成果を見せてやんよ!(前編)
なぜか長くなったので前後半に
登場キャラクター紹介
アラン
次回紹介なのを作者によって忘れられていた悲しき忠犬。忠誠心が強いが、デルに対しての忠誠心はない。革命の計画を立てた張本人。登場時にある程度書いていたので書くことがない…
次回はあるのか?
「敵襲敵襲!相手は冒険者!その数10名!」
前の時と同じようにモンスターが大声で叫びながら走り去っていった。
「10名⁉多すぎるだろ!」
「私が知ってる限りだと過去一の数ですね。……どうしましょうか?」
……そんなの答えは一つしかない。
「みんな!訓練の成果を見せつける時が来た!相手は冒険者10名!正面から戦えばかなりの被害が出る!いいか、くれぐれも正面から戦いを挑むな!作戦通りの位置につけ!」
フェニ、リキ、ちーちゃん、リョウは事前に知らせていたように動き出す。
「さて、私たちはどうしましょうか?」
「……そうだな、一応最終地点に一人ずつ配置するか。」
「……なら私はちーちゃん」
「私はスライムにしましょう」(ヒョウリ)
「なら私はフェニだな」
三人で顔を合わせる。
そして、音もなく笑うのであった。
~冒険者サイド~
日はないが外と同じく明るく、丈の低い草が生い茂るのどかな平原の中を10人の冒険者は進んでいた。
「こんなところにダンジョンなんかあったっけか?」
「なかった。多分ここ1~2年でできたダンジョンだと思う」
「それなら10人は多すぎやしませんか?報酬もそこまでおいしくないでしょうし」
「まあいいじゃない。軽く攻略して軽く報酬をうけとるのでさ」
「……それにしても、モンスターいなくない?」
「一階だからだろ。……と言っていたら来たぜ」
上を見上げるとファイヤーバードが二体飛んでいる。冒険者に向かって炎攻撃をするが威力が低く、何の問題もない。そのことを確認したリーダーと思しき人物は
「弱いですね。あの強さなら三チームに分かれませんか?その方が効率いいですし」
「賛成!」(8人)
と提案したところ誰も反対意見を言わなかった。
「それじゃあ私たちは右に」
「俺たちは左に」
「……ならわしらは正面に突き進むか」
そうして10人は3,3,4のチームに分かれるのであった。
その様子を見て上空を飛んでいる鳥は静かに口角を上げるのであった。
右に進んだ三人はしばらく歩いているとまたファイヤーバードと遭遇した。
「またか。まあ、放置でいいか」
「だな。飛んでて攻撃があてにくいし攻撃されても痛くないからな」
「おまけにドロップもしょっぱいし」
と三人は先程の威力が最大だと思い、相手にする必要はないと思っていた。だが、それは大きな間違えである。
しかし、彼女たちは気づくはずがなかった。まさかダンジョンの一階に出てくるモンスターが手を抜いて勘違いをさせてくるなんてありえないと思っていたのだから。フェニはそんな三人に最大火力で「火炎吐息」を放つのであった。
「「「アッツ!」」」
三人は一斉に叫び見上げる。見事なシンクロである。そこには先ほど無視したファイヤーバード。先ほどの攻撃は間違いなく奴の攻撃だろう。この隊のリーダーの女は声を荒げ、命令する。
「久!あいつを打ち落とせ!」
久という名の弓使いは狙いを定めて矢を何本も放つがあたらない。しばらくすると調子に乗っているのか、明らかに四の間合いに入ってくる。
四は「なめるな!」と言いながら、剣を振るがあたらない。のらりくらりと避け続けるファイヤーバードを追う。三人はいつの間にか罠の方へとおびき寄せられているとも知らないで……
左の方に進んだ三人もしばらく歩くと1体のスライムと遭遇した。
「スライムか。放置だな」
とリーダーの壱は言う。仲間もそれに反対しない。そうしてスライムは無視されるのであった。
リキは先生の教わったことを思い出す。
「いいか、人間は二つ行動を決めるものがある。一つは『損得』だ。具体的には相手にする価値があるかどうかだ。ただし、ほとんどの場合スライムは相手にする価値はない」
