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とあるダンジョンの非日常録 Ⅰ

初感想ありがとうございまああああああああああぁっす!

これからも頑張りますのでよろしくお願いします!


閑話です。少し短いですが、お許しください。

日もすっかり落ち、夜の気配が迫る頃


一つの小さなダンジョンでは


「さあ、好きに食べな!」


祭りが開かれていた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



(まあ、当日計画の割には)

上手くいったのではなかろうか。

そんなことを思いつつ、私は焼けた肉を食べる。

今日取れた新鮮な肉は香辛料が控えめでもおいしい。


 周りを見ればいくつかのグループで皆わいわい楽しんでいる。とてもいい眺めである。

「お疲れ様です。リイアさん」

そう言ってリンが私の隣に座る。

「リンもお疲れ。手伝ってくれて助かった」

「そんな……結局モンスターの解体は全部リイアさんがやったじゃないですか。私はほとんど雑務しかしていませんよ。というか、リイアさんって解体もできるんですね」

ダンジョンでの生活は基本的に自足自給だからな。何度もやってるうちに自然と出来るようにいつの間にかなっていた。


 そんなことを話すとリンは苦笑しながら言う。

「私一人じゃこの世界だと生きていけないですね」

「大丈夫だ。多分クロマも無理だから。むしろ私が例外だと思う」

「そういえば、リイアさんとクロマさんってどうやって知り合ったんですか?」

あれ? 話したことなかったっけ?

「ないです。なんならここにいるほぼ全員、出会う前のことを知らないです」

たしかに、私もリンたちの過去について知らないな。

「……気になる?」

「良ければ!ぜひ!」

別に面白い話ではないのだが、リンが催促するので話を始めようとすると、会話を聞いていたのかカムイとリキも私たちの間に入る。

「ききたい!ききたい!」

「俺も気になる」

「しかたがないな……」

私は焼けた肉を少々多めにとった後、クロマとの出会いについて語り始める。


 一方そのころ、別のグループでは……

「私達まで参加していいんですか」

とキリンが食べ物に手を取る前に尋ねる。

「招待されたのですから問題ないでしょう」

そう言ってガスロはマスクを外さずに焼けた肉に上手にかぶりつく。

「もう少し躊躇しなさい」

キリンはため息交じりに注意をするが、ガスロは一切気にせずに大量の肉を詰め込んでいく。

「そんな勢いよく食べると……」

テンは何かを悟り、注意をしようとしたが時すでに遅し。ガスロの手がピタリと止まり、やがて小刻みに震え始める。

「水!」

「すでに用意済みだぜ」

フェニは水袋をガスロのそばに置くと、大慌てで水を口に入れる。

「フェニさすが」

その様子を見ていたライヤはフェニの隣に座ると小さな頭をなでる。フェニは気持ちよさそうに目を細めながら

「多分、何体かやらかしそうだなって思ったから各グループに一体ずつ派遣してる」

そう言い終わると、ライヤが持ってきた肉が目に入ったのか、なでられながら首を伸ばして肉をついばむ。「オイ、それは俺が持ってきたやつだぞ」とライヤが笑うと「いいじゃん別に。大量にあるんだから」と気に介さずに食べ続ける。


「はあぁ……三途の川が見えましたよ」

どうやら無事なようである。そう言って、ほっとひと息ついているガスロをフェニは微かな憐れみと99%の軽蔑を含むまなざしで見る。他の方々も同じような目線を向け、ライヤは苦笑していた。

「あほだな」

フェニは肉を食べるために開けた口ではっきりと言い切る。

「同情の余地なしですか」

「いらんだろ。おいしいもの食いすぎて死ねるなら本望だろ」

私達ダンジョンモンスターの冷たい反応にガスロは怒る……が、完全に悪いのは向こう側なので何を言っても正論が帰ってくるため、あきらめたのか一人いじける。

こんなくだらない会話を私は笑いながら見ていた。

キリンも口元を隠していたが笑っていた。


さらに別の場所では……

「こんなによく取ってきたな」

グローリアは山積みにされている肉を見てあきれ返る。

「少し取りすぎました」

「少しじゃないだろ」

スーカの答えをツチグモはあっさりと否定する。

「競い合ったのがだめでしたね……」

キョウの呟きに頷くスーカとランド。

「……元気ですね」

ツチグモの呟きに三人は何かを思い出したようである。

「そうですよ!だって私達ほとんど戦ってないんですよ!」

「俺も。弱い竜人一匹だけだ」

「私はグローリアさんのアシストだけ。後はずーっと偵察」

そう嘆いた後にグローリアとツチグモを一瞥し、再びため息をつく三人。

 三人とも二人の戦功を聞いている。故にそれと自分たちの戦功を比べて落ち込んでいるのである。

見かねた二人はそっと助け船を出す。

「そう落ち込むなよ。本当に助かったよ、スーカ」

「ランドも。あんたのおかげで今、楽しめているんだから」

二人の言葉に少し顔を上げるもの二人。

しかし、その言葉でさらに落ち込むもの一人。

「はあぁ……」

キョウの珍しい姿に四人は何と声をかけるべきかすぐには分からなかった。しばらくの沈黙の後

「ほら、キョウはいつも働いてるんだから。今回ぐらい休むべきなんだよ!」

とグローリアは何とか励まそうとしたのだが

「それ、カムイさんたちの前で言えますか?」

さらに落ち込んでいくキョウはしばらく自分の尻尾をいじっていたが、やがて少々きまり悪く思ったのか

「……見回りに行ってきます」

とだけ言って何も食べずに去っていった。

 キョウが去っていく時、心配そうにその姿を見ていたが誰も声をかけることができなかった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 ただ、何も考えずに見回り(というよりもただただ歩き回っていた)を続けていたらいつの間にかすっかり日も沈んだのだろう、ダンジョン内は不思議な輝きを失い冷たい雰囲気を醸し出していた。

 涼しい夜風にさらされ、少し冷静になったキョウは祭りでの自分の立ち振る舞いを顧みて『申し訳ないことをした』と一人反省していた。

「あの場で掘り起こすべきではなかった」

と我知らず呟いた言葉は静かなダンジョンに吸い込まれ、誰にも聞かれずに消えていく。


 二階層の見回りも終わったキョウはしばらくそこにとどまった後、もし、祭りが続いていたら謝った後で楽しもうと考えたキョウは六階層に戻ろうとした。

 そんなわけで階段へとやってきたキョウは思わぬ人物と出くわすのであった。



「……ヒマリさん?」


闇夜の中から現れた彼女は、私におびえるような目をしていた。

次回、後編

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