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第一話 日常の終わり


「……ふぅ、これで終わり、と」


 放課後の図書館。静まり返った空間に、ペンを置く音が響いた。白井千紗しらい ちさは目の前の模試問題集を閉じ、軽く肩を回してから満足げに伸びをする。全国模試で1位を取るのが当たり前になった彼女にとって、こういった演習はもはや日課の一部であり、特別な感慨を覚えることもなくなっていた。


「千紗、また全国1位でしょ? もう、ほんとどうなってんのさ。あんた、絶対人間じゃないよね」


 同じテーブルに座る幼馴染の佐藤美咲さとう みさきが、笑いながら呆れるように言う。その言葉を聞いた千紗は肩をすくめ、苦笑いを浮かべる。


「そんな大げさなことないって。ただの努力の積み重ねだよ」


「はいはい、それができないから皆苦労してるんですけどねぇ」


 美咲は肩をすくめるが、その表情にはどこか羨望が混じっていた。千紗の努力が「ただの」ものではないことを、彼女は誰よりもよく知っている。朝から晩までひたすら勉強をし、隙間時間を使ってランニングで体を鍛え、さらに家事もこなす。すべてにおいて完璧を求める千紗の姿勢は、時に「努力の鬼」と揶揄されるほどだ。


「……こんな日常がずっと続けばいいのに」


 美咲が席を立ち、「また明日ね」と笑顔を残して去った後、千紗はぽつりとつぶやいた。誰もいない図書館の静寂が、その言葉を吸い込むように広がる。優等生としての責任を負い、誰からも頼りにされる存在であることに誇りを感じつつも、千紗の胸の奥には小さな孤独があった。


 しかし、そんな日常が永遠に続くことはなかった。

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