秘密の訓練
前回の話にちーちゃんの特徴を追加しました(1月5日)
ざっくりまとめるとちーちゃんはかわいい。Are you OK?
しばらくしてヒョウリはリョウを連れて戻ってきた。
「リイアさん!お久しぶりです。それでどういった要件でしょうか」
リョウはアーチャーモンスターで身長は低く、その肌は木々の間に隠れるのに適するように迷彩に変化している。右手には木でできた弓を持ち、矢筒をしょっている。リョウはケンとミーアとも仲が良かった。故に面識はあった。
「リョウに先に聞きたいことがある。同時に何体までに命令できる?」
「同種族のモンスターにですか?よほど複雑な命令でなければ四体ですかね。簡単なものなら五体いけます」
うーむ、どうやら自由意志を持つモンスターからすれば当然の知識なのだろうか。なぜ今まで知らなかったのだろうか……
「それともう一つ、ヒョウリさん。ヒョウリさんは同時に何体まで命令出来ますか?」
「全部」
「はい?」
「あっ全部じゃわかりませんね。多分3~40体ぐらいです」
想像以上に化け物でした。まあ、それならそれで問題なし。
「それならお願いがあるのですが、まずアーチャーモンスターをリョウ含めて五体ほどこちらにいただけないでしょうか」
「私は構わないがリョウはどうだ?」
「俺も別にいいですよ。ただし、命を捧げろとか言わないでくださいよ」
そんなこと言わねえよ。
「そんなことしない。次にヒョウリさん。このニ匹を鍛えてやってくれませんか?」
私がフェニとリキを指さすと、二人は「なんだ?」と不思議そうに首を傾げた。話を聞いてなかったようである。
「……具体的には?」
「同時に命令できる数を増やしたいんです。リキとフェニが五体同時に命令できるようにしてほしいです」
ヒョウリはしばらく目をつぶり、何かを思案するべく静止していたが、やがてゆっくりとその白いまぶたを上げ
「なるほど。難しい要望ですができる限りのことはしましょう」
「リキもフェニも鍛えてもらいたいんだが、いいか?」
「「鍛えてもらうってヒョウリ様に⁉」」
「そうだな。それと私にだ」
「いいぜ!俺もヒョウリ様みたいに神々しくなりたいし!」
「僕も!」
「……あの!」
ちーちゃんがぱたぱたと飛びながら、少し恥ずかしそうに
「私も鍛えたいです!」
と言った。別にちーちゃんはすでに五体同時にできるから必要ないかなと思っていたけど。
「鍛えたいならそれでもいいよ。ただ、それは私に聞くことじゃない」
私がクロマの方を見る。
「……いいよ。ちーちゃん」
「私も大歓迎ですよ。訓練は大人数でやった方が成果が出やすいでしょうから」
「オイ!」
アランの声で皆動きを止める。まだいたんだ。すっかり忘れてた。アランは私を見ながら真剣なトーンで聞く。
「それは我の計画に協力するってことでいいのか?」
まあまあ、落ち着いて。
「おそらく最終的にはそうなると思います。ただ、今は計画よりも侵入者の対処のほうが問題です。先にそちらを片付けたいです」
「なるほどな。それなら続けろ」
「……それでどうしたいのか先に話すと。一言でまとめると不意打ちです。具体的には――です。……どうでしょうか?」
「なるほどね。私は賛成」
「……私も賛成」
「俺も最終的にそうすることには賛成。だが、それを実行するまでに侵入者が来たらどうするつもりだ?」
「それは問題ないと思いますよ。何せ訓練するのは一階ですからね。私とクロマとヒョウリさんがいれば何とかなりますよ」
「仮に私たち三人同時で相手にならないような侵入者ならどのみち崩壊ですね」
「……わかった。それと、俺は何もしなくていいのか?」
いいや、アランさんは……
「アランさんには重要な任務があります。おそらくアランさんが適任です。私たちの訓練が終わるまで――してください」
「なるほどな!それは確かに我が適任だろう!協力しようじゃないか!」
こうして私たちの秘密の訓練は開始したのであった。
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「あまい!」
私は飛んで避けようとするフェニに対して木の棒をあてる。
「リイア先生、強すぎますよ……」
フェニはふらふらと着地する。フェニとリキ、ちーちゃんは侵入者の攻撃を避ける訓練をしている。本当は耐久力を鍛えたいのだが、どうやって鍛えればいいのか誰も分からないので代わりに避ける訓練をしている。
訓練開始から一週間。三匹の実力は確実に高くなっている。
まずはフェニ。フェニは感覚的な才能が高く、訓練開始から三日で四体、五日で五体同時に命令できるようになり今じゃ七体同時に命令できるようになっている。
それとなぜか魔法の威力が少し上がっているように感じた。本人に尋ねたが「そうなのか?」と自覚はないようである。さすがは感覚派。一方で相手の攻撃を避けるのには少々苦戦してる。それでもだいぶ避けれるようになったけど。
次にリキだが。リキはコリンが捕まえるのを苦戦したのも納得するほど回避は上手であった。そのすばしっこさがさらに磨かれ、かなり本気でやらないと私もあてられない。それと素早さを手に入れたからか、体当たりも結構いたくなった。あと、大きくなったのもあるかも。多分1.25倍ぐらいは大きくなっている。しかし、リキは同時に命令を出すのは苦手らしくまだ三体同時にしかできない。
そして、残りがちーちゃんなんだが…
「フェニ脱落!」
(後ろか!)
私は大きく体を動かして木の棒を振るが、ちーちゃんは間合いから離れて避ける。さらに私が追撃しようとするが、急上昇と急降下、さらにはフェイントを使って巧みに避ける。
もはや私が木の棒だとあてられなくなっていた。さらに同時に10匹に命令することができるようになり、数を減らせば自分と同じ回避をさせれるようになっていた。それだけでもすごいのだが、なぜか風魔法も使えるようになり、そこそこの太さの木の枝を折れるぐらいの威力はある。
「……無理だな。もう木の棒じゃあてられないな」
この子はもう少し鍛えたらそれなりの戦力になるのでは? と思った
ちなみにアーチャーモンスターのリョウは暇を持て余していたクロマによって鬼の特訓…というか一方的にぼっこぼこにされていた。時々私たちに助けを求めている声が聞こえたがみんなと話し合ったうえで無視することにした。万が一巻き込まれたらたまったもんじゃないからな。叫ぶ元気がある内はとりあえず大丈夫だろう(適当)
その後も訓練を続け、訓練開始から10日目にとある冒険者がやって来るのだった。
リイアがアランに命令したことが分かるのはだいぶ先の話になります。
もう一つの方はすぐに判明します。…といっても隠すほどのものでもないですが