第25話
次元の間だ。
俺とナナカミは帰って来た。
ランスゥにいち早く話しかけた。
「ランスゥ、バルディはいなかった。その代わりに、バルディの配下を1人、ロケットに閉じ込めたよ」
ランスゥが手を差し伸べて来る。
「海人、ロケットをワシに見せてくれぬか」
俺は、オーベルを閉じ込めたロケットをランスゥに渡した。
ランスゥは、俺から受け取り、それを開いた。
「おおっ、こ奴はバルディの配下のオーベルじゃな。知っておるぞ。どうやら、バルディの復活と共に奴の配下も復活したらしい。海人、少し面倒なことになってきそうじゃ」
配下だって?。
バルディの行方もつかめないのに、配下がいるのか?。
「ランスゥ、バルディの配下と人数はわからないのか?」
ランスゥに確認してみる。
ランスゥは、少し困った顔をしたが、全てを俺に話してくれた。
「海人、よいか。ワシが知る限り、バルディの配下は8人じゃ。このオーベルはその中で一番弱いと言ってよい。バルディの配下は、バルディを絶対の主と崇めておる。これは難儀なことじゃ」
敵はバルディ1人ではなかったのか。
オーベルを閉じ込めたので、バルディの配下は残り7人。
バルディと直接対決して、早く桜ちゃんを助け出す方法はないのだろうか。
ランスゥに今までの疑問をぶつけてみる。
「ランスゥ、バルディの移動先がわかると言ったけど、バルディの配下にあたらず、直接、バルディを倒すことは出来ないのだろうか」
ランスゥの答えは簡単だった。
「海人、すまん。バルディが移動する先は、鏡を見ればわかる。しかし、そこにバルディがいるという保証は出来ぬ」
何か忘れていた。
そうだ。
オーベルにバルディの居場所を聞けば良い。
「ランスゥ、閉じ込めたオーベルに、バルディの居場所は聞けないのかい?」
ランスゥがすまなそうに答える。
「海人、このロケットに閉じ込めた者との連絡は出来ぬ。出来るとすれば、ここから出さなくてはならぬ。それに、オーベルが口を割るはずがあるまい。すまんが、この次元の間でオーベルを開放することは危険すぎる。ここは全てにつながっておるからな」
こうなったら、進むしか俺に道はない。
「ランスゥ、次はどこへ行けば良い?」
ランスゥが、言葉を発したら、1枚の鏡が宙を飛んで来た。
「海人、バルディはここに移動しておる。鏡が曇っておるからな」
鏡を見てみる。
鏡の枠は、様々な惑星によって囲まれている。
ランスゥが、鏡について説明しようとしていた。
「この鏡の世界は、魔法使い。そう、バルディの誕生した世界じゃ。よって、この世界の住人は大小あれ、皆、魔法が使える。バルディのことじゃ。よからぬことを考えておるに違いない。海人、罠があるかもしれぬ。気をつけるのじゃ」
迷っている暇はない。
ナナカミに声をかけた。
「ナナカミ、行こう。バルディを倒し、桜ちゃんを助け出そう」
「任せておけ」
ナナカミから声が返って来た。
「ランスゥ、行ってくるよ。今度こそ、バルディを倒してみせる」
そのランスゥから、意外な声が返って来た。
「海人よ、この鏡の世界・・・いや、実際に行ってみるとよい。不思議な世界じゃからな」
???。
「ランスゥ、不安になることを言わないでくれよ」
「すまん、ここで、バルディについても知ることが出来ると思う。もう一つは内緒じゃ」
ランスゥは、何か隠しているようだ。
「もういいよ。俺に選ぶ道はないからね。ナナカミ、行くぞ」
そう言って、鏡に意識を集中させた。
曇っていた鏡は、俺の姿を映し出す。
俺とナナカミは、鏡の中へと入って行った。
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