…これでどうやって戦えと?
登場人物紹介
ルヴァン
最強のドラゴン種の中で最弱の種類のモンスター。自身がドラゴンであることを誇りに思っている。ゆえに他の種族を見下す傾向にある。かませ感が強いですが実力は一応5階のボスなので、ケンとミーアが二人そろって戦っても勝てない(尚、今後もネタにされる模様)
名前の由来は作者がこのキャラクターを作った日に食べていたパンに書いていた単語
つまり、深い意味はない(ルヴァン 解せぬ)
私とクロマ、アランはデル達がいる最下層を後にした。
「……ルヴァンの野郎。完全に調子乗ってるな」
と私は吐き捨てるように言う。アランはそんな私を見ながら
「デルも腐っておるな。このまま奴の好きなようにやらせていればダンジョンは崩壊してしまうかもな。だがな、奴はありがたいことに厄介な狡猾さを失っているようだな」
「?」
クロマは不思議そうな顔をしながらアランに詳しく話すように催促する。
「奴は我が忠誠を誓っていた初代のラスボスを罠にはめて自分がダンジョンのラスボスになったのだよ。その時のやつは天才だったよ。だが、いつの間にかその才能を失ったようだな。だからこんな愚かなことをする」
アランはにやりと笑いながら続ける。
「奴はいきなり三階層分のボスを敵に回した。戦力で言ったらこのダンジョンの三割近くを一気に敵に回したんだ」
「もしあの場にもう一人我ら以外に反対する者がいたら、どうするつもりだったんだ?もしあの場で我ら三名が反乱を起こしたらどうするつもりだったんだ?そのために階層ボスを集めたのだろうが、我らにも勝機はあったと思う。
やがてアランは何かを決心した様子で言う。
「……あいつをダンジョンのラスボスにしておくわけにはいかねえ。我はあいつを倒したい」
「本気で言ってますか?」
私が少し怪しむような目で見ると、アランははっきりと答える。
「犬は噓をつかん」
そうなんですか。……初耳ですけど。
「二人も協力してくれないか?頼む」
とお座りの体勢をして、頭を下げる。
「……リイアはどうしたい」「……クロマはどうしたい」
私とクロマは顔を見合わせる。お互いに遠慮しあって言い出せずにいた。
「すぐに返事はいらない。状況次第で決めても別に構わん」
そんなことを話しているうちに六階についた。一旦、みな自分の荷物をまとめ、再び合流する。私が集合場所につくとそこにはアランとアランと同じ種類の犬のモンスターが二体いた。
「こいつらはコリンとカリンだ。我に忠誠を誓っている仲間だから安心しろ。こいつらを二階と一階に送る。何かあったらこいつらに連絡しろ。我のところに来るように言ってある。コリン、この者に協力しろ」
一匹が私のもとに近づく、大きさはアランと比べると一回り小さいが、かなり強力なモンスターであることは分かる。ケンとミーアより少し強いぐらいだろうか。
「私がリイアだ。……コリン、よろしく頼む」
コリンは警戒をしていたが、すぐに敵意がないことが分かったのか、私の横で座り込み動かなくなった。どうやら信用してくれたらしい。
同じようなことをカリンとクロマも行い、私たち三人は長い間お世話になった六階を後にした。
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そして、アランがボスを担当する三階についた。三階はお花畑が広がっていて所々にモグラのモンスターの巣の入り口の穴が開いている。
「とりあえず、自分の担当する階層の状況整理をまずしろ。どんなモンスターがどれぐらいいるか。ダンジョンの形、罠の位置とかもな。それと、その階層にルヴァンやデルの味方がいるかもしれないから警戒しろ」
アランはそう言って私達と別れた。一応三日後に二階で三人で話し合いをすることを約束して。
そして二階で私とクロマも別れることになる。別れ際にクロマがコリンとカリンに向かって
「もし、ピンチになったらすぐに私のところに来ること。わかった?」
最後に私に向かって
「……死なないでよ」
「……それ、フラグにならないか」
クロマは私の答えに小さく笑いながら
「……この程度のフラグも捻じ曲げられないようなモンスターなの?」
そう言ってクロマは返事も待たずに去っていった。その様子は「私が何と答えるかわかっている」と言っているようであった。
そしてとうとう私は自分の担当場所である一階についた。実はここまで来たのは初めてである。……さすがは一階と言おうか。モンスターが本当に弱い。ほとんど木もなければ茂みもないサバンナのような平原には三種のモンスターがいる。スライムのモンスター、ウサギのようなモンスター。こいつらは戦闘は多分無理だな。かろうじて戦えそうなのが炎をまとった鳥のモンスターか。しかし、数は少なそうである。
これでどうやって戦えと
再序盤の平原で出てくる程度のモンスターしかいねえ。
……自分の手札に嘆いてても仕方がないな。とりあえず、
「コリン、この階層の中で話ができそうなモンスターを探すのを手伝ってほしい。できるか?」
「御意!」
コリンはそう言って尻尾を振りながら走り去る。
一時間ほど探し回っていると、突然上から
「あんたが新しい階層ボスか?」
と声が聞こえ、上を向くと一匹の鳥のモンスターがいた。
「そうだ。私が新しい階層ボスで名前はリイアだ。少し聞きたいことがあるんだが、協力してくれないか」
鳥のモンスターは「いいぜ!」と言って、地面に降りる。
「ところで名前は?」
「名前?……ああ、あれか最近話題になってたやつか。俺に名前はない」
ありゃ、名前がないのか。それなら、名前を私が決めていいよね?
