第24話
開口一番にライオン頭の男が言葉を発した。
「申し訳ありませんでした。異世界のお方」
そうして、俺の前で片膝をついた。
周りの獣人達もそれに習う。
状況が今一つわからないので、思い切って、ライオン頭の男に話を聞く事にした。
「これはどういうことなのですか?。貴方達の世界に争いはないと聞きましたが」
ライオン頭の男は、自分を「ガイツ」と名乗った。
ガイツが手を挙げる。
誰かを呼んでいるようだ。
獣人達が列をあける。
白い猫の顔をした獣人が、ガイツと同じように俺の前で片膝をついた。
そして、自分を「マーニャ」と名乗った。
ガイツが話しを始める。
「異世界のお方。このマーニャは私の娘で、この国の神官を務めております。このマーニャが、バルディ、オーベルと名乗る男達に術をかけられたようで、石になってしまったのです。その2人が言うには、指示する鏡の前で待ち、そこから現れる者を捕らえろとの指示でした。マーニャは、この世界のバランス、私達には聞こえない、大気の話しが聞ける神官です。それ故、私達は、先の2人に逆らうことは出来ませんでした」
マーニャが話しを始めた。
「大変失礼を致しました。そして、ありがとうございました」
声を聞く限り、女性のようである。
「お名前をお聞きしてよろしいでしょうか?」
一瞬、戸惑ったが、素直に名乗った。
「海人、藤木海人と言います」
「海人様・・・」
「海人でいいよ」
「はい、海人さん。本当にありがとうございました。これでこの世界も元の平和な世界に戻るでしょう」
俺は重大なことを忘れていた。
桜ちゃんのことを聞かなければならない。
「あの・・・バルディ、オーベルと一緒に女の子はいませんでしたか?」
「マーニャは石にされていたので、事情を知りません。私がお答えいたします」
ガイツから話しが聞けそうだ。
「バルディ、オーベルと名乗る者達は、まず私の自由を奪い、マーニャを石に変えました。マーニャを元に戻して欲しくば、貴方を捕らえろと指示し、私を自由にしました。2人です。私が見る限りでは、バルディとオーベルの2人だけです。他の者にも聞いてみましょう」
ガイツは立ち上がり、吼えるような声で話し始めた。
「皆の者、マーニャを石に変えた、バルディとオーベルの他に女の子を見た者はおらぬか」
周りがザワザワしたが、誰も答えを発しなかった。
「海人さん、やはり、バルディとオーベルの2人だけのようです」
俺はガイツの言葉を聞き、今までの緊張が解けてしまい、頭が少しくらくらした。
「海人、気を抜くではない」
ナナカミがささやいた。
そうだ。
ここで止まっては、桜ちゃんを助け出せない。
「ひとまず、次元の間に戻ろう」
仕方ない。
ナナカミの考えが正しいようだ。
俺は、事の経緯を話し、鏡の前に案内してもらうことにした。
「そうでしたか。力になれなくて申し訳ありませぬ。貴方が出て来た鏡には、私とマーニャでご案内します」
そう言うと、マーニャも立ち上がり、「どうぞ」と声をかけてくれた。
俺はガイツとマーニャのあとを追うことになる。
その鏡は、歩いて20分くらいであろうか。
螺旋の階段を登り、その頂上にあった。
「ガイツさん、マーニャさん。それではお元気で」
俺は2人に別れを告げ、鏡に意識を集中させた。
鏡は俺の姿を映し出していく。
そして、鏡の中へと入った。
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