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物語は動き出す

登場人物紹介

黒魔クロマ

リイアの友人。身長150ぐらいのおかっぱ少女。実はリイアと名付けたのはクロマである。精霊に近い存在で魔法が得意。(ダンジョン内最強の魔法使い)一部のモンスター以外には無口になる。なにやら秘密があるようで…

「嬢ちゃんは初めて見るな……。その強さと雰囲気。さてはレアモンスターだな!」


「ほんとに⁉兄ちゃん。それならこのクソ雑魚、最後にいい仕事するじゃん」


「だが、油断するなよ。このモンスターは強い」


盗賊たちは楽しそうに会話する。しかし、一方でリイアは絶望していた。


(嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!)


リイアは最初、現実を受け止めれていなかった。次に、彼女はミーアとケンが動かない様子を見て、すべてを理解した。その瞬間、黒い感情が彼女を覆った。そして彼女は血相を変え


「ふざけるな!」


と叫び、盗賊たちに向かって走り出す。それはあまりにも無謀な特攻であった。1対1ならまだしも1対3では彼女に勝ち目はない。平常の彼女なら撤退を選ぶ。しかし、彼女は仲間が殺された怒りで暴走していた。先ほどの冒険者と同じように。もしかしたら、彼女は冒険者に呪われたのかもしれない。


 彼女の単純な攻撃は一人の盗賊によって簡単に防がれ、横から別の盗賊の強烈な蹴りが入れられ、吹っ飛ぶ。彼女は何とか着地し、再び同じ攻撃を仕掛ける。とっくの前に冷静さを失っていた。もちろん先程防がれた攻撃と同じものが通用するはずもなく、軽くあしらわれ、今度は盾によってそのまま地面に押し倒される。彼女は必死に抵抗するが、二人がかりで押さえつけられどうにもできないようであった。残りの男は、それを確認して剣を振った。


 私は押さえつけられてようやく冷静さを取り戻した。しかし、いまさら冷静さを取り戻してもどうすることもできない。むしろ苦痛になるだけである。

(ああ、私は死ぬのか)

残りの男が剣を振り落とす。私は死を恐れて目を瞑るのであった。



どれほど時間がたっただろうか。なぜか痛みはやってこない。

そのかわりに

何かが倒れてきた感覚がした。

そして次に

「……間に合った」

と聞きなじみのある声が聞こえた。


 男は状況が理解できなかった。突然剣を振ろうとした仲間が倒れたのだ。あわてて様子を見ると首元に大きめのクモがいた。クモはさらに俺たちに向けて飛んできたが、何とか剣で切り捨てる。倒れた男の首は不気味な紫色に変化している。

(猛毒⁉この階層で⁉)

これほどの猛毒が出てくるのは一般的なダンジョンはだと大体2~30階レベルである。基本的にモンスターの強さとダンジョンの階層は比例する。このダンジョンもここまではそうであった。その法則にのっとればありえないことである。しかし、突然の猛毒は現実として起こっている。

(こういう時にはろくなことが起こらん)

そう思い警戒していると

「……間に合った」

と声が聞こえ振り向くとそこにはおかっぱ頭の身長150ぐらいの少女。人形のようなかわいらしい見た目とは裏腹に明らかに危険なオーラを出している。おそらく毒蜘蛛もこいつが原因だろう。

「警戒しろ。あいつは間違いなく危険だ。場合によっては撤退も視野に入れる」


その男の判断は正しい。おそらく今できる最善手であった。


しかし、彼らはすでに詰んでいたのだ。


 彼らが少女に警戒を向けたことでもう一方の警戒がおろそかになっていた。

リイアはその隙をついて、盾を押しのけ、彼らを自分とクロマで挟み撃ちにするように陣取る。さらに盗賊の連携が曖昧になった隙をクロマがつき、別方向から用意しておいた毒蜘蛛を放つ。男の一人は対処できずに噛まれて倒れる。


 戦局は一瞬でひっくり返った。残りの男は自分が不利であることに気づき、仲間を見捨て、すぐに撤退を決意した。しかし、そうは問屋が卸さない。挟み撃ちを狙ったリイアはすぐに近接戦を仕掛けるのであった。

(人数有利を取った瞬間これかよ!切り替えが早すぎるだろ!)

男は攻撃を正面から受ける。しかし、その行動はもう一人の敵に背中を向けることとなる。


それは戦場において死を意味する。


死神弾(ヘルショット)

男は後ろからの攻撃になすすべもなく殺されるのであった。



「ケン!ミーア!」

倒れている身体を揺らす。しかし、血が出続けるだけで返事はない。

「……ごめん。もっと早く来るべきだった」

とクロマは謝る。……そうだよ!お前が早く来て……。……いや、

「……違う。クロマは悪くない。むしろクロマは私を助けてくれた」

クロマは悪くない。なにも悪くない。……私が。私が!