「炎をまとう鳥だから……フェニにしよう!。どう?」
「いいぜ!俺はそもそも名前がないんだから、つけてもらえるだけでありがたいんだぜ!」
喜んでいるのか、私の周りを飛び回る。名前を付けただけで大げさな…と言いかけたが、ある出来事を思い出し
(私も大して変わらなかったっけ)
と思い言わないことにした。
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「ところで、他に会話できるモンスターはいない?」
「いるぜ。スライムで…って言ってたら来たぞ」
振り返ると確かにスライム……コリンに銜えられたスライムがいた。
コリンはスライムを放して
「リイア様!遅くなりすみません。この者をなかなか捕まえられずにいました」
申し訳なさそうに謝るがその尻尾は揺れている。……さてはあんた楽しんでたでしょ。
「大丈夫。それより君が喋れるスライムか?」
そもそもスライムってどうやってしゃべるんだ?と思っていると青い液体と物体の狭間みたいなスライムはプルプルと体を震わせ、
「そうだよ!僕が喋るスライム!それよりあなたが新しいボス?前のボスよりも強くない?」
私の疑問は半分だけ解消された。もう半分は……分からん。
「まあ、私はもともとは六階の秘密部屋の……って言っても分からないか。まあ、六階層のボスだったからね。一階層のボスと比べりゃ当然強いと思う」
「「フェ?六階のボスがなんで一階に⁉」」
まあそうなるよね。……話しても大丈夫だろうか?
さすがにこの反応はさすがに白だな。私はここまでの出来事を大雑把に語る。
二人は聞き終わった後、
「あんま難しいことは分からないが、デルとルヴァンが敵なんだな」
「悪いモンスターはやっつけるよ!」
と言ってスライムは階段のある方へ行こうとする。おい待て!
「落ち着いて!今のあんたと私で戦いに挑んでも勝てないよ!作戦を立てて、実力をつけてからだよ!」
私が必死に止める様子を、フェニとコリンは苦笑いをしながら見ていた。
フェニたちが言うにはスライムとウサギのモンスターは思っていた通り、ほとんど戦力にならないらしい。耐久力が低くて一発で死ぬし、ウサギはまだそこそこの火力があるが、スライムは攻撃力も絶望的。当たり前だが魔法なんて使えない。鳥のモンスターはこの階層には10匹程度しかいないそうだ。簡単な炎魔法は使える。耐久力は絶望的。
「みんな耐久力がないのか」
「その代わり回避はそれなりにできる」
そういってフェニは縦横無尽に飛び回る。しばらくすると元の位置に戻り、
「ただ、攻撃手段に乏しいから避けたところで倒せないし、ひどいときは無視される。アイテムもしょぼいからな」
やはり一階層の魔物は戦力にならなさそうだな。二階と三階に何かがいればいいのだが……。それと、会話ができるのはこの二匹だけだそう。もともともう一匹いたが、先の冒険者によって殺されてしまったそうだ。
「……すまんな。俺たちは弱いからぶっちゃけ協力しても役に立たないよな」
フェニは哀しそうに言う。いや、計画の方は最悪いいのだが、むしろ……
「……どうやって侵入者を倒す」
今はこっちのほうが問題である。
次回、助っ人登場?