第27話
女性の言う城、そう、真っ白な城は歩いて15分くらいのところにあった。
正確に言えば、城門の前である。
城門の前には、槍を手にして、守衛が門を挟むように立っている。
何をしたらいいのかわからないので、門の右手にいる守衛に話しかけた。
「あの、すみません。この国は初めてで何もわからないのですが、職業登録をした方が良いと聞きました。何かご存知ですか?」
守衛は、少し緊張を解いて、俺の問いに答えてくれた。
「ああ、旅人さんですね。ようこそ、ジャガの国へ。職業登録でしたら、あの建物の中へお入り下さい。」
そう言って、左手の2階建てであろう。
少し大きめな建物を指差した。
「ありがとうございます」
何と言っていいのかわからなかったので、とりあえず、礼を述べた。
そして、その建物へと歩みを進めた。
建物のドアをノックしてみる。
「どうぞ」
若者ではない。
年配の女性らしき声が返って来た。
俺はドアを開けて中へ入った。
中は広かった。
壁には棚があり、そのほとんどを書物が埋めている。
そして、部屋の中央に少し長めのテーブルと椅子があった。
テーブルには、真ん中に声の主であろう老婆、その老婆を挟んで老人が座っていた。
その老婆が説明を始めようとしていた。
「旅人さん、ようこそ、ジャガの国へ。これから話すことは、この国に滞在、住む者の決まりで、皆さん、何かの職業に就いているのですよ。まずは、名前をお聞きしましょうかね。その前に、私の前の椅子へどうぞ」
俺は、勧められた椅子に座り、断る理由もないので名乗った。
「海人、藤木海人と言います」
老婆がニッコリして話を進めた。
「海人さんですね。この国では珍しい名前で、良い響きです。では、これから、職業決めの段取りを説明します。海人さん、このテーブルの上に水晶玉があります。そこに手を当てるだけで、結構です」
確かに、テーブルの上には水晶玉がある。
決まりか知らないが、何故、俺がそんなことをしなくてはならないんだ。
バルディを見付け、桜ちゃんを助け出さなければならない。
ナナカミがそんな俺の焦りを見抜いたかのように、小声でささやく。
「海人、ここは、郷に入れば郷に従えじゃ。目的はその後でもよかろう」
・・・・・・。
仕方ない。
ナナカミにまで言われては、そうするしかないか。
俺は意を決し、水晶玉に手を当てた。
水晶玉が淡く光り、その中にある映像を作ろうとしていた。
その映像とは、始めは白い煙みたいであったが、徐々にあるカタチを形成した。
これは?。
俺の驚きを他所に老人たちの驚きは更に大きいものだった。
「これは珍しい。何ということじゃ。こんなことがあるのか」
真ん中の老婆が驚きを口にする。
そう言って、周りの本棚の本を探し始めた。
そして、1冊の本を見付け、取り出す。
「パン屋じゃ」
言ったのは、右側の老人である。
「何をボケとるんじゃ、爺さん。白の魔法使いじゃ。これは初めて見るぞ」
ん?。
白の魔法使い?。
俺のことか?。
老婆が驚きを隠さず、俺に話しかけて来た。
「海人さん、あなたの職業は魔法使いです。しかも、白の魔法使い。白の魔法使いが現れたのは、私の記憶によれば、300年も以前のこと。海人さん、どうか、この国の国王の話を聞いて下さいませ」
俺が白の魔法使い?。
何のことかわからない。
老人たちは、立ち上がって、俺が国王に面会するのを期待しているのがわかる。
仕方ない。
俺は、椅子から立ち上がった。
ナナカミではないが、郷に入れば郷に従えだ。