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時空の羽  作者: 夢宇希宇
31/48

第30話

「人さらーい!」


「誘拐魔ー!」


ポフッ。


男と言っていいのだろうか、それとも人間と言っていいのだろうか。


その音は男の顔面に枕が命中した音であった。


投げたのは、男を批判していた女性。


今は天蓋のベッドに座り込んで、男を睨みつけている。


2人の関係は?。


女性の容姿は、まだ完全な女性になりきっていない、可愛さの残った美しい女性だ。


男の方は・・・カメ?。


まるまると太り、首と頭の境目がわからない。


身長は1.5mくらいであろうか、低めである。


何とか人間に見える。


「お嬢様、それに着替えて頂かないと私めが旦那様に叱責されてしまいます。どうかお召しになって下さい」


女性からは反発の声が返って来た。


「何で私がこんなのを着なければならないのよ。それに私を早く元の世界に帰しなさい。カメ男」


「カメ男ではありませんぞ。私にも一応名前があります。ガスキュールとお呼び下さい」


「何がガスキュールよ!。カメ男のくせに偉そうな名前ね。誘拐魔には『カメオ』で十分よ」


女性の更に強い反発の声が帰って来た。


男の反応は・・・。


「・・・、お~い、おい、おい。お、お嬢様、お願いします。どうかお着替えを」


泣き出してしまった。


「もう、泣かないでよ。大人でしょ。それにこの服は私には大き過ぎるわ」


ガスキュールが涙を拭きながら必死に答える。


「お嬢様、この服は、神獣ムーシファの毛により編まれております。さすれば、着た人のサイズに変化するという優れものでございます」


「う~ん、泣かれたんじゃねぇ」


女性は少し迷っているようである。


「じゃあ、着替えるから、部屋から出て行ってちょうだい」


女性の心は決まったようだ。


「かしこまりました。まことにありがとうございます」


そう言うと、ガスキュールは部屋から出て行った。


「仕方ないなぁ。これを糸口に元の世界に戻るチャンスもあるかもしれないから・・・」


そう言いながら、女性は着替え始めた。


15分くらい経ったであろうか。


「カメオ、入っていいわよ」


女性がガスキュールを部屋に招きいれた。


「おお、何とお美しい。これで私も旦那様に叱責されることもありますまい。お嬢様、ありがとうございました」


確かに女性は美しい。


それが本人の資質なのか、服によるものかどちらであろう。


服は見事な淡いブルーのドレスであった。


その時である。


ドアがノックされた。


ドアが開く。


ドアからは、2m近い大男が入って来た。


「この人さらい、誘拐魔!」


ポフッ。


今日、2度目であろう。


女性の投げた枕が入って来た男の顔面に命中した。


「ああ、バルディ様、何ということでしょう」


ガスキュールはうろたえている。


「まあ、よい」


バルディと呼ばれた男は軽く受け流した。


そして、一言、言い放った。


「おお、見事じゃ。予想以上の美しさじゃぞ、桜姫」

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