3/5
第三話 千紗の覚醒
「ちょっと待って！ 状況が全然わかんないんだけど！」
千紗は必死で現実を否定しようとした。しかし、銀髪のエリザは静かに手を差し出し、千紗の額に指先を触れた。その瞬間、体中に電流のような衝撃が走る。
「な、何これ……？」
「確かに、神託の力です。この方は本物です」
エリザがそう断言すると、周囲がざわめき、再び兵士たちが一斉にひざまずいた。
「……本物？」
「この国は、外敵の侵攻や内部の争乱で滅亡の危機に瀕しています。私たちは知恵と勇気を持つ救世主を異世界から召喚しようとしました。その結果、あなたが選ばれたのです」
千紗は混乱の極みだった。しかし、次第に頭の中で一つの可能性が浮かび上がる。
「……知恵と勇気？」
千紗は自分がこの異世界に召喚された理由を理解し始めていた。
「知恵って……もしかして、全国模試1位のこと？」
彼女は眉をひそめる。この国の人々は、自分の知識や努力を「神託」と信じている。それが真実なのか、まだわからない。しかし、千紗の心には奇妙な責任感が芽生え始めていた。
翌朝、千紗は正式に「異世界帝国の女王」として任命されることになった。豪華なドレスに身を包まれ、大広間のバルコニーから広がる大勢の人々を見下ろす。
その光景に、千紗の胸は高鳴った。
（これが……私の新しい世界？）
不安と期待が入り混じる中、千紗は深く息を吸い込む。そして、強い決意を胸に群衆に向けてこう宣言した。
「私は白井千紗。今日からこの帝国の女王となります！ 一緒にこの国を守り、築き上げていきましょう！」
彼女の言葉に群衆が歓声を上げる。
その瞬間、異世界の空に輝く太陽が昇り、新たな物語の幕が切って落とされた。
こうして、全国模試1位の女子高生だった千紗は、異世界の帝国を導く女王として歩み始める。