リキはがっかりした。自分は相手にする価値もないんだと。……しかたがない。それならば
「もう一つは感情だ。人間は感情的な生き物だ。それを利用すればリキにも相手にする価値は生まれる」
リキは仲間に命令を出し全力で冒険者に後ろから体当たりを仕掛ける。
「「「うお⁉」」」
三人は突然後ろから何かがぶつかり、前に倒れた。後ろを振り返ると三体の普通のスライム。怪我はしてない。しかし、リーダである壱は怒りに震えていた。
スライムごときの雑魚に自分が一瞬でも焦ったということに。
壱はスライムに向かい、
「……死にたいらしいな!」
と言いながら大剣を振った。
予備動作の多い壱の攻撃を避けることなどリキには朝飯前である。軽くあしらっていると壱はさらに怒り狂い、我も忘れて逃げるリキを徹底的に追うのであった。残りの二人はただ、暴走するリーダーの壱についていく。そして三人は罠へと誘導されるのであった。
仁井がリーダーの直進隊は周りを警戒しながら進んだ。たとえ一階だろうとモンスターがいれば罠もある。死の危険は十分にあるのだと長年の経験で学んでいたのである。その感覚は間違っていない。しかし、彼らはそれでも心のどこかに余裕があったのだ。
それが原因で彼らは身を亡ぼすことになるのである
突然目の前の現れた一匹のコウモリの魔物。ぱたぱたと必死に羽を動かすその姿は何ともかわいらしいものであった。
「コウモリのモンスターか。……まあ大丈夫だと思うが警戒しろ」
四人は目の前のコウモリモンスターに対して武器を構える。その様子を見たちーちゃんは四人の背後に陣取らせておいた仲間に命令する。
コウモリたちは一斉に風魔法を放つ。数十個の風の刃が冒険者たちを襲う。しかし、威力が足りず冒険者たちは軽症である。それでも問題はない。ダメージを与えるより、自分たちに注意を向かせることに意味があるのだから。攻撃後は冒険者の周りを縦横無尽に飛び回り、かく乱させる。冒険者たちは狙い通り自分たちを殺そうと武器を振り、魔法を放つが、当たらない。その間に隙だらけの冒険者たちに対しアーチャーモンスターたちは狙いを定めて矢を放つのであった。
「やりぃ!」
冒険者の弓使いが倒れたのを見て思わず声を発してしまう。
「伏兵か!?」
冒険者の一人は慌てて周りを見渡す。おっと、そうはさせないぜ
「火炎吐息」
本日二度目のファイヤー。やはり威力が足りないからか倒すことはできないが
「鬱陶しいなあ!」
再び自分に対して注意が向く。その様子を見て「あほだな」とフェニは思うのであった。自分には殺傷能力がないのだから放置するべきなのにもかかわらずこの女はわざわざ自分の相手をする。そんなことをしているうちに、二発目の矢でもう一人が倒れるのを見てフェニは勝ち誇った。しかし、
「貴様!」
フェニが油断していたところに残りの冒険者が切りかかろうとしていた。
見事な連携で相手はリーダーと思しき人物しか残っていなかった。リキの回避能力、俊敏性は目を見張るものであった。四階のボスである自分をすぐに超えるだろうと思った。けれども……
「……絶対に許さん。スライムごときにこんな技使いたくなかったがもういい」
リーダーの男は仲間が殺された途端冷静さを取り戻し、スライムを敵と確かに認識したようであった。男は大剣を思いっきり振り下ろす。
「衝突!」
圧倒的な攻撃範囲を持っていたりして回避ができないときがある。リキにはそうなったときに対処できるような技もなければごまかせる耐久力もない。ただまあ、
「スライムにしては上出来ね。それじゃあ私が出るとしかしょうか」
ヒョウリは茂みから跳び出るように登場し、男に向かい
「銀色世界!」
ヒョウリは全力の氷魔法を放つ。
男の攻撃を何もなかったかのように相殺する。さらに男は-40度の冷気によってなすすべもなく凍らされるのであった。