生き残るために
16話までの話を誤字訂正と一部修正しました(2月2日)
内容は変わっていませんのでご安心ください
ここはリイアたちのいるダンジョンから少し離れたところにある森の中
ドーラという名の竜人のもとに子分としてかわいがっている竜人たちが突然やってきた。竜人たちは息を整える間もなく、ドーラの前に跪くのであった。
「…要件を言え」
ドーラは竜人たちに向かって言う。その言葉は重々しく、すごみがある。
「…ドーラ様にお伝えしたいことがあります」
竜人の一人が要件を話し始める
竜人たちがここに来たのはある報告をするためであった。それは…
「二つの鬼人族と妖精族、さらにいくつかのオークたちがダンジョンの傘下に加わりました」
現在、絶賛勢力拡大中のとあるダンジョンが周辺地域の有力種である鬼人族や妖精族を配下に加えたのである。その報告を聞いたドーラは、目を大きく見開き
「それはまことか」
と少し驚いているようであった。竜人は「残念ながら事実なのです」と返事をし、さらにダンジョンの偵察に向かったモンスターが全滅したと話すのであった。そして最後に
「もはや我々だけではどうすることもできません。お助けください」
と懇願するのであった。ドーラは髭をいじりながら天を見上げ考える。やがて、竜人たちに向かい、優しく微笑みながら
「いいだろう。我らも協力しようではないか」
と断言した。その言葉を聞いた竜人たちは一斉に顔を上げ、涙目になりながら
「ありがとうございます、ドーラ様」
と震え喜ぶのであった。
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竜人たちが退出したのを確認してから長の隣に従えていた一人の竜人、ロロはドーラに向かって
「…よろしいのですかドーラ様。もちろん彼らも大切な駒ですが…」
ロロが心配そうに尋ねると長は淡々とまた力強く言う
「かわいい子分たちがいじめられたんだぞ。見て見ぬふりをどうしてできようか。いや、できるはずがない」
「本音はなんなのですか」
ロロが冷たく対応するとドーラは笑いながら「冷たいな」と言った後、再び冷静になり
「奴らと同盟を結び、あわよくば吸収してやろうと思っていたが、もはやそんなことをしてられんくなった。力をつけすぎた。これ以上は静観してられん。即刻叩き潰すべきと判断しただけだ」
「しかし、それにしても突然すぎませんか。もう少し様子見し、場合によっての判断でいいと思うのですが…」
「その考えは危険だ」
そういってドーラは自身の考えを話し始める。
中庸(折衷案)はいつ戦闘が起こるか分からないこの世界ではゴミ同然である。中庸はどちらに転んでも対応するため…というのは建前で実際はただの後回しでしかない。そんなことをしていてこの世界で生き残れるはずがないだろう。たとえ結果が分からなくとも決断をしなければならないのだ。
…我らは実際にそうすることで今日まで生き延びてきた。
「我らにあるのは協力か、戦争かのどちらかだ。前までは上手いこと配下にして搾取してやろうと考えていたが」
奴らは力をつけすぎた。我らの脅威になりうる存在となった。
「奴らの存在は脅威だ。…本当はもっと早くに潰しておくか、手綱を引くかしておくべきだった」
ドーラは最後に「これが最後のチャンスだ」と付け加えた。
「私が未熟でした。申し訳ございません」
ロロはドーラの話に納得する。ドーラはロロに向かい
「総力を挙げて叩き潰す。準備に何日かかる!?」
その声に怖気つつも胸を張りながら
「四日…いや三日で終わらせて見せましょう!」
準備に三日ならば…決戦はおおよそ一週間後か。
「巨牛族と巨人族共も呼べ!確実に叩き潰す!」
ドーラは過小評価など決してしない。だからこそ一切の手加減も躊躇もしなかった。
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ドーラのもとにはゴブリンやオーク、竜人はもちろん巨牛族、巨人族、ゴーレムなどが集まり総数は1000近くとなった。ちなみに、ダンジョンに向けての進軍中にダンジョンのことを快く思っていなかったモンスターたちが加わるため、最終的には1000体を軽く超えることとなる。ドーラは集まったモンスターたちを見て満足そうにしていた。これほどのモンスターを集めたのはいつぶりだろうかと考えていた。そこにロロがやってきて
