第23話
オーベルが逃げる?。
ナナカミがささやく。
「奴の武器のムチは、この牢屋では役に立たぬからな。したたかな奴じゃ。海人、仕方ない。追うぞ」
逃げるオーベルを追った。
この牢屋は地下にあったらしい。
階段を上がり、そのあとを追った。
そして、突然、眩しい光に包まれた。
外に出たのはわかる。
しかし、この歓声は?。
どうやら、競技場らしきところに出たみたいだ。
俺は、オーベルと対面し、競技場の中心に立つことになった。
歓声の主は・・・獣人たちである。
犬頭、虎頭、鶏頭・・・様々な獣人たちの顔が見てわかる。
オーベルが宣言した。
「みなのもの、ショータイムだ。これから、この小僧を叩きのめしてやろうぞ」
歓声がいっそう大きくなった。
「海人、この前は油断しておった。ランスゥの代理なら手加減はいらんな」
オーベルが戦闘態勢に入った。
「海人、行くぞ」
ナナカミが声をかけてくれた。
俺は、今の自分の立っている場所。
そして、なぜ、こんな場所でオーベルと対決しなければならないのか考え、呆然としていたからだ。
ナナカミの声はありがたかった。
答えはオーベルを倒してからでいい。
俺の耳に周りの歓声は聞こえなくなった。
心が静かに集中していく。
「オーベル、今回は逃がさない。桜ちゃんの居場所を教えてもらうぞ」
そう言って、俺とオーベルは、お互いを睨み合った。
戦いの始まりである。
オーベルは距離をおいている。
この間合いは、オーベルのムチの距離である。
「海人、飛び込むぞ」
ナナカミの声と同時に、俺はオーベルに向かい突進した。
オーベルのムチが飛んで来る。
その神速ともいえる、オーベルのムチの動きが見えた。
それだけではない。
体が軽い。
神速のムチを余裕をもってかわすことが出来た。
一つ、二つ、三つ・・・六つとムチをかわした。
オーベルの顔には焦りの色が見える。
その隙を突いた。
ナナカミに集中して気を溜めた。
そして、俺の一振りがオーベルに当たる。
オーベルは、驚きの表情をしながら、仰向けに倒れた。
倒れたオーベルに駆け寄った。
「オーベル、桜ちゃんはどこだ?。バルディはどこだ?」
答えはそっけないものだった。
「小僧、たとえ知っていても、貴様に教えることなどない。貴様ごとき、バルディ様にかかれば指一本とも必要とはしまい」
「海人、このままではらちがあかん。ひとまず、ロケットにオーベルを封じ、次元の間に戻ろう」
ナナカミの考えに従うのが正解のようだ。
俺は、ロケットを開き、鏡に意識を集中させる。
ロケットの鏡は淡く光を放ち、姿を映し始めた。
そして、オーベルを掴み鏡の中へと放り込んだ。
オーベルは、俺の手の平より小さいロケットに吸い込まれた。
「ナナカミ、次元の間に戻ろう」
そう言った時、俺の前に一人?の獣人が声をかけて来た。
「お待ち下さい」
その獣人の頭は、ライオンの頭であった。