第34話
ガイツの国へ戻って来た。
急いで王の間へと向かう。
「サイラさん、ディードさん。バルディの城には行った。正確には入った。しかし、手掛かりになるようなものは見付からなかった。しかも、バルディに俺の正体を・・・先読みされていたみたいだった。そして・・・俺の大切な人、桜ちゃんはバルディと共にいた」
「そうでしたか。バルディは強大な魔法使いです。しかも、策略に長けています。海人さん、一度、出直した方が良さそうですね。あなたには多くの仲間がいるはずです。どうか、焦らないで下さい」
サイラの言葉が今の俺には温かかった。
ナナカミに相談してみる。
「ナナカミ、一度、次元の間に戻ろうと思う。ランスゥにこのことを話す必要がありそうだ」
「そうじゃな。ここにバルディがいないのであれば、ここにいる必要もあるまい。次元の間に戻ろうぞ」
行動が決まった。
「サイラさん、ディードさん。短い間でしたが、お世話になりました。急ぎなので俺たちは出直します」
ディードが優しく話しかけてくれた。
「海人さん、焦らないで下さいね。白の魔法使いのあなたの使命は大きい・・・。他の誰にも想像出来ないような試練が待っているかもしれません。しかし、私は、いえ、私たちは信じていますよ。海人さんがバルディを倒すことを」
「では、失礼します」
俺はそう言い、城を後に鏡のある教会へ向かうことにした。
「お待ち下さい」
ディードが俺に話しかけて来た。
「おまじないを・・・何かの役に立つと思います。私にさせて下さい」
そう言うと、ディードの左手から、一筋の光が俺の左手に当たり、何かが吸い込まれたようだ。
「終わりました。それでは少しのお別れです」
???。
「ありがとうございます」
何と言っていいのかわからなかったので、そんな言葉が俺の口から出た。
教会の鏡へと向かう。
途中、今までと違い、変化があるのがわかった。
俺に会う人皆が俺に頭を下げ、目をキラキラさせているからだ。
どうやら、俺が白の魔法使いだということは国中に広まっているらしい。
先を急ぐ。
見付けた。
あの教会だ。
教会の前には多くの人が俺を待っているかのようにそれを囲んでいた。
これでは中に入れない。
「すいません、通して下さい」
そう言うと、人並みが割れるように道が出来た。
教会の扉を開ける。
・・・・・・・・・。
良かった。
教会の中に人はいないようだ。
鏡・・・・・・。
あった!。
俺は鏡に意識を集中させる。
両目には赤い羽が浮かび上がる。
鏡は輝きを取り戻し俺を映した。
俺は何の迷いもなく、鏡の中へ入った。