第41話
その時である。
20000人と言われるバルディの軍団が動いた。
いや、動いたというのは今回は当てはまらない。
正確には、俺の目の前で重なり始めたのである。
俺はこの意外な展開でバルディを見失っていた。
軍団は次々に重なり、今は1体・・・1人となった。
そして、それは俺の姿を映した。
「バルディ様、こいつがバルディ様の対となる男なのですか?。まだ子供のように見えますが」
「シャフトよ、油断するではない。奴は既にオーベルを倒しておる。ワシがこの無限に広がる世界で、唯一認める敵。そう、宿敵じゃ。奴がおる限り、ワシの野望は叶うまい」
「失礼いたしました。俺とオーベルとの違いはバルディ様もわかって下さいますね。今回のこの世界の征服に俺を選んで下さったのは、俺の実力を知ってのことだと思います」
シャフトと呼ばれる「俺」がバルディと会話している。
何という不思議で不愉快な気分なのだろう。
「小僧、種を明かしてやろう。このシャフトは、20000の分身を持っておる。それが本来の1体になればどうなるかわかるか?。その力、姿を映した者の20000倍となろう」
20000倍?。
俺の力の20000倍だって?。
俺はそれと戦わなくてはならないのか。
「シャフト、ワシはこの球に魔法をかけておく。ワシが去っても、この世界はワシらのものだ。次の手を打たなくてはならん。ここは任せる。先に行くぞ」
「かしこまりました。こいつの相手は俺1人で十分過ぎます。バルディ様もご存知ですね」
「よろしい」
パチン!。
バルディが指を鳴らすと、バルディはその場から姿を消した。
「おい!、お前の相手はこの俺だ。10秒だ。それで決着をつけてやる」
「海人、お前は1人ではない。ワシがおる。2対20000か。丁度良い数じゃ。恐れることはない。所詮、相手は人まねじゃ。数で負けるような戦いはすまいぞ」
ナナカミの声で我に返った。
そうだ。
俺は1人ではない。
ナナカミがいる。
負けられない。
桜ちゃんを助け出さなければならない。
「ナナカミ、行くよ」
「おう、任せておけ」
その時である。
どうやら、シャフトが俺とナナカミの会話を聞いていたようだ。
「ほう、面白いものを持っているな」
そう言い、剣を抜いた。
その剣はナナカミとは違い、真っ黒な色をしていた。
「おい、お前話せるんだろ。話してみせろよ」
シャフトが剣に話しかけている。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうした?。俺はお前のご主人様だぞ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「ちっ、使えねえなぁ。まあいい。これであの小僧の心臓を一突きにしてやる」
シャフトが戦闘態勢に入る。
俺とナナカミも戦闘態勢に入った。