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8階防衛戦

(長いです)

祝 1000PV達成!

読んでくださり本当にありがとうございます!

この物語を投稿して約半月ですので、次はこの調子で約2か月後に5000PVを祝えるように頑張ります!

また、ブックマークに登録等していただきありがとうございます!作者の励みになります!

まだまだ新米の作者ですが今後もよろしくお願いします

『いいか?どれだけ頑張っても私たちにオークを全員倒し、デルに勝つ余裕は絶対にない。つまり私たちはオークに勝てない』

リイアが作戦の最後に伝えた言葉であった。




 リンたちはリイアたちの無事を祈りながら八階層に残るのであった。

「……それじゃあ時間もないし作戦を伝えるよ」

私は全員に作戦の大枠を説明する。

「――と言った感じだ。……ヒマリ、できそうか?」

「それぐらいなら心配しなくても大丈夫ですよ。任せてください!」

と笑顔で答える。……かわいいな『そうだろ?』(リイア)。うらやましいよ。

「それじゃあ全員急いで準備しな!疲れた⁉もうひと踏ん張りだ!気張っていきな!」

「おー!」

元気に返事したのはフェニだけであった。……なんか恥ずかしい。

「……フェニもなんかごめん」

「……いいって。気にすんな。それに誰も返事はしてないけどうれしいはずだぜ」

……あんたいいやつだな『そうだろ?』(リイア)



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 オークの男を先頭に約200体のオーク軍は、侵入者を皆殺しにすべく追いかけ、ついに九階の階段近くで待ち構えているのを発見した。オークの男は待ち構えているモンスターたちを注意深く観察する。


……1~4階層の寄せ集めにしては少々強い。特に黒い服を着ている女とバンダナをつけている女はかなり強いだろう。しかし……

(それでもここまで苦戦するのか?)

強いが圧倒的ではない。戦い続けたらいつかは倒せる程度の相手である。

(……だが、まあいい)

俺は頭を使うのはそれほど得意じゃねえ。やっぱし力でねじ伏せるのが一番である。

(たとえどんな策を用意してようと)

全てぶっ壊してしまえばいいだけである。


 敵はおおよそ200体と言ったところか。あんなにリイアの策がうまくはまっていまだ兵の数、質的にはこちらが劣勢ってどんな戦力差だよ。リンは辟易しつつも仲間に向かい最後の確認をする。

「いいか?私らの目的は耐久だ。勘違いするな。リイアたちが勝つまで耐えればいいんだ。普通に戦ったら勝てないのはよく分かっただろ?地形や連携を上手に使え!無理はするなよ!怪我したやつは一度後方に下がるように!」

「よっしゃ!それじゃあ、一足先に突撃するぜ!」

とフェニは仲間と共に颯爽と飛んで行った。

 おそらくだがオークたちに飛んでいるフェニを倒す手段はない。だからフェニは自由に遊撃させることにした。

 簡単な作戦としてはヒマリに頼んでここら一帯の地面をどろどろにさせておく。先の戦いでこれによる移動速度低下が有効なのは確認積みである。私と氷孤はオーク軍をかく乱させるべく動き回る。その間にアーチャーモンスターたちに安全な場所から攻撃させる。残りのヒマリとゴブリン、剣士モンスターはそれでも階段に近づいてきたモンスターの撃退である。私はリイアじゃないから単純な作戦だが、悪くないと自分では思っている。……そんなことはどうでもいいな。オーク軍がどろ地帯に入ったのを確認。それじゃあ、

「私達も突撃!」


こうして八階層の戦いの第二ラウンド、防衛戦が開始される。


(こざかしい!)

地面がぬかるんでいるせいで思うように進めない。いや、自分は別に問題はないのだが

「さっさと動け!」

他のオークの移動速度が急激に低下したせいで全体が詰まるのであった。そして、密度が高くなったところに

火炎吐息(ファイヤーブレス)

ファイヤーバードが上空から攻撃してくるのである。威力がいくら低いとはいえ何発も当たると火傷も起こす。どうにかしたいのだが、永遠に安全圏から攻撃してくるのである。

 オークは遠距離攻撃が苦手なのである。さらにオークたちが苦戦していると相手軍が遠距離からの攻撃や機動力を生かした迎撃と撤退を繰り返しているようである。こちらの数は減っている。

(厄介だな。だが)

 一方で確実に進軍できている。このペースなら半分ぐらいはこの泥地帯を抜け、敵の本隊と交戦するだろう。そうなればこちらの勝ちである。

(相手の戦略は確かに素晴らしかった。しかしそもそもこの戦いの勝敗は決まっている……)


