第16話
「・・・・・・・・・・・・・」
「うわぁ」
思わず叫んでしまった。
俺の目の前にランスゥのヒゲだらけの顔があったからだ。
ランスゥがニヤリとして、口を開ける。
「失礼な奴じゃのう。ワシの顔を見て驚くとはな」
それはこちらのセリフだ。
「ランスゥさん・・・」
ランスゥが俺の言葉を途中で遮る。
「海人よ、ランスゥでいいぞ」
俺は頷き、気を取り直して話を進める。
「ランスゥ、渡された手鏡の2人は、元の、俺の世界に帰して来たよ」
ランスゥが頷く。
「よろしい。要領が良いようじゃな。そして、良くここに戻って来てくれた」
桜ちゃんを助けなければならない。
「ランスゥ、俺はある人、大切な人を取り戻すために戻って来たんだ」
全てを知っているかのように、ランスゥは話し始めた。
「知っておるぞ。それと、先に話した、この「次元の間」を狙う輩とお前さんの探す女の子は関係があると見ておる」
女の子って?。
本当にランスゥは全て知っているみたいだ。
俺は桜ちゃんが、鏡の男の腕にさらわれ、吸い込まれた経緯を話した。
ランスゥは少し優しげな声で俺に全てを話してくれた。
「海人よ。桜という女の子は、ワシがある場所に、鏡に封印していた男によりさらわれたのだと思う。その男こそが、この「次元の間」の支配を狙う輩なのじゃ」
話しは続く。
「どうやら、その男は自分の持つ、邪悪で、強力な力を復活させることに成功させたらしい。そして、野望である、この「次元の間」の支配を企てようとしておる」
桜ちゃんとその男との接点が見付からないので、ランスゥに聞いてみる。
「女の子・・・桜ちゃんとその男に何の関係があるんだよ。それに、何故、桜ちゃんがその男にさらわれなければならないんだ」
一呼吸して、ランスゥは話を切り出して来た。
「海人、桜という女の子は、鏡・・・お前さんの世界では「時空の鏡」と呼ばれておるようじゃな。どうやら、「時空の鏡」を活性化させる力を持っておるようじゃ。故に、そやつによりさらわれてしまったものと思われる」
何だって?。
桜ちゃんが「時空の鏡」に関する力を持っている?。
俺の驚きを他所に、ランスゥの話しは続く。
「ここで提案、いや、頼みがある。全ての世界を守るためじゃ。あの男にこの「次元の間」を渡すことは出来ぬ。ワシはここの管理人である故に、ここを動くことが出来ぬ。海人よ、あの男の封印を頼まれて欲しい」
・・・・・・・・。
俺が?。
そんなことが出来るのか?。
桜ちゃんはどうなるんだ?。
ランスゥの狙いが理解出来ないので、ランスゥに問いただしてみる。
「ランスゥ、その・・・桜ちゃんをさらった男は、強力な力を持っているみたいだけど、俺にそんな力はない。それと、俺の目的は、桜ちゃんを助け出すことだけだ」
俺の心を読んでいたかのように、ランスゥは今度は顔を険しくして話し始めた。
「海人よ、この「次元の間」があの男に渡れば、お前さんの世界にも影響が出て来るのじゃぞ。しかも、あの男は邪悪な心の持ち主じゃ。それに対抗するには、清く、強い心の持ち主が必要じゃ。海人、お前さんはそれに最も適しておる。この無限にある世界の中でじゃ」
俺が?。
自分で自分がわからなくなって来た。
「桜ちゃんはどうなるんだ」
ランスゥは落ち着いている。
「桜という女の子は、力を持つが故、あの男の近くにいると判断しておる」
桜ちゃんを助け出せるのだろうか。
「ランスゥ、俺はその男に対抗する力がない。どうしたらいいんだ?」
「海人よ、ワシがお前さんにあの男に対抗する力を与えよう。それでどうじゃ」
俺に選ぶ道はない。
「わかった」
ランスゥはニンマリとしてこう付け加えた。
「忘れておった。あの男の名は「バルディ」と言うのじゃ」