ラスボス
革命編最終話……(以降後書き)
私とクロマとライヤは長い階段を下り続け、そして大きな広間に出た。
広間の先で座っているモンスターはもちろんデルであった。
「……まさかここまで来られるとは思いもしませんでした」
そしておもむろに立ち上がりながら「オールにはあとでお仕置きが必要ですね……」と呟いていた。デルは私達に向かって言う。
「一応聞きますが、『戦わない』という選択肢はないのですか?一応私は、あなたがたの任命を遅らせることで、『ダンジョンから出ていく』という選択肢を与えたのですが……」
デルが私たちの任命を遅らせた理由が判明した瞬間であった。言われてみればそうである。
「……結局あなたがたはあの老害犬にいいように使われていたのじゃないでしょうか?あなた方がダンジョンに固執する理由はないはずです」
「……それじゃあ、あんたは外の世界をきちんと見たことがあるのか?」(ライヤ)
ライヤの答えに対しデルは面倒くさそうに、ため息をつきながら
「……なかなかに面倒なモンスターを連れてきますね。…その感じだと交渉は無理ですか」
そういって、デルは戦闘態勢をとる。私たちも同時に戦闘態勢をとる。そしてデルは言い放つ。
「手加減は一切いたしませんよ」
デルとの対決が始まった!
私達三人は一斉にデルに対して攻撃を仕掛ける。しかし、三人の攻撃はデルには全く効かなかったようで、
「ぬるいぞ!」
といいながら、私を闇魔法を宿した右手で殴り飛ばすのであった。
私は、殴られる直前に体を盾に能力で変化させることでなんとか致命傷は免れた。だが、
(いってえなぁ……)
防御してもこの威力である。当たり所が悪ければほぼ即死だなと確信した。
しかし、そんなことで怯むわけにはいかない。今度は少し慎重に攻撃を仕掛ける
ライヤとデルが戦っているところを後ろから攻撃したのだが、デルの体が鉄のように固いせいかはじかれるのである。なっ……
(……私はほとんど戦力にならないんじゃね?)
そう思っていると今度はクロマの魔法がデルにあたる、私は(いける!)と思ったのだが、クロマの黒い物体もデルの体に当たったとたんに壊れるのである。私とクロマが動揺していると、ライヤを放り投げたデルは
「……何動揺しているのですか?仲間がやられてしまいますよ」
と言い、私に同じ攻撃を仕掛ける。私は避けて、デルに切りかかるのだが……「ガン!」と金属同士がぶつかる音がするだけで、デルにほとんど傷を負わせられない。今度は私を徹底的にデルは狙う。私は何とか避け、その隙にクロマとライヤに魔法で攻撃してもらうが、デルには全く効いてないようであった。さすがに避けるのがきつくなり、一度距離を取るが
「悪魔弾」
デルは黒い炎の玉を放つ、クロマが「死神乱弾」で相殺してくれたおかげで何とかなった。
「小癪な!」
「明らかに私の魔法が当たってるのに傷の一つもつかない…」
クロマは不機嫌そうに言う。デルの体は確かに硬いがシールドやカニの甲羅すら余裕で貫通するクロマの魔法が効かないはずがない。
何かが引っかかる、もう少しで何かが分かりそうなのだが、デルがそれを阻止するかのようにと再び私を徹底的に狙う。
現状私たちはデルに対する攻撃手段を持ち合わせていない。デルは私たちの攻撃を無視している。私は何度も距離を取るが、デルは私を徹底的に狙う。…なぜ私にそこまで執着する。
この中だと間違いなく私が一番弱い。一番弱いやつから倒すという考えは分からんでもないが、全く攻撃手段がないなら、放置してほかの二人を狙うべきである。いてもいなくても変わらないのならば。ならば、なぜ私を狙う。
……奴の中で優先順位が高いからである。
……では、その理由は?
「衝突!」
ライヤがデルの横腹を殴り、デルは僅かにバランスを崩す。その隙をつき、私は右手を槍に変え、クロマは死神弾を放つ。私の槍がデルの体にわずかに刺さった。クロマの死神弾は壊れる。……もしや!
