掴むのか?。
「海人、急げ!」
ナナカミが・・・絶対に楽しんでいるであろう声をかけてくる。
仕方ない。
全ては桜ちゃんのためだ。
俺はロケットを開き、意識を集中させた。
出来た!。
ロケットの鏡は波紋を見せている。
ガマガエルの首の辺りを掴む。
「グゲェェ!」
「うっ!」
ガマガエルの鳴き声で集中が切れると思ったが、思いっきりガマガエルを持ち上げ、ロケットの中へ放り込んだ。
「グゲゲゲゲェェ!」
ガマガエルは悲鳴ともとれる鳴き声を発しながら、ロケットに吸い込まれた。
俺は急いでロケットを閉じた。
どうやら、成功したらしい。
「海人さん、災難でしたね。そして、ありがとうございました」
そう言い、俺に話しかけてきたのは、ダラスであった。