第39話
ピンと張り詰めた空気が部屋に充満している。
事は重大だ。
「ダラスさん、バルディの居場所がわかりますか?。バルディを倒せばこの状況は解決出来ると思います」
ダラスの指が地図の中心より、やや上を指した。
「たぶん、ここでしょう。ここはこの国の中心となる建物が集まっています。バルディは・・・たぶんここです。この国の政治を行う「スライセンター」があります。スライセンターからはこの国だけではなく、世界中の様子を監視することが出来ます。この国の衛星軌道上にある、監視衛星兼軍事衛星でこの世界の秩序を保っています。7基あり、いつからついたのか「7輪の首飾り」と呼ばれている衛星です」
衛星だって?。
この世界はここまで文明が発達しているのか。
少しの驚きが俺を襲った。
しかし、ここで歩みを止めてはいけない。
俺はダラスにある提案をした。
「ダラスさん、バルディの軍団とこの国の軍隊はバルディの魔力により操られていると思います。バルディです。バルディさえ倒せば、この世界に秩序と平和が戻って来るはずです。俺の提案はこれです」
俺はこの国に散らばっているレジスタンスの配置に注目した。
「軍隊を動かしましょう。バルディのいるスライセンターまでの道を空けるのです。この地図を見るとレジスタンスはスライセンターを囲むように配置されていますね。レジスタンスの皆さんには、軍隊を動かすためにちょっとした暴動を起こしてもらいます。軍隊は征伐に来るでしょう。その間に俺はこの下水道を使い、スライセンターの前にあるこの下水道の出口から進入します。レジスタンスの皆さんには、軍隊が動いたらすぐに逃げてもらいます。それと一番大切なことがあります。暴動は同時刻に行わなければなりません。レジスタンスの皆さんには連絡は取れるのでしょうか?」
ダラスが自慢げにある装置を指差した。
「これで全てのレジスタンスのメンバーと連絡が取れます。原始的な装置と暗号化により、情報が漏れることはありません」
無線機らしきものが見える。
どうやら、モールス信号で連絡を取るつもりのようだ。
「海人さん、時を急ぎます。今夜決行でもよろしいでしょうか」
俺も同じである。
ダラスの提案に乗ることにした。
「では、今夜、今から3時間後になりますが、メンバーに動いてもらいます。少しお待ち下さい」
ダラスはそう言うと、無線機でモールス信号らしきものを打ち始めた。
「終わりました。海人さん、時間までお食事でもいかがですか?」
そうだった。
俺は時空の鏡に入ってから、一切食事をしていない。
ダラスに言われ、急に食欲が湧いてきた。
「助かります」
そう言うと、ダラスがスープの入った器とパン、チーズらしきものを持って来てくれた。
「どうぞこちらをお召し上がり下さい。戦時下故に、豪華とは行きませんが」
「ありがとうございます」
俺はダラスから食事を受け取ると、久しぶりの食事を取った。
食べながら考えた。
バルディはいるのであろうか。
そして、作戦は上手く行くのか。
俺には3時間が無限のように感じられた。
「海人さん、時間です。私が途中までご案内します」
俺はダラスの言葉を聞き、決意を固めた。