「クロマ!ライヤ!こいつに魔法は効かない!物理しか無理だ!」
「おや、もう気づかれてしまいましたか……」
デルは私を振り払い、私達に向かって言う。
「一つ訂正するなら魔法は厳密には効きますよ。ただし99%カットみたいなものです」
「……だから私を集中的に狙っていたのか」
「そういうことになりますね。少なくともそこにいるお嬢ちゃんは無視できますからね」
と言いながらクロマを指さす。クロマは悔しそうな顔をしていた。私たちの最高戦力がこうも簡単に無効化されるのか。
「……というかそうなると、デルに対して有効手段を持っているのは私だけじゃないか」
クロマの攻撃はほぼ無力化されている。また、ライヤの攻撃でデルにとどめはさせない(ダンジョンが崩壊するため)
「大正解です。……ところで私はこの戦いが始まってからずーっと右手しか使っていないのに気づいていますか?それじゃあ左手は何をしている?魔力をためているんですよ」
「みんな!跳んで!」(クロマ)
クロマが必死に叫ぶ。私とライヤがそれに従い跳んだ瞬間に
「悪魔大地!」
広間の床が一面真っ黒に染まりそこから大小さまざまな針が飛び出す。
私は体を盾に変化させていたが細い二本の針は貫通した。言葉に言い表せない痛みが脳に送られるが、かろうじて致命傷だけは避けられた。ほかの二人もダメージは喰らっているが生きている様子であった。
「ありゃ、運がいいですね。まあ、もう一回打てばいいだけの話ですが」
黒い針はしばらくすると消えてなくなった。デルは再び魔力をためている様子であった。三人で阻止しようと試みたが、デルに左手を使わすことができない。このままだと確実に二回目が放たれる。ちなみに範囲はこの広間全域であり、どのような針がどこに飛び出すかは、デルの言動的にランダムなのだろう。
(阻止はできない……)
私はデルの攻撃を止めるべく、多少のダメージは覚悟して攻撃をするがそもそもほとんどダメージが通らないため脅威にはならなかったようである。
そんなときはどうすればいい。……今、この場だと答えは一つしかない。
(……ここにきて運任せか)
私はクロマに向かって走り。クロマの手を取る。
「リイア⁉」
「悪魔大地!」
デルの声と同時に私は足をばねに変化させ、思いっきり跳躍する。
多分20メートルぐらいとんだ。私とクロマは針に刺さらず、ライヤも足に一本細い針が刺さっているだけでおそらく問題はない。
「クロマ!私はこのままデルに向かって特攻する!クロマは私のアシストをしてくれ!」
「……なるほどね!了解!」
私は両手を前に伸ばし一つの斧に変化させる。火力全振りモードである。一撃の威力は高いが両手が使えなくなるし重たいので動きにくかったりと何かと不便なので今までで一度しか使ったことがない。おそらくデルはいや、クロマでさえ知らないはずである。デルは危険を察知し避けようとするが、
「衝突!」
ライヤがそれを必死になって防ぐ。今度は私に向かって『悪魔弾』を放つがクロマの『死神乱弾』で相殺する。相殺しきれなかった弾が一つ当たったが、その程度では止まらない。こちとら両手を失う覚悟もあるからな!
デルは手を前に出し防ごうとする。私の斧はデルの手の肘から先を切り飛ばし、そのまま体の左半分を抉るようにきり、デルはその場で倒れるのであった。
私は倒れているデルを見る。右手と左の脇腹あたりから黒い血が出ている。しかし、デルはまだ生きているようだった。
「……あれほど策を練った戦いの最後が運に頼った特攻ですか」
しかたがないだろ。だってこれ以外の方法が思い浮かばなかったのだから。
「……まあ、あなた方の最後にしてはお似合いなんじゃないですか?」
そうか。……うん?
「負け惜しみか」(ライヤ)
負け惜しみ?そんなんじゃあありませんよ。
「……私はラスボスです。私はこのダンジョンの心臓なんですよ。こんな簡単に死ぬと思いますか?」
「何を言ってるの」(クロマ)
……どうやら知らないようですね。
ダンジョンのラスボスがどうして強いのか!
「簡単じゃないか!私が死ねばダンジョンは崩壊するんですよ!たとえダンジョンがどれほどの力をため込んでいたとしても!」
「ならばどうする?簡単ではないか!私に力を与えるのさ!」
(さあ!ダンジョンよ!こんな時のために貯めておいたエネルギーを与えよ!)
私は高らかに笑う。三人は絶望したような表情をしていた。
……
…………?
(おい!さっさとわたさんか!)
『……何言ってるの?』
そう脳内に語りかけているのはこのダンジョンの『意思』である。
(いいからさっさとエネルギーを渡せ!)
『なんで?普通に嫌なんですけど……』
(何を言って……)
『……君は勘違いしている。』
『まず、気味が死んだところでラスボスの権利はリイアに献上されるから僕は滅ばない。その前提のもとで、僕が君に味方する理由がどこにある?』
(私は言ったはずだ!私が殺されそうなときのためにエネルギーを蓄えておけと!)
『なぜ僕がダンジョンの利益よりも私情を優先するやつの命令を聞くと思ったの?はっきり言うと僕からすれば君がラスボスである必要はなに一つもない』
(だが、相手の一人はダンジョン外のモンスターだぞ!)
『別にとどめを刺したのがダンジョン内部のモンスターだからそもそも問題ないんだけど。一応補足するとダンジョン内部のルールは基本的に僕にとって都合がいいように常に変更されるんだよ。君たちは二の次。』
(そんなこと聞いてない!)
『だって言わないといけないなんていう制約もないし、君は何も聞かなかったじゃないか。そろそろいいかな?新しいラスボスと話をするから』
「ま、待て……」
デルは必死になって呼び止めようとしたが無駄であった。デルはそして力尽きるのであった。
デルは最後に何かを捕まえようとして死んだ。どうやら力は与えられなかったようである。
「なんだったんだ……」
ライヤはデルが死んだかどうかを確認しながら呟く。
「……はったりだったんじゃない?」
クロマはあまり気にしてない様子であった。とりあえず……
「終わった…の……」
私は発しようとした言葉を言い切る前に突然意識を失い、倒れるのであった。
なんやかんやありつつ革命は無事に終わったのであった。
そう革命は
(以前前書き)……ではございません