「…それではドーラ様お願いいたします」
ロロに頼まれドーラはゆっくりと話し始める。それまで騒いでいたモンスターたちは静まり返りドーラを崇めるように見ていた
「まず、突然の招集になって申し訳ない。無茶な予定を押し付けたことを申し訳なく思う……」
ドーラの話は謝罪から始まり、それに関しての感謝、そして召集の目的と話は進んだ
「……我らが永久に繁栄するために、今ここで立ち上がり、邪悪な存在を共に排除しようではないか!」
長の声にまくしたてられ、共鳴しモンスターたちは雄たけびを上げる。そして、雄たけびがある程度収まると、ドーラは大きく息を吸い込み最大音量で
「全軍!進軍せよ!」
と叫ぶのであった。ドーラによって鼓舞されたモンスターたちは目の色を変えて進軍を開始した。その様子を見ていたロロを含む竜人の強化種たちは「さすがはドーラ様」と興奮していた。そして竜人の強化種たちも進軍を開始した。
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それから数日後のある朝
地ならしのように鳴り響く足音でグローリアは目を覚ます
(来たのか…)
隣を見ると同じく気配を感じたのだろう目を覚ましたミルが目をこすりながら
「…来ましたね」
と呟く。そしてミルはすぐそばに置いていた鎌を持ち
「グロアさんに任せます」
と言うのであった
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「敵が来たぜ!」
フェニの予想通り竜人たちは次の日の午前にやってきた
「それじゃあ作戦開始だね」
「必ずやリイア様をお守りいたします」(ランド)
私はあまり前線で戦うようなことはしないように言われたので今回は後方担当に回ることになった。まあ、ラスボスだからね。仕方がないか。
…でも、戦わないなら前に出てもいいよね?
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少し遅れて四階層にも敵の情報が伝えられる
「オークさんたち。分かっていますよね?」
キョウの質問にオーク三兄弟はぶんぶんと頷く。
「妾たちは負けなければいいのです。簡単ですね」
キョウは言い終わると一人持ち場に移動するのであった。
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新五階層では土蜘蛛たち鬼人族とゴブリンの長とカムイ、魔法使いモンスター(自由意志もち)が敵の情報を聞き、兵の配置など話し合っていた。
「…これでいくか」
「そうですね」
ツチグモとカムイは顔を合わせ、にやりと笑うのであった。
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六階層では地龍とフウランが…
「我だ!」
「ぼくだ!」
喧嘩していた。ライヤは何度も注意するが無駄であった。ライヤは二匹を見ながらため息交じりに
「なんで俺だけ…」
と嘆いくのであった
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そして最後に七階層では
「…以上が敵の情報です」
ちーちゃんの情報をクロマ、さらにはウォル、カール、タン(亀のモンスターで自由意志もち)が集まって聞いていた。
「想像以上に多いですね」
「…でも、ここに来るモンスターは多くて100体前後だろうね」
クロマの言葉は何の根拠もない勘であるのだが、誰も突っ込まなかった。実際にそうだろうと思っているからである。下手すれば一体もやってこないかもしれない。
「その時は他の階層に援護に回るように」
私達が上の階層に向かうことによる『万が一』の心配などする必要はない。なにせ
この階層には最強の門番がいるのだから
それはそうと…
クロマは一人静かに訓練の成果を発揮すべく、来るべき時を待ち続けるのであった。
こうして竜人とダンジョンモンスターたちの生き残りをかけた戦いが
ひそかに幕を開けるのであった