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第五話 試練


 夜、千紗は皇宮の地下深くにある「試練の間」へと案内された。そこは巨大な石造りの空間で、無数の古代文字が壁一面に刻まれている。荘厳で、どこか恐ろしげな雰囲気に、千紗は思わず足をすくませた。


「ここで、何をすればいいの?」


 千紗の問いに、エリザが厳粛な口調で説明する。


「この試練の間では、異世界から来た者が真の力を発揮できるかどうかを見極めます。あなたの心の強さ、知恵、そしてこの国を守る覚悟を試されるでしょう」


「でも、どうやって?」


「それは、試練の間が判断します。さあ、中央の台座にお進みください」


 エリザに促され、千紗は恐る恐る石造りの台座へと歩を進めた。そこに立った瞬間、突然空間が光に包まれた。


「な、何が起こってるの!?」


 周囲の景色が一変し、千紗は見知らぬ草原に立っていた。いつの間にか右手には剣を握っていた。


「これは……幻影?」


 驚く千紗の前に、鋭い鳴き声とともに現れたのは、2メートルほどの体長を持つ魔物だった。その姿は小型の恐竜に酷似している。青い鱗に覆われ、鋭い爪と牙を持つその魔物は、俊敏な動きで千紗を睨みつけている。


「異世界から来た者よ……己の力を示せ」


 どこからともなく響く低い声。それが千紗に向けられた瞬間、魔物が低い唸り声を上げながらゆっくりと近づいてきた。


(逃げられないんだ……でも、戦うしかない。どうする?)


 千紗は魔物を見据えながら、周囲の地形を確認した。ここは背の高い草が生い茂る草原で、大小の岩が点在している。


(あの魔物、私が正面から勝負したら絶対に負ける)


 魔物が鋭い鳴き声を上げると、瞬く間に間合いを詰めてきた。千紗は咄嗟に右へと転がり込み、鋭い爪をかわした。魔物は攻撃を外した瞬間、地面を蹴って再び振り向く。


「くっ、速い……でも」


 千紗は一度逃げるふりをしながら、近くの大きな岩の裏へと駆け込んだ。魔物はその動きを目で追いながら、鋭い鳴き声を上げて追いかけてくる。


 岩の裏に隠れながら、千紗は息を整え、魔物の行動を観察した。その動きには一つのパターンがあることに気づく。


(こいつ、直線的に突っ込んでくるけど、止まるのに少し時間がかかってる。それに、横の動きは少し鈍いみたい)


 冷静に分析した千紗は、岩の陰から顔を出し、魔物を挑発するように大声を出した。


「こっちだよ、来てみな!」


 魔物が咆哮を上げ、再び突進してくる。千紗は岩を盾にしながら素早くその周囲を回り込む。魔物が岩にぶつかり、勢いを失ったその瞬間、千紗は近くにあった尖った石を拾い上げた。


(これで止めを刺せるわけじゃないけど、もっと有利に動けるようになるはず)


 彼女は魔物の足元を狙い、石を投げつけた。石は見事に魔物の関節部分に当たり、魔物がバランスを崩して地面に倒れ込む。


「よし……今のうちに!」



 千紗は倒れた魔物を観察しながら、次の行動を考えた。


(こいつ、動きは速いけど体力には限りがあるはず。何度も突進させて消耗させれば、私でも勝機がある!)


 彼女は再び立ち上がり、魔物の注意を引くために周囲を駆け回った。魔物は何度も突進を繰り返したが、千紗が岩や草を利用してかわすたびに、その動きが徐々に鈍くなっていく。


(これならいける……あと少し!)


 最後の突進を避けた千紗は、魔物が完全に息を切らして動きを止めるのを見届けた。


「ここで終わりにする!」


 千紗は剣を魔物の首元に突きつけた。しかし、そのとき、魔物の目が彼女を見つめたまま、低い唸り声を上げた。


「戦いは終わりだ……お前は力だけでなく、知恵を使った。我が命を奪うのも、見逃すのも、お前次第だ」


 その言葉に千紗は剣を下ろした。


「私は殺したくない。この国を守るために力が必要なら、あなたにも協力してほしい」


 魔物は一瞬驚いたように千紗を見つめたが、やがて静かにうなずいた。


「分かった。お前のその選択、受け入れよう」


 魔物が消え、再び試練の間に戻った千紗を、エリザが静かに迎えた。


「素晴らしい判断でしたね、陛下。力ではなく知恵と冷静な観察で戦い、命を奪うことを選ばなかった。それこそ、真の指導者に必要な資質です」


 千紗は疲れ切った表情で微笑み、深呼吸した。


「少しは……女王らしくなれた、かな?」


 その言葉にエリザは小さく頷いた。


「これからも多くの試練が待っているでしょう。そのたびにあなたがどう選ぶか、それが国の未来を決めることになります。」


 千紗はその言葉を胸に刻み、女王としての新たな覚悟を固めるのだった。


こうして千紗は、冷静な知恵と観察力で試練を乗り越えた女王としての第一歩を踏み出した。彼女の物語は、まだ始まったばかりだ――。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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