「私が強ければよかった。倒せなくともクロマが、助けに来るまで耐えれるだけの力うぉ……あたじがもっでぇいたらぁぁ……」

私はケンとミーアの動かぬからだにうち伏せながら泣いた。声を荒げ、体の水分を絞りながら泣いた。命を奪った盗賊を憎み、己の弱さを憎みながら泣いた。私はどうすればいいのかわからなかった。

ただ泣き続ける私の背中をクロマは優しくたたくのであった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 私はすぐには立ち直れずにいた。一人静かに秘密部屋にこもっていた。

 私は同じダンジョンのモンスターが殺されたのを何回かは見てきた。だが、そのほとんどが自由意志を持たないモンスターか自由意志を持っているが、私と関わりのなかったモンスターなのであった。

今回は違う。友人が……目の前で殺された。

何もしたくない。誰とも話したくない。

 そんな私を気遣ってかクロマはときどき私の部屋にやってきるが、何も言わずに帰っていった。さすがに三日目に私がやつれている様子を見たときは慌てて食べ物を持ってきて

「食べるまで帰りませんよ」

と言われたけど。

 そんなクロマの気遣いのおかげか少しづつ私も悲しみだけでなく、その先にある『どうすれば』と考えるようになった。

どうすればケンとミーアを守れるのか。どうすればあのような惨禍が起こらないか。


 あの出来事から四日後、少しずつ立ち直ってきた私のもとに一人の使者がやってきた。アラン、六階のボスモンスターであり黒い大型犬。忠誠心が強く自身が認めた者を守るためなら、我が身が亡ぶまでその獰猛な牙で相手を喰らい離さない。おそらくこのダンジョンの生成時に創られており、このダンジョンについては一番詳しいモンスターであった。

「デルの野郎からの命令だ。今すぐに最下層に来いと」

……このダンジョンのラスボスが私に? それよりも

「アランさん、さすがに野郎呼びはまずくないですか。仮にでもこのダンジョンのラスボスですし」

「我はあいつに忠誠心のかけらもない。そもそもどうすれば過小評価してくる上司を好きになれるのだ」

アランは鋭い歯を見せ低く唸る。よっぽど好かないんだな。

「確かにアランさんは七階のボスのバーロンよりも強いですね」

上司(デル)の愚痴について話していると、そこにクロマもやってきた。そしてどうやらクロマも呼ばれているそうだ。

「……何の用だろう」

クロマは私とアランを交互に見ながら何かを考えていた。

「分からん。ただまあ、あの私情第一主義者(デル)のことだ。ろくでもないことでも思いついたのだろう」

とため息交じりに話すのであった。

~~~

 ダンジョンの最下層には5~8階の階層ボスと私とクロマを含める有力者数名と

「これにて全員ですね。それでは会議を始めます」

真ん中の椅子にふんぞり返っている悪魔モンスターのデルがいた。

赤い目をして骨だけしかないように見える細い手足を持つ。言葉にするとものすごく貧弱そうだが、禍々しい日本の角からはどす黒いオーラを醸し出している。


 今回私たちが集められた理由は被害状況の把握と、1~3階層の殺されてしまったボスの任命だそうだ。それならば私やクロマ、それに階層ボスもここまで集まる必要はないと感じた。なんなら任命されるモンスターとデルさえいれば問題ないはずである。

 しかし私が感じた違和感の正体は数秒もたたずに明らかになった。

「一階層のボスはリイアである」

「……はあ!?」

私はデルの方を向く。デルは私の様子を気にすることなく話を進めようとしていた。何が起きているのか理解できずにいると、一人のモンスターがクスクスと笑っていることに気づいた。ルヴァンだ。

「ルヴァン!貴様!」

と私はにらむ。ルヴァンはその様子を見て笑いながら

「なにやら負け犬が鳴いていますよ。あんなクソ雑魚冒険者一人倒せないのですから当然じゃあないですか」

「違う!あの後にさらに盗賊が来て…」

「言い訳無用です。盗賊がいたなんて証拠はないのですから」

「……貴様!」

私が絶望している間になにやら根回し、手回ししていたようであった。つくづくこういう悪事の仕事は早い。

 ルヴァンは私を嫌っていた。理由は簡単で自分が五階層のボスで私が六階層の隠しボス。私の方が下の階層にいるからである。ルヴァンは自分の方が強いといつも喚いていて私と場所を変えるようデルに進言していた。

(ふざけるな!)

前述したように階層ボスは次の階に進もうとする侵入者と必ず戦闘することになる。後半の階層なら侵入者がここに来る前に帰ったり殺されたりすることが多いため実際に戦闘することは少ないが、前半、まして一階のボスとなるとほぼ間違いなく戦うことになる。しかも大して消耗していない相手と。


 私が怒りで戦闘態勢をとるよりも早く、黒い物体がルヴァンを目掛けて飛んでいった。ルヴァンは何とかよけて物体が飛んできたほうを相変わらず見下すように睨む。目線の先にはクロマがいる。

「あんた、普段はビビりのくせにこういう時は調子乗るんだね」

とニコニコ笑顔で言う。でも、目は笑っていない。ルヴァンは顔を真っ赤にし怒り震えていたが、手出しはしない。勝てないと分かっているのだから。代わりにデルに向かって

「このような短気なモンスターを八階のボスにするのは危険すぎます!」

と自分のことはてっちあげて言うのである。デルは

「確かにそれもそうか。ならば、クロマ!貴様は二階のボスだ!」

「デル!いくらなんでも勝手すぎる!もう少し冷静になれ!」(アラン)

するとデルは嫌いな友人を見るような目でアランを見ながら言った。

「貴様はいつも我に反対するな!貴様は三階のボスに降格だ!」

「「無茶苦茶だ!」」(私、アラン)

「下位のボスには話すことはない!今すぐ仕事場に戻れ!」

と言い放つのであった。


なすすべもなく出ていく私たちをルヴァンは勝ち誇ったような顔で見るのであった。

こうして戦いは幕を開ける

(なんだか追放系っぽい展開になってますが追放系ではございません)

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