我らが必ず勝つと

~~~

 序盤はリンたちがいい感じに立ち回り優勢だった。しかし少しずつ異変が起こり始めた。まずはフェニ達であった。フェニ達は相変わらず安全な場所から永遠に攻撃し続けていたのだが


(やべえな……)

フェニは周りのファイヤーバードの様子を見る。いまだに誰も倒されていないのだが、『火炎吐息(ファイヤーブレス)』をしないのである。正確に言えばできないのである。理由は単純明快でエネルギー切れである。一日にこうも何度も魔法を使うことがなかったため、エネルギーの貯蓄量がフェニ以外は多くないのであった。

(……といっても俺もせいぜいあと10回ぐらいしかできないけど…)

ここにきて魔法の訓練を後回しにしていたことが響くのであった。


 そして次に異変が起こり始めたのは氷孤たちであった。

 氷孤たちの体力が切れてきたのである。そもそもダンジョンでの戦闘は大体短期決戦である。こうも長々と闘い続けることは通常ほとんどない。そのため、氷孤たちに長期戦の経験が足りなかったようであり、集中力も切れてきたようで、とうとうオークに倒される氷孤が現れ始めた。

 しかもこれに関しては氷孤だけではなく、フェニ除く他のモンスターも大体同じで集中力が切れてきたのか被害が次第に被害が増え始める。

 また、それはつい最近まで商品として売られていた二人も同じである。


「気を引き締めろ!」(リン)

私はオークの相手をしながら叫ぶ。かなりまずい。被害が増え始めている。本来であればまた一度撤退し体勢を立て直したいが、すでに本隊(ヒマリたち)のほうも限界のようでここで撤退すると確実に向こうが崩壊する。

 ふと、ヒマリの様子が頭によぎった。ヒマリは戦う前からすでに疲れていた。『少し休んだら大丈夫』と言っていたが絶対に嘘である。なにせ私ももう満身創痍なのだから。今も戦い続けられているのは気力と根性である。緊張の糸が切れたら自分はしばらく立つことすらできないだろう。なら、ヒマリはどうなっている?

(………)

 今すぐに駆け付けたい。しかし、どれほど切実に願っても無理なものは無理なのである。今の私は少し離れた場所で囲われてしまった氷孤の一匹も助けられないのだから。だからせめて

(……無事でいて)


ただ祈ること。自分のことすらままならないリンができる最大限の援護であった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



しかし、その時にはもう無事ではなかった。



 ヒマリは泥の上に倒れていた。目の前には鎧をつけたオーク。

 時は数十秒前、あいかわらず水を生成、操り続けていたのだが、とうとうエネルギーが切れてしまった。なんとか歯を食いしばって魔法の使用を試みたが、水滴が数個現れるだけで無駄であった。そこで一度撤退しようとしたのだが『ゴンッ!』という鈍い音が鳴ると同時に死角からの攻撃によって吹き飛ばされてしまった。致命傷は免れたのだが、立とうとするにも体に力が入らない。

 力を振り絞って数滴の水を飛ばしたがそんなものでオークが止まるはずもなかった。

(殺される……)

彼女は瞬時に悟った。目の前のオークに殺されると。

 その時自分の長年の願いがついにかなうのかと思った。ようやく、この世界とお別れ出来ると。希望のない世界と。……自由のない世界………と……。

 そんな世界の生活が走馬灯のように駆け巡る。……別に要らないのに。

物心がつき始めたころに親が目の前で殺された

餓死と隣り合わせの人生だった

ある男に捕まえられた

商品とされた

何度も自殺を試みたが結局できなかった

足枷をつけられ自由なんてなかった

誰も救ってくれなかった。

……た?





……ちがう!それは過去の私だ!

ご飯も食べれる 友達もいる 思いっきり笑える

そして自由になれる



~~~



死にたくないと思った。生きたいと願った

だから、震える声で叫ぶ

「……たす…けて…」

目の前で親が殺されたときと同じように



あの時と同じように





ヒマリは助けを呼んだ



リイアには聞こえなかった

クロマには聞こえなかった

アランには聞こえなかった

ヒョウリには聞こえなかった

テンには聞こえなかった

リキには聞こえなかった

フェニには聞こえなかった

ちーちゃんには聞こえなかった

リョウには聞こえなかった

ライヤには聞こえなかった

リンには聞こえなかった




しかし誰も……




「戦場の鉄則!」

「その一!ピンチになったら助けを呼ぶこと!」

「その二!仲間の『ヘルプ』に全力で応答すること!」

「その六!助けを求めた相手を全力で褒めること!」



オークを一刀両断する。白い髪。長剣。何より少年である。


「…カム…イ」

「よくやったヒマリ!本当はもっと褒めるべきだが余裕がないから後回しだ!いいな?」

 そんなことはどうでもいいのにとヒマリは思うのであった。でも、なんだか急激に力が抜けた。そのせいか、今までは心の奥の方で動けずにいた感情があふれてきた。

「……グッ……怖かった。怖かったあぁぁ!」

私は思いっきり泣いた。ここが戦場で激戦が繰り広げられているにもかかわらず。親が目の前で殺されたとき、誰も現れなかったのである。誰も救いの手を差し伸べなかったのである。でも、今回は違う。

 私は振り返ったカムイと目が合った。カムイは非常に困った様子であった

「……お願いだから泣かないでくれ!俺は子供のあやし方は知らないからよ!頼むって!」

そう必死にお願いされても私だって初めてだからどうすればいいのかわからない。なので自分が思ったことをそのまま口にすることにした。

「……子供じゃねゃい」

「……左様でございますか」

そう答えた後にカムイは「これじゃあ俺が泣かせたみたいに見えるじゃないか」と愚痴をこぼしていた。

「……後で泣き止む方法教えて」

「……そのころには泣き終わってると思うぞ」

そしてカムイは私に背中を向け黙って剣を構えた。



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