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50話 目覚めさせてはいけなかったのかもしれない

50話達成しました!

これからもよろしくお願いします

余談

全然三話で終わりませんでした

おそらくあと二話はこの話だと思います。

…いいですか?『だと思います』ですからね?

「ぐもおおぉぉぉ…」

言葉で表せないような声を上げ、しばらくすると巨大なものが倒れる音がする。

この断末魔に共鳴するかのように一匹、また一匹と崩れる音が続く。氷孤たちは上手くやっているようである。これなら安心して私はこいつの相手をできるな。

「いい加減しゃべったらどうだ?」

目の前にいる巨牛(ミノタウロス)は私の問いかけに対しようやく口を開いた

「…貴様は半神か」

巨牛はそう言ってほかのよりも二回りも大きく重そうな斧をおもむろに縦に振る。私の横を斬撃が空を切りながら過ぎ去っていった。威嚇のつもりだろうか

「貴様を喰らい、我は魔王とならん」

たいそう立派な目標をお持ちのようで。……うん? それってもしや…

「忠誠心のかけらもないのか」

「われらが竜人ごときにただで従うとでも思うか?」

さあね。こっちとしてはあんたたちの事情なんてどうでもいいからね…

「ところでいいのか?あんたたちの仲間がどんどん倒されているけど」

「問題ございません。ただの餌なので」

「……何言ってるの」

すると巨牛は牛の頭で薄気味悪い笑みを浮かべる。その顔は憐れみと傲慢さを半分ずつ含んだようなもので、それを見た途端に私の体は拒否反応を起こした。

「どうやら知識はそれほどないごようすで」

その瞬間、巨牛のボスの体は黒い影のようなものに包まれていく。

「実は巨牛は迷宮の主と呼ばれているのですよ」


(危険だ)

グローリアは瞬時にそう判断し、巨牛の右腕を影も含めて正面から『神風(シンプウ)』で切断した。そしてすぐさま、左足を狙おうと体の向きを反対にする。その時、彼女の目の端でありえないものを目にした。

(えっ…)

右腕の切断面から影が伸び、近くにあった巨牛の死体から右腕をもぎ取り接合させようとしていたのである。

「…神様も驚くのですね。…フフフいいものを見れました」

巨牛は動きが停止しているグローリアを悠々と観察する。相変わらずその顔は不気味なものであった。

「ふざけるな!神ノ試練(ジャッジメント)

彼女は空中に五つの特殊な槍を作り、四肢と首を同時に切断した。一切の躊躇もなく彼女が今できる最高火力の技を放った。

だが…

「危険な技ですね。やはり正面から挑んでは勝てませんでしたね」

またしても黒い影のようなものが今度は氷孤と戦っていた巨牛を強引に連れだし、同じく欠損した部分を抉り取り、縫合させる。

「いいですか?ダンジョンでは外界からの影響がない限り、エネルギーは一定です。言い換えれば、外界からの干渉がなければエネルギーはそのまま保存される」

巨牛は地面に落ちた斧を取り、軽く準備運動をするかの如く腕を動かしながら続ける

「普通はモンスターは倒されるとエネルギーの濃度の都合上、体外に急速に放出します。その結果、倒されたモンスターの亡骸にエネルギーは残りません。ですが、ダンジョン内部では少し変わります。ダンジョン内部は外と比べるとエネルギー濃度が圧倒的に高いのです。つまり、亡骸にエネルギーが長時間残ります」

巨牛は先程と同じように斧を振る。しかし、その斬撃の威力、速さ共に先程のを上回っていた。

「巨牛は何でも食べます。肉も草も魚も虫も…そして仲間も。たとえ死体であったとしても」

グローリアは再び『神風』でとりあえず危険な武器を落とそうとした。しかし、彼女の剣は腕を完全に切断させることができず、八割ほどのところで止まってしまった。

「そして、その中に含まれるエネルギーを瞬時に取り込み強くなれるのです」

巨牛は止まったグローリアを目掛けて傲慢な左腕を振った。


(面倒なことになったな)

さっさと倒して次の階に行く予定だったにもかかわらずしょっぱなから予想以上に時間がかかりそうである。先にミルだけでも向かわしといてよかったなと少し安堵する。

巨牛の攻撃はますます狂暴になっているが、あいかわらず動きは遅い。当たらなければ結局問題はない。だが、問題は…

私は再び『神ノ試練』で四肢を切り離したが、痛がるようなそぶりはそれほど見せずに同じように縫合する。

あの再生能力をどうするかが問題である。大方仕組みは想像つくが詳しいことは戦いながら調べるしかなさそうだな。ただ、奴の言動からの推測でしかないが…

「避けなくていいのか?その再生能力も完璧ではないのだろ」

巨牛はしばらく自分の手と私を交互に見た後に

「貴様を殺せれば不完全でも十分だ」

そう言って、今度は向こうから距離を詰めてきた。


ただしその動きは遅い。ウサギが見る亀のようである。


私を殺す? どこからそんな自信がわいてきたんだ?


「何度でも再生するといいよ!そのたびに華麗に捌いてやろう」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



氷転崩壊(アイスブレイク)

二つの氷の鎌を巨牛の足に刺すと波紋が広がるように皮膚に霜が貼られ、凍り付いていった。痛みと興奮でがむしゃらに斧を振り回し始めたので私は距離を取る。足が凍り付いているため移動することはできない。つまり後は放置しても問題ない。

…本来は

(しかし……)

グローリアと巨牛の戦闘は轟音を鳴らしながら激しくなる一方であった。巨牛は荒々しく斧を振り、グローリアは舞うようによけながら的確に隙をついて攻撃をしている。

ここだけ見ればグローリアが圧倒的に優勢だが、巨牛は不死身と思わせるような再生力と即死級の破壊力を持ち合わせている。お互いに自分の得意分野を一方的に押し付けあっているため、状況としては互角だろう。できれば私も加勢したいところだが

(まあ、足手まといになるか)

あの再生力を突破できるようなものを自分は持ち合わせているわけではない。巨牛からすれば動く的が増えたようなものだろう。

(それじゃあ、私がやるべきことは…)

巨人(トロール)や巨牛はまだ残っているが、どれも仲間が対応している。むしろ氷孤が余っているくらいだ。巨大軍団以外はオークたちが対応している。先ほどまでは防戦一方だったようだが今は一転して戦線を押し上げている。つまり、この階層はもう大丈夫だ。

「余っている氷孤は一部は先に下の階層に向かえ!後に合流する!」

私の号令に合わせ氷孤は走りなれた雪原を駆け、階段の方に向かって行った。

(ただ、もしかしたら不要かもしれないな)

下の階層の状況がきちんと把握できてないため何とも言えないが、緊急事態の報告もないしうまくやっているのだろう。少なくとも一つ下の階層は大丈夫だろう。カムイがいるし。それと七階層にはクロマにウォルがいるから問題ないだろう。そうなると……


私はあの階層の顔ぶれを想像すると微妙に心配になる。もろもろの事情であの三人になってしまったのである(もちろん頑張って変更しようとしたが無理だった)ライヤがうまくまとめてくれているといいのだが、フウランはともかく、アースは大丈夫だろうか。ルヴァンの嫌な部分を微妙に受け継いでしまったからな、あのドラゴンは。『どうして鍛冶職人ごときが我に命令する!』とか言い出してないだろうな(大正解!)

……いや、さすがにこの状況ではありえんか。私のドラゴンに対する偏見が強いだけか


私は今の自分には関係ない雑念を振り払って再び隊長同士の戦いを観察する。私が見たとき、ちょうど黒い影のようなものが切られたのだろう右腕を縫合させていた。私はその様子を注意深く見る。

戦闘には直接役に立てないかもしれないが、何もできないわけではないはずだ。この世界に完全無敵な能力なんて存在しない。必ずあの能力にも欠点――制約があるはずである。そうして観察を続けていると再び右手が切り離される。すかさずに黒い影が同じように近くに倒れている巨牛の死体から右手を奪う。倒れている死体に。同じように……

その時、私の脳に鋭い電流が流れる。

(……?よくよく考えてみれば、なぜわざわざあんなことをする?)

もしあの能力が単純な再生系の『縫合、接合』能力だと考えるとなぜ、わざわざ無駄な動作を挟む。


『いいか、すべての行動には何かしらの原因あるいはそれに類する理由がある』


ヒョウリ様が戦いについて学んでいた時によく口にしていた言葉である。『相手を全て知ることができたら、少なくとも負けることはない』とも言っていた。

あの動作にも意味があるのだろう。……大体の予想はついたが確証は得るためには実験してみるのが一番だろう。そしておそらくだがグローリアもなんとなく勘づいているのだろう。先ほどから同じようなことを繰り返している。

私はおもむろに倒れて動かなくなった巨牛の右手に『氷転崩壊』を繰り出した。

作者は今後は下手に予定について書かないことにしよう!

うん、それがいい(確信)

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