第19話
ここはどこだ?。
そうだ。
俺は、ナナカミと一緒にバルディのいる鏡へと入ったのだった。
暗い。
夜なのであろうか。
床は大理石で、壁は石組みによって出来ているみたいだ。
少しすると、暗さに目が慣れてきた。
「おい、明るくしてやろうか」
ナナカミの声だ。
見えると言っても、周りは暗く、歩き回るには難儀しそうだ。
「出来るのかい?」
ナナカミに聞いてみた。
「当たり前だ、それ!」
ナナカミがそう言うと、周りが明るくなった。
「???」
ナナカミ自身が光を放っている。
「助かったよ」
ナナカミにそう言うとナナカミから言葉が返ってきた。
「礼を言うのはまだ早いぞ。バルディを倒さなくてはならぬからな」
バルディ・・・。
桜ちゃんをさらった憎い奴だ。
行動をしなければいけない。
ナナカミのお陰で明るくなったので、自分のいる場所、周りが良くわかった。
高い天井。
壁にかかった絵画。
飾られた鎧や剣。
そう、まるで城のようだ。
もう少し良く見たら、暖炉らしきものがあるのがわかった。
これは?。
暖炉の火は消えているが、煙が白く立ち上り、薪の焼けた匂いがする。
バルディは近いのか?。
そして、この城と言っていいだろう。
城に似合わない物を見付けた。
ガラスで出来たようなカプセル・・・蓋は開いている。
誰かが入っていたのであろうか。
恐る恐る、カプセルのシートを触ってみる。
少し温かい。
どうやら、誰か入っていたようだ。
その時である。
「海人、気を付けろ!。何者かの気配を感じる」
ナナカミが小さな声でささやく。
「後ろだ!」
ナナカミの言った方向・・・そう、暖炉を振り返ってみた。
バルディなのか?。
一人の大男。
身長3mはあろうか。
いつの間にか、暖炉の前に現れている。
そして、男は悪意に満ちた声で俺達に言い放った。
「何だ、こやつは。子供ではないか。これがあの老いぼれの使いか!」
嘲笑とも聞き取れる声だ。
「お前がバルディか!」
その男に問いただす。
「無礼な!。お前ごとき子供がバルディ様の名前を口にするとは。俺の名はオーベルだ。覚えておくがいい。しかし、その必要はないか。お前は俺の手により、命を失うことになるからな」
俺とオーベルの間に戦慄が走る。
バルディの居場所は、オーベルに聞くしかなさそうだ。
ナナカミに声をかけた。
「ナナカミ、力を貸して欲しい。どうやら、オーベルからバルディの居場所を聞き出すしかなさそうだ」
「任せておけ。オーベルごときは赤子の手をひねるより易しかろうぞ」
ナナカミから自信に満ちた声が返ってきた。
俺とオーベルは戦闘態勢